ゲ ロ あ ま 胃 も た れ 短 編 集

落とし物

「あの、消しゴム落としましたよ」

「……それ、もういらないので。どうぞ」

　◇

「あ、あの、シャーペン落としましたよ」

「……はぁ。もういらないので。どうぞ」

　◇

「……あの、ハンカチ落としましたよ」

「チッ……ハァ。いりません。どうぞ」

「…………」

　◇

「えぇッ！？　弁当箱ッ！？　ポケットから弁当箱を落としているーッ！？」

「？」

「いや！　いやあの！　ほら！　あれ！　落ちてます、あそこに！　あなたが落としてました！！」

「はぁ。で？」

「で！？　いや、落としてますよ！！　弁当箱！！　いや弁当箱って普通落とすのか！？」

「ハァ……気が利かない人。拾うことくらいできないの？」

「べ、弁当箱をォ！？　い、いいのォ！？　だって僕が触ったら、あんたお昼抜きになっちゃうんじゃないのォ！？」

「私が落とすところを見たんでしょう？　なら、あなたは拾って届けるのが義務でしょう」

「ぎッ……じゃあ、拾いますけど！？　はいどうぞ！！　落とし物ですよ！！」

「チッ……ハァ～。いりません。どうぞ」

「どうなってんだーッ！！　全然見当がつかないぞーッ！！」

「分からないの？　あなたが触れたものに触れたくないの。だからいりません。あげます」

「そうかもしれないとは思っていたけど、そうはならないはずだろーッ！？」

「何を言ってるの？　気持ち悪い……早くそれを持って消えて」

「す、好き勝手言いやがってェーッ！！　目の前でうまそうに食ってやるゥーッ！！」

　◇

「チッ……ハァ～～～～～。早く拾いなさいよ」

「机に置いてある弁当箱を落ちてるとは言わないだろーッ！！」

「ごちゃごちゃとうるさい男。私が拾えと言ってるんだから素直に拾いなさいよ」

「はいはい拾います拾います！！　はい拾いました！！　落とし物ですよ！！」

「チッ、スゥーッ……ハァァ……。もういりません。あげます。ハァ」

「あぁすいませんね！　汚い手で触っちゃってごめんなさい！　じゃ今日も僕が食べちゃいますね！　どうも！」

「何、開き直ってるの？　信じられない、最悪」

「うまい！！　うまいうまい！！」

「ふん。気持ち悪い」

　おわり