第69話 賭博場


「まあ、凄い人だわ」


「こら、静かにしろ」


「はーい」



 私は破廉恥なドレスを着て、髪を二つ結びにしてお団子を二つ頭の上に載せています。


 朝、遅めに起きた私をサーシャとレアルタが見ていました。



「おはようございます」と、サーシャとレアルタが言った。


「おはようございます」と起きたばかりの私が返事をした。



 二人の子供は、会うたびにお行儀がよくなっております。



「お姉様、リリーお姉様と一緒に眠ったのですか?」


「そうよ。リリーは私の大切な妹でしたのよ。死んでしまって、とっても悲しいのです」


 すると、サーシャは私を抱きしめてくれた。


「私がリリーお姉様の代わりになりますわ」と、優しいことを言ってくれました。


「ありがとう、サーシャ」



 私がサーシャを抱きしめていると、レアルタも私に抱きついてきた。


「僕も」と言ってくれたのです。


 私は実家が嫌いでしたけれど、今の実家は大好きです。


 お兄様も優しくて、リリーも優しくなったのに。どうして、ここにリリーがいないのでしょう。


 子供達を抱きしめたまま泣いていると、お兄様が濡れた布巾を持ってきてくださいました。



「お兄様、ありがとうございます。サーシャ、レアルタもありがとうね」


「食事を食べて、お風呂に入るか?」


「お借りします」


 私はゆっくりお風呂に入った。


 水風呂だ。


 今日は暑い。


 リリーを埋葬してあげないと、リリーが腐ってしまう。


 夏の葬儀は、ゆっくりお別れもできない。


 リリーの子を見せてもらった。


 白い髪に、ブルーアイを持っていた。


 相手はブルーリングス王国の血筋を持つ者です。


 レインに話そうかと思いましたが、王宮に戻ると、外に出してもらえなくなります。


 なので、今日という大切な日の任務を全うします。


 髪洗いの専属のメイドに髪を洗ってもらって、無邪気な子供の様に髪を結ってもらいました。


 私はリリと言う子を演じています。


 お兄様は、護衛を連れて、見学に来るそうです。


 危険なので止めたのですが、リリーを殺した相手を見たいと言っておりました。


 サーシャとレアルタは、お兄様の言葉を守るので、護衛を付けて邸におります。



「これより競売を始めます。最初の商品は、昨日、商品になったばかりの乙女です。年齢は13才です。奴隷にしても、性道具にしてもお好きな使い道でどうぞ。5000フランから開始致します」



 司会者が商品を紹介すると、舞台に電気が点りました。


 舞台の上には、少女が裸で動物が入れられる檻に入れられています。


 少女は「助けて、助けて」と救いを求めていますが、その願いを叶えてくれる方は、多分いないでしょう。


「商品は間違いなく、処女ですので、お値段は高めに付けられております。ドールとして、お側に置いても可愛らしいでしょう」


 少女には人権はないようです。


 ニクス王国で、人身売買が行われていることが、苦しかった。


 国王陛下、ちゃんと助けてあげて、エイドリック王子、貴方が受け継ぐ国は、これほど荒れているのです。見てあげて。レイン、ブルーリングス王国の血筋の者がしているのよ?このまま放置でいいの?


 私は苦しかった。


 気分も悪い。


 少女は老人の貴族が高値で買った。


 アグロス子爵まで売られていた。値段は安かった。


 人身売買が主にされていた。


 その次に、珍しい宝石が出されていた。


 安い宝石も売っていた。


 身ぐるみ剥がされて、全てを金に換えられるのだろう。


 買うのはニクス王国の貴族達だ。


 お兄様は、口出ししなかった。


 ただ見ている。


 私は一人になると、吐いた。


 吐くものがなくなるまで、吐いた。



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