第16話 結婚式


 古びた小さい教会に、レインに手を引かれて入って行く。


 前方に、小さめな机があり、その後ろに、簡素な長椅子が5列ほどある。


 古いマリア様が前方の端に立っている。


 この教会は、かなり古いと分かる。


 木を削られて作られたマリア像は、磨かれて、黒い艶を放っている。


 村人が管理しているのか、窓は開いていた。


 一歩前に出ると、ギシッと床が鳴る。底が抜けてしまいそうで、少し怖い。



「ここも補修をしなくては」



 レインは、教会の中を見ていた。



「床が抜けそうね」



「ああ、この場所は、戦いに出ていた息子や夫、父親の無事を願うために村人が利用していた場所だ。これほど朽ちてきているのなら、修復をしても村人は文句を言わないであろう」



 私は頷いた。


 レインの腕にしっかりしがみついて、二人で前方に歩いて行く。


 本来あるはずの、教会の装飾品は全てない。


 蝋燭立てすらない。


 略奪などもあるのだろう。


 マリア様は大きく、私の背丈ほどだが、足には釘が刺さって、床に貼り付けられていた。


 あまりに痛々しいそのお姿に、私は祈りを捧げる。


 床に貼り付けなければ、略奪されてしまうのだろう。


 村も安全とは言えないのだろうか?


 それとも戦の後の惨状なのか。



「ここの教会でも構わないか?」


「はい」


「いずれ教会も建て直す。その時、もう一度、誓い直そう」


「はい」



 机の前に並んで立った。



「この先、どんな試練が起きようと、ニナを生涯愛することを、ここに誓う。互いに力を合わせて、試練も乗り越えていく。必ず、ニナと一緒にブルーリングス王国を立て直す」


「ニナ・アイドリースは、一生の伴侶を、レインフィールド・ブルーリングスといたします。どんな困難が起きようと、二人で力を合わせ乗り越えていきます」



 二人で誓い合って、見つめ合う。


 レインは私に触れるだけの、キスをくれた。


 そっと手を繋ぎ、何もない、そこに一礼をする。


 背後から、拍手が聞こえた。


 アルク様が、拍手をしてくださった。



「僭越ながら、私が保証人だ。いいですか?レインフィールド」


「よろしくお願いします」



 レインは、アルク様に一礼した。


 続けて、私も一礼した。



「ニナ、行こう」


「はい」



 狭い通路を手を引かれながら歩いて行く。


 出口にアルク様がいて、まだ拍手をしてくださっている。


 アルク様の前に立ち止まり、二人で頭を下げた。



「おめでとう」


「ありがとうございます」



 私は頭を下げた。


 私は、今、レインと結婚した。


 ウエディングドレスはなかったけれど、清楚な白いドレスを着ているので、ウエディングドレスとよく似ている。


 私はそのドレスで、満足していた。

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