第18話 幸せ
目を開けると、レインが私を見ていた。
「おはよう、身体の具合はどうだ?」
「おはよう、どうかしら?」
抱きしめられていたままレインは、起き上がった。
「たいしたことはないわ」
「昨夜、身体は軽く拭ったが、不快な所はないか?」
「ないわ、ありがとう」
「着替えは必要だな?」
「そうね、一日中、ネグリジェでいるのは、よくないわ。部屋の外に出られないもの」
「今日はニナの部屋で、ゆっくりしているといい」
「そうさせてもらうわ」
「また夜にお風呂に入れるよ」
「はい、お願いします」
私は自分の下腹部に触れた。
「どうかしたのか?」
「レインを迎えられて、嬉しかったの。レインと結ばれた事が、とても嬉しいの」
レインは私をギュッと抱きしめた。
「俺と結ばれる運命だったのだ」
「そうね」
私もレインを抱きしめて、自然にキスをしていた。
私は知らぬ間にネグりじゃを着せられていた。
レインが着せてくれたのね。
その優しさも嬉しい。
「俺と結ばれるのは、嫌ではなかったのだな?」
「私、今、とても幸せなの。もっと抱いて、私に子供をプレゼントしてください」
「世継ぎは必要だ。ニナがそう言ってくれて嬉しい。俺の子を産んでくれ」
「頑張ります」
私の生真面目な応えに、レインは微笑んだ。そして、もう一度、レインはキスをしてきた。
戯れるような、キスは、やはり気持ちがいい。
私は、レインのキスの虜になっている。
フワフワとした心地よい快感に包まれながら、愛おしいレインに抱きしめられている。
幸せの中をたゆたう。
「ニナ、ニナの部屋に行けそうか?」
「ええ、こうしていたいけれど、アニーが来てしまうわね」
「ああ、そうだな。今日は国王陛下に届けてもらう手紙をしたためたい」
「私も実家に結婚をしたことを報告するわ。手紙を書きます。一緒に届けてくださいますか?」
「ああ、いいとも」
「では、部屋に送って行こう」
「お願いします」
先にレインが起き上がると、扉を開けて、私の元に戻ってきた。
私を抱き上げようとするレインに、私は「歩けるわ」と告げたけれど、レインは私を横抱きにした。
「ごめんなさい。いつも運ばせてしまって」
「これは夫の勤めだ。妻を抱いて、俺の愛を受け止めてくれたニナへの感謝だ」
「レインって、とても優しいのね。私、レインの腕に包まれていると、とても幸せなの。ずっと愛してね」
レインは微笑んだ。
「なんと愛らしい。ニナは俺の宝だ。宝は自分で守らなくては、無くしてからでは遅い。俺には甘えてくれ」
レインは、私の部屋の前に到着すると、いったん私を下ろして、扉を開けた。
私は自分で歩いて部屋に入ろうとしたら、手を握られて、私をまた抱き上げた。
「レインは甘やかしすぎよ。自分で歩けるわ」
「結婚式の翌日は、一日中、ベッドにいるものだ。それなのに、置いていく事を許して欲しい」
「気にしていないわ。お仕事、頑張って欲しい」
「朝食は一緒に食べよう。この部屋に持ってくる」
「ありがとう」
レインは、私をベッドに下ろした。
「着替えは、無理にしなくてもいい」
「レインの言葉に従っていたら、堕落してしまいそうよ」
「とにかく、今日は休みなさい」
「分かりました」
レインは私の頬にキスをすると、ベッドルームを出て行った。
その後に、部屋の開閉の音がした。
私はベッドに突っ伏した。
恥ずかしいのと、やはり身体は本調子ではない。
結ばれたところが、少し痛む。
けれど、その痛みも気怠い身体も、今は嬉しかった。
レインが与えてくれる物は、全て喜びに変わる。
これを愛と呼ぶのだろうと思った。
そうだったわ。レインが来るまでに、両親に手紙を書いておこう。
着替える前に、簡単な手紙を書いた。
『お父様、お母様へ
お父様、お母様、お元気でしょうか?
ニナは元気です。
大切なお知らせがあります。
ニナは、レイン辺境伯と結婚を致しました。
この先、辺境区で共に生きていこうと思います。
どうかお元気で。
ニナ』
お父様は全て知っていたのなら、要件だけで通じるはずだ。
白い封筒に簡単な手紙を入れて、封筒の表にお父様の名前を書いて、裏面に私の名前を書いた。
それにのり付けして、机の上に置いた。
その後に洗顔しクロークルームに入り、楽そうなドレスに着替える。
髪は結わなかった。
淡いピンクのドレスは胸の下からドレープがあり、ゆったりしている。
まるで妊婦のようにも見えなくはないが、食後に横になるのなら、着心地は良いだろう。
テーブルに座っていようか迷ったが、きっとレインが来るのはもう少し先のような気がしてベッドに横になる。
この幸せな気持ちを零さないように、指輪を胸に抱いた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます