東京デスニィランド ①
トラックが揺れる。
「今回の任務はいつもより過酷です。皆さん心してかかるように」
「はいっ!」
汐里は隊員に激励をかけていた。
あたしは隣に座る越後さんを見る。
「で、なんでついてきてるんですか?」
「連隊長やからな」
「いや、本部で指示だしするのが役目なのでは?」
「ええねんええねん。わいも戦えるでな。それに……わいとしても今行く任務の場所はいかなあかん」
といっていた。
あたしは今どこに向かっているのか知らないんだが。このトラックはどこに向かっているんだろうか。
長いことトラックに揺られて、ついた場所は千葉県にある某有名な遊園地のデスニィランドだった。
夢の国と謳われたパラダイスが、門の向こうにはゾンビが徘徊している悪夢の国と化してしまっていた。
「それでは、任務はじめ!」
門を爆弾で爆破し破壊して、復元軍兵士は中へと突撃していったのだった。
銃を乱射し、ゾンビの脳天を打ち抜いていく。汐里も銃を構えてゾンビを討ちまくっていた。
「……暇だ」
「銃持ってへんもんなぁ。ま、ならわいに付き合えや」
「越後さんに? でもあたし汐里を守らなきゃ……」
「久保田クンもそう簡単に死ぬほどやわじゃあらへん。過保護なやっちゃなぁ」
「だって汐里は泣き虫で弱虫で……」
「いつの時代の話や。過去の話やろ」
「……ですかね」
あたしは汐里のほうを見る。
強い顔をしていた。あたしはまだ過去のしおりの幻覚に囚われているんだろうな。三日会わざれば刮目してみよとかとはよく言ったものだ。
でも……ちょっとそれはそれで寂しい。あたしに守られるだけの存在じゃなくなっちゃったっていうのがちょっと悲しい。
「……あたしって結構引きずるタイプなのかなぁ」
「やろな。こっちや」
あたしは越後さんについていく。
越後さんが向かっていったのはアトラクションの一つ、ボーンデッドマンションの中だった。
「わいはな、大阪から来たんや」
「まぁ、ですよね?」
「ああ。わかるわな。こんな喋り方やさかい。で、パンデミック当日、わいは家族とデスニィランドに来てた」
「家族と……?」
「14になる可愛い娘がおってなぁ……。反抗期とか迎えたことのない可愛い子やった。でも……。後ろに座っていたゾンビに噛まれた」
越後さんはここに思い入れがあったらしい。だから来た。
家族がまだゾンビとしてここを彷徨っているということ。自分の家族はせめて自分の手で弔いたいという願いなんだろうか。
「わいは怖いの苦手で……。うちの女房と娘だけが乗っててん。帰ってきたらゾンビになっとって……わいは怖くて逃げだした」
「そりゃ……」
「わいもあの時一緒にゾンビになっていれば、一緒でいられたかもしれへん。でも、見捨ててしまった」
「……」
「だからせめて罪滅ぼしっちゅうわけやないけど、家族はわいの手で仕留めたい。その手伝いをしてくれ。後生や」
「いいですよ」
そんなこと言われたら……。
ボーンデッドマンションはバギーに乗って進むアトラクション。電気で動いているから本来は動くはずもないが……。
「なんや、動いとるやんけ……」
「ゾンビがループして遊んでるみたいですね」
「電気を生み出しとるのか? どこで? 自家発電に切り替わるゆうても限度っちゅーもんが……」
「とりあえずせん滅するならアトラクションを止めましょう」
「ああ! せやな……。だが、動かしてる知能があるとするならきっとボスゾンビや。少々手強いでぇ」
「あたしが近接で戦えば何とかなるでしょう」
あたしはアトラクションの中に入っていく。
ボーンデッドマンションか。懐かしいな。よく見ていた。あたしは手あたり次第、ゾンビをぶっ倒していく。
アトラクションの裏のほうに動かす機械があるはず。まずはそれをぶち壊さなきゃいけないが……。
「暗い!」
これじゃ何も見えねえよ!
この中じゃ越後さんは無理がありすぎる。あたしもゾンビとはいうが、音でどこにいるかは判断できていない。
だが、ゾンビは音で判断して寄ってくるらしい。となると、この暗闇は奴らにとって絶好の……。
「こりゃ無理やな。いったん退避するで」
状況のまずさに気づいたのか、越後さんともどもボーンデッドマンションの中から出ていったのだった。
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