東京デスニィランド ②

 ボーンデッドマンションの中から飛び出した。

 

「ちっ……仕方あらへんか」


 と、何か考えがあるようだった。

 いったん、積み荷を積んだトラックをこっちに持ってくるようだ。何を考えているんだろうと思いながらも、あたしは越後さんを守りながらトラックのほうに向かう。

 助手席に乗り、越後さんはボーンデッドマンションへと向かった。


「さて、こういう時のためにあるもん持ってきてよかったなぁ」

「あるもん?」

「これや」


 と、トラックの荷台から降ろしたのはたくさんのコンテナ。中にはダイナマイトのようなものが……。


「これで爆破するんすか!?」

「せや! まとめて吹き飛ばしたろ! 第一中は危険や。爆破してぶっ飛ばしたほうが安全や」

「……誰が仕掛けるんです? あたしら二人でこの数を?」

「何も全部使うわけやあらへん。それに……。建物の中にも仕掛けなあかん」

「……建物の中はあたしですか」

「ゾンビに襲われないんやろ?」


 そりゃゾンビだからな。

 あたしはダイナマイトを手渡され、永い点火用のロープも一緒に渡された。油がしみこんでいて、これをダイナマイトの前において一斉に着火し爆破する算段のようだ。あたしはロープを背負い、ダイナマイトをたくさん抱えて中に入っていく。


 あたしは懐中電灯を片方の目に突っ込み、片方の目で見ながらダイナマイトを仕掛けていく。目玉が外れるのがこういう風に使えるとは。手を使わずに懐中電灯を照らし続ける……。

 そして、ダイナマイトの導線付近にテープで油がしみこんだロープを固定し、転嫁できるようにした。


 ボスゾンビがいれば外しそうなものだ。早いとこ仕掛けちまわねえと。


 あたしはてきぱきとダイナマイトをマンション全体に仕掛け、外に出る。


「終わったか!?」

「終わりました」

「よし、じゃ、点火するで! 点火と同時にここを全力で走る! わいは運転があるから点火は頼んだ!」


 と、運転席に一足先に乗り込む越後さん。

 あたしはチャッカマンでロープに火をつけてトラックに乗り込んだのだった。トラックは全速力で走りだす。

 そして、数分後に。


『ドガァアアアアアアアン!!』


 激しい爆発音が夢の国に鳴り響いたのだった。

 その爆発音は園内に響き渡り、彷徨っていたゾンビが一斉にそっちのほうを向いていた。


「ひゅ~! ド派手やなぁ! あの中にうちの女房がおったらこれで弔えたんかな」

「葬式にしちゃド派手すぎやしませんか?」

「ええんや! 悲しく終わるより爆発オチで終わったほうがおもろいやろ!」

「でも建物一個まるまる爆破て……」

「ボーンデッドマンションはアトラクションの仕様上照明が少ないんや。見えない中でゾンビの応対するのは無理やから爆破してぶっ飛ばしたほうが安全。現場の判断はこんなもんやで」


 まぁでも、あんな爆発のなか生き残ってるゾンビはいないだろ……。


「それにしてもここ、ぎょーさんゾンビおるなぁ。いくら轢き殺してるかわからへんで」

「ってかこの数やばくないですか? トラック動けなくなるんじゃ」

「あ」


 トラックの周りには数えきれないほどのゾンビの群れが群がってきた。

 ゾンビの肉塊が壁となってトラックが止まってしまった。トラックに群がるゾンビ。

 

「でられへんくなってしもた!」

「なにしとるんすかーーー!」

「しゃあないやん! なんとかしてきてや!」

「しょうがないなぁ!」


 あたしは窓を開けてゾンビの群れに飛び込んだ。近くにあったベンチを持ち上げゾンビをそれで薙ぎ払っていく。


「トラックの荷台に刀置いてあるからそこまで辿りつけりゃ!」


 ゾンビを蹴散らし、刀を手に入れるべく、トラックの荷台に向かう。

 刀を手にした瞬間、どこからか鉛玉が飛んできた。あたしはそっちのほうを見ると、生身の人間がパチンコを手にしてこちらを見ている。


「その刀、ゾンビにゃ使えねえだろ。触るんじゃねえ」

「生身の人間……?」

「あぁ? ゾンビのくせに喋れんのかテメエ」

「え、いやまぁ……」

「喋れるゾンビ、意思疎通ができるゾンビ……。初めて見たぜ。で、何してんだよ」

「あー、あたしら復元軍っていう組織でさ、この夢の国のゾンビを一網打尽にしに来たんだ」

「復元軍……? 助けに来てくれたのか!」

「そう。助けに来た。まぁ、生存者がいるとは思わなかったけどな」

「それなら話が早い! 俺が生存者のところに連れていってやる! いくぞ!」

「の前にここを何とかするんだよ! あたしの上司がこの車に閉じ込められててさ。あ、もちろんきちんとした人間だから向かわせるのはそっちのほうがいいかも」

「……だな。じゃ、こっから援護してやる。ゾンビでも助けてくれるんなら俺らとしてもありがてえしな!」


 ということで、あたしは刀を手に取りゾンビを切り裂いていったのだった。











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