東京都渋谷区 ①
あたしは日本刀を構え、ゾンビの群れに突っ込んでいく。
東京都渋谷区。
かつてのスクランブル交差点の熱気はすでに色褪せており、ゾンビたちが徘徊し、人間の点検が行われなくなった建物はすぐに劣化して一部崩れていた。
「おーおー、かつての渋谷もひでえ有様になったもんだ」
「この渋谷のどこかに生き残ってる人たちがまだいるっていう噂だからみんなくまなく探してね!」
「はい!」
汐里の指示のもと、全員渋谷に散らばっていったのだった。
あたしはとりあえずゾンビの掃討作業だった。あたしはゾンビだし、もし生きてる人間のところに向かって出会ったらビビらせてしまうということでゾンビの掃討作業。まあ、仕方ないだろう。
「ゾンビ共! あたしが蹴散らしてやるぜ!」
刀を振るいゾンビを斬り裂く。
ゾンビは仲間が死んでも何も気にしていない。ゾンビのあたしを同族だと認知しているから、ゾンビ共にはあたしを殺せない。
そういうのは好都合! ゾンビに知性はねぇ!
すると、背後からゾンビの攻撃を受けた。
ゾンビの身体で痛覚はないが何かが当たったという感覚があった。
道路標識を手にしていた筋肉ムキムキのゾンビがあたしを尖ったところで突き刺している。
「ちっ、知性あるゾンビかテメェ」
「ゔあ゛あ゛……」
これがボスゾンビ……。
あたしは道路標識を引っこ抜き、刀を振るう。頭から一刀両断し切り伏せた。
「キリがねえぜ……。肉体も少し傷付いちまったしよ……。無理しすぎると肉体が持たねえな」
肉体がやられすぎたらいずれなくなって動けなくなるだろう。
ゾンビの身体に痛覚はない。気配で気づけたからまだいいが、痛覚という危険信号がない今、被弾に気づかないのはすごいまずい。
回復する方法はねぇのかな。
適当なゾンビの肉体をもぎ取ってくっつけちまえ。同じゾンビだ。肉体の修復はこれでいいだろ。ほぼ死んでるようなもんだしな。
「ボスゾンビが何体いるかだな。このスクランブル交差点にゾンビが多く集まってんのはいいが……この数すげーだるい。火を放って一掃……それはあたしも死ぬな」
ゾンビの弱点は火だと思うけどな。ゾンビ映画じゃそういうのが多かったし。肉体に水分がなくからっからだからよく燃えるとかそういうのなんだろうか。いや、ゾンビって水分ないのかは知らねえけど。
「地道にやってくしかねえな」
あたしは刀を振るっていると、視界になにか小さな女の子が走っているのが見えた。
ゾンビたちも女の子の足音に気づいたのか、そっちに向かっていく。
「きゃああああああ! た、たすけ、助けて!」
女の子は全力で走ったが……。
「きゃっ……!」
アスファルトの上で転んでしまった。
ゾンビは女の子を追い詰める。女の子は小さな石を投げるもゾンビには効いていない。
涙目になりながら必死に逃げてる女の子。あたしは刀でゾンビを切り裂く。
「大丈夫か?」
「ぞ、ゾンビが助けてくれた……?」
「あたしはゾンビだけど味方のゾンビだよ。この場はあたしに任せて逃げろ! 渋谷駅の方に行きゃ復元軍っつうあたしの仲間がいるはずだ! そいつらはきちんとした人間だからそいつらに助けを求めろ!」
「わ、わかった!」
女の子はたったったっと元気よく走り出す。
走る音を追いかけようとするゾンビ。あたしは足を切り歩けないようにさせていく。
「生き残りがいたか……。しぶてえもんだ」
人間のしぶとさはすげえな。
すでにほとんどの店が廃れて廃墟となってんのにどこにいたんだあいつら。
「ま、生き残りは多い方がいいしな! っしゃ、あたしはあたしの使命をまっとうしねえとな!」
気合い引き締めいざ参る。
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