東京デスニィランド ④
レストランから場所をとることができただろうか。
ここまでくればいいだろう。どちらにせよ、このゾンビたちはみな一掃する予定だ。あたしは刀を握りしめ、あたしに群がってくるゾンビを切り裂く。
「ああ、数が多いんだよ! 群がることしかできねえゾンビ共がッ!」
あたしは悪態をつきながら一体一体たたっ切る。
キリがねえ……。しょうがない。人を呼ぼう。これだけの数、一点に集中させたんなら爆破成りなんなりしてまとめて蹴散らしたほうが手っ取り早い。
ただ……あのボーンデッドマンションで結構な数のダイナマイツを使っちまったからなぁ。ほかにダイナマイトあるのかな……。
あたしは音楽プレイヤーを遠くにぶん投げ、レストランのほうに戻る。
レストランの中にはもう誰もいないようで、みんなここを脱出したようだった。あたしも越後さんたちを追いかけて出口のほうに向かう。すると、越後さんがゾンビに覆いかぶさられていて、周りの人は箒で抑えたりとかしていたが割とパニックになっていた。
「どっせーーーーーい!」
「六道クン!」
「た、助かったぁ!」
「噛まれた人はいない!? マジでみんなに迷惑になるから隠さないで自己申告!」
「あ゛……」
ホテルマンの服装をした男の人がうっすらと手を挙げていた。
その瞬間、ホテルマンの人の顔が爛れていき、白目をむいた。そして、前の女子高生に襲い掛かろうとしていた。
あたしは思い切り蹴飛ばした。
「援軍は!」
「それがなぁ、みんな手が離せない状況みたいらしくて……判断ミスや」
「そうですか! ま、あたしが援護するんで全力でトラックまで逃げてください! ほかに噛まれた人はいませんね!?」
「噛まれてない!」
「う、うん! どこも痛くないし、噛まれた後もないし……」
「なら早く!」
あたしは急かしながらトラックに向かわせる。
「越後さんは噛まれてないですか」
「それがな……」
越後さんの首元には歯の後がくっきりついていた。
嘘だろ……。越後さんは苦しい顔をしている。必死に抵抗しているようだった。脂汗がだらりと垂れている。
「……」
「わいはええんや。はよ連れてけ」
「……でも」
「でもやあらへん。それでも嫌なら……せやなぁ。ぶっさい男に噛まれてゾンビ化するのは嫌やから、六道クンがわいを噛んでくれ。女子高生ゾンビに噛まれて死ねるんなら本望や」
「この状況でバカなことを……。わかりましたよ」
あたしは越後さんの腕を噛んだ。
最後の望みなら仕方ないんだろう。ゾンビに噛まれたとしたら助かる見込みが……。
越後さんは目を閉じた。
あたしはとりあえず生き残りの人たちをトラックまで連れて行く。誰かトラックを運転できる人がいないかと聞いたら、俺できると、安達さんが手を挙げた。
「でもどこいきゃいいのか……」
「復元軍の本部の場所か……」
具体的な住所は知らないし、東京はほとんど壊滅状態だからどことも言いづらい状況になっていた。
すると、後ろのほうから声が聞こえる。
「朝陽、その人たち生き残り?」
「汐里! そう! 本部まで連れて行ってあげて」
「わかった。石丸さんお願いします!」
「おう、任せとけい!」
「……で、朝日。越後連隊長はどうしたの? 一緒だったよね?」
「……それが」
あたしは越後さんのことを伝えた。
「なるほど。ゾンビに噛まれてしまったと……」
「だからこの後殺しに向かうよ。ゾンビになる前に」
「そうだね。そのほうがいい……。私たちがここに来た目的もすでに達成したし、撤退するよ」
「うん」
あたしは汐里の指示で、越後さんを殺しに向かう。
越後さんはむくっと起き上がっており、あたしを見ていた。
「あー、生きとったさかい! 心配かけたなぁ!」
「……はぁ?」
「なかなかゾンビ化が始まらんもんでなぁ。なぜなんやろ」
「え、いや知りませんけど」
「とりあえずわいどうしたらええと思う?」
「ええ……」
越後さんは笑っていた。
噛まれた後はまだ残っているけれど、ゾンビになっている様子には見えない。
「え、ええ? どういうことだ?」
「さぁ……。詳しい研究が必要やな……。とりあえずわいはもう撤退するわ!」
「え、いや……ゾンビになるかもしれないし」
「あっちでしばらく拘束されたる。ゾンビになるのは時間差もあるかもしれへんしな。で……ゾンビになるっちゅうときってやっぱ意識失うもんなん?」
「あたしが噛まれたときはそうですね、意識を失いました」
「まだぐらっとくる気配もないし、大丈夫……やんな? とりあえずわいが運転するから二人で帰ろや」
「うっす……」
越後さんは噛まれてもゾンビ化しなかった……?
なぜだ?
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