東京都渋谷区 ③
トラックが急発進し、あたしはそのままハンドルを握りしめた。
ブレーキ! ブレーキ!と思って踏んでみたが、ブレーキが利かない! あたしは仕方ないので、このまま暴走トラックでゾンビ共を一掃してやることにした。
グチョッ!ベチャッ!とゾンビたちがトラックに轢かれてトラックに肉片が付く。窓もゾンビから滴る肉の腐り汁で見えなくなっていた。うげぇ気持ち悪い。
「脱出!」
あたしは扉を開けて外に飛び込んだ。
暴走トラックは一人でに暴走をはじめ、建物に突っ込み大きな爆発を起こす。銅貨あの建物の中に生き残った人がいませんようにと願うばかりだった。
「はぁ……」
ゾンビの体じゃなきゃ動けなかったな。
あたしの肉体は傷がついていた。少し皮膚が破けており、そこから少し骨も見えてるくらい擦ってしまった。
ここまで無茶をするもんじゃないな。ゾンビの肉体を引きちぎりくっつけておく。
「朝陽さん! 渋谷駅の生還者を全員保護したのでまずは退避を! ゾンビ全員倒す時間はありません!」
復元軍の兵士の一人が呼びかけてきた。
あたしは全力で走り、ゾンビをぶち殺しながら復元軍の車まで戻っていく。生還者は手に入れたバスに詰め込まれているようで、あたしはトラックの中に乗り込んだのだった。
「疲れたぁ」
「ゾンビの体でも疲れるの?」
「気分的には。ゾンビ自体割とグロテスクだから精神的に少し来るぜ?」
「わかる」
トラックの荷台で汐里と話していると、併走しているバスのほうから悲鳴が聞こえてきた。
あたしたちは身を乗り出し様子を見てみると、バスの乗客の中にゾンビがいた。バスが止まり、無事な乗客は全員前のほうに避難している。
「え、バスの中に……どうしよう!?」
「あたしが行く!」
あたしは飛び降りて、バスのほうに向かう。
バスの中に入り、あたしはゾンビを一体ずつ丁寧にバスの外にぶん投げた。
「仲間割れ……?」
「みなさん、落ち着いてください。あの人はうちの仲間でして、ゾンビになっているのに自我が残っている珍しいパターンです」
「そ、そうなの?」
「そうっす。あたしはゾンビに噛まれても平気なんで、ここはあたしに任せてください」
ゾンビの乗客は全部で3名。投げたのは1名だからあと2名は外においやらねぇといけねえな。
あたしはゾンビの着ている服をつかみ、入り口のほうに引き寄せて蹴飛ばした。そして、あたしを無視して乗客のほうに向かうゾンビの襟首をつかみ、頭をぶん殴り窓の外に弾き飛ばす。
体は動かなくなり、そのままぽいっと投げ捨てた。
「はい、しまい。なんで乗客にゾンビがいたんだ?」
「我々に気づかぬうちに噛まれていたようで……。来る道中まったくゾンビに出会わたなかったわけではないですから」
「そうなんだ。ま、仕方ないさ。あたしもこっちのってていい? あっちのトラックは行っちゃったし」
「はい」
あたしは後部座席に座った。
ほかの乗客の人も恐れてはいるが、あたしに害はないとうすうす感じたのか、ゆっくりと席に座っていく。
あたしは一番後ろの端っこに座り、乗客全員が無事にすわれた。
「お姉ちゃんゾンビなのに助けてくれたんだ」
「ゾンビが全員悪人だと思うなよ」
「いや、自我は普通ないですから襲う時点で悪なのでは……」
「それはたしかに」
女の子のママさんから鋭いツッコミを受けてしまった。
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