復元軍大佐 越後 陸前

 薬師丸さんの手伝い?も終わり外に出ると黒縁メガネの男の人と汐里が話していた。

 汐里たちはあたしの方を向く。


「よっ! あんたが今噂のゾンビ女子高生かいな!」

「あなたは?」

「わしか? わしは越後 陸前。君らの隊とかいろいろ任されとる連隊長や。階級は大佐。ま、よろしゅう頼むわ」

「……階級?」

「なんや、知らへんの? 久保田クン、そこ説明せな」

「いや、必要ないと思いまして……」

「いやいや、あるやろ。軍に所属しとる身なんやから。しゃあない、わいが説明したったる。立ち話もなんやし場所、移そか」


 そういって小さな会議室に案内された。

 椅子に座らされ、あたしは説明を受けることにした。


「ま、階級つってもそんな難しいことはあらへんで。日本陸軍の階級制度と一緒や。わいが大佐で久保田クンが中尉や。六道クンやと……まだ入りたてやし二等兵や……。まぁ、六道クンは特殊やし階級は気にせんといてもええけどな」

「覚えろつったり気にしない方がいいとかどっちなんですか」

「ま、こういうの知っておいた方がオモロいやろ。なにか漫画みたいでワクワクせんか?」


 この人なんかすげー適当な人な気がする。


「朝陽、この人すごい適当だから半分くらい真に受けないほうがいいよ」

「やっぱりかよ」


 やっぱ適当な人なのかよ。


「かっはっは! ま、ゾンビ共が蔓延るこの世界、少しでもゆったりとした考え欲しいやんな〜、それより、次の任務は伝えたから頑張りや〜」

「それはわかってます」

「早く平和な日本が戻ってきて欲しいもんやで」

「そうですね……」


 汐里は部下の人に任務を伝えてくると言って出て行った。

 あたしは越後さんと二人きりになる。


「さてと。じゃ、わいも少し聞かせてもらおーかな。お前さん、人を噛んだことはあるんか?」

「えっ?」

「わいとしてもなぁ、ゾンビを仲間に引き込むんは相当リスキーやと考えとるんよ。それに、人を噛んだことがあるとなったらわいも流石に我慢の限界や」


 冷たい視線を送られる。

 わざわざ違う部屋に連れ込まれたのはこれを聞くためか……。

 だけどあたしは人を噛んだことはない。


「ないですよ。あたしは汐里たちがくるまでずーーっと一人で学校にいましたし」

「ふーん……」


 越後さんは見定めるかのようにあたしを見ていた。

 居心地の悪い視線。あたしはその視線を感じても何も言えなかった。


「あんたが人を襲わないという確証はあるんか? これから自我がなくなったりする可能性は?」

「あるかもしれません。っつーか、なぜ自我が残ってるのかすら謎なんですよ。あたしはいわゆるイレギュラーみたいなもんで前例がないはずです」

「それもそうやな……。それが一番怖いんや」

「ですね。イレギュラーはイレギュラーな結果を生むもんですし」

「せやな。ま、今は危険性はなさそうやな……」


 越後さんは悪かったと頭を下げた。


「不躾に悪かったな。わいとしても危険性を考えなきゃあかんのや。久保田クンの友人だという理由だけで生かす理由にはならへんからな」

「だとしてもゾンビ研究のサンプルとして生かす理由はあるでしょう」

「……その手があったか!」

「えぇ……」

「たしかになぜ自我があるのか、それを調べるサンプルとして殺せんやんけ!」


 なんだこの人。


「言われてみりゃそうやなぁ。頭回んなぁ……。ゾンビなのに考える脳あるのおかしないか?」

「それあたしに言わないでくださいよ」

「そっかぁ。どちらにせよサンプルとしては必要か……」

「自我がある分、要求には応えやすいですしね。それに、戦いでもあたしは基本ゾンビに襲われないんで近接戦はほとんどリスクないですし」

「ゾンビやもんなぁ。ま、それならええわ。うん、本当に悪うことしたな! ま、気にせんといてや!」


 越後さんは笑い飛ばしていたのだった。







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