復元軍本部
あたしは車に乗せられ、復元軍本部に行くことになった。
「ゾンビになってから何も食べてないの!?」
「まぁな。腹減らねえし……」
「へぇ〜」
汐里とあたしの話をしながら本部に着くのを待っていた。
復元軍本部は敢えて東京都に設置しているらしく、ゾンビが綺麗さっぱり片付いたらそこを再び日本の首都として機能させていくとかなんちゃら。
「随分と先の未来の話をしてんだな」
「ま、未来の話もしたいお年頃だから。そろそろ着くよ! あたしがまず上の人に話を通してくるけど……」
「わあってるよ。はら、手錠と口枷つけろ」
あたしは口に猿轡を嵌められ、手には手錠をかけられた。そして、檻の中に入れられる。
本部に連れてく際にはこうして安全を確保しないといけないようだ。ゾンビを連れて帰るのは何回かあるらしく、噛まれないようにするためにこういうことを徹底しておかないといけない。
それには例外はなく、いくらあたしでも猿轡をつけてなきゃダメらしい。
「隊長、到着しました」
「うん。じゃあ、みんな朝陽を運んで!」
「了解です!」
あたしは檻ごと運ばれていった。
なんつーか、すげえ見せ物感が半端ない。すれ違う復元軍の兵士たちもこっちを見て捕まえてきたの? 珍しい個体とか聞いてくる。珍しいとかあんの?
あたしはなんか広い会議室のような部屋に運ばれたかと思うと、何やら偉そうな人がたくさん椅子に座っている。
あたしは猿轡を外された。
「え、なに。あたし見せもん?」
「喋ってる……?」
「ゾンビ、だよな? ゾンビメイクとかして……」
「ゾンビです! 朝陽、ゾンビらしいことして!」
「無茶振りすんなよ。まぁ……目玉とか外れます」
目玉をポンっと取り出してみた。
周りはそれで信じたらしく、あたしをみて驚いていた。
「お願いです、特例として朝陽……六道 朝陽も隊員にしていただけないでしょうか」
「隊員って言っても……ゾンビには……。というか、ゾンビに武器を持たせるのは厄介でね……。ゾンビである以上、我々の駆除対象だ」
「久保田くん……。君の友人であることは聞いている。だが、君の話だけで判断はしかねるよ」
そらそうだろ。
汐里と偉い人たちは真剣に話し合っていた。あたしが聞いても多分退屈なので、あたしは檻にもたれかかり寝ることにした。
目を閉じ、少しするとあたしを呼ぶ声が聞こえてきた。
目を開けると、汐里があたしの頬を叩いている。
「あ、起きた! おはよー!」
「ん、話し合いは終わったのか……?」
「うん! 見事に隊員になったよ!」
「いやなんでだよ」
汐里が説得に成功したようだった。
心配そうにみている偉い人たち。あたしはどうやら汐里の下でゾンビたちと戦う部隊に配属されるようだ。汐里が担当する復元軍戦闘部隊第一小隊の一兵士として……らしい。
「えぇ……。皆さんそれでいいんですか? あたしゾンビっすよ?」
「呑気に寝れるなら危険性はないだろうという判断だ。自我があるうちは我々に協力してもらうことにした。ゾンビである貴殿は襲われても問題ないのだろう?」
「まぁもうゾンビですからね」
「少しでも人間に危害を加えるのならその場で殺す。それが条件だ」
「うっす……」
協力して、人間を襲うなということだった。
まぁいいけど。襲うつもりはねえし。あたしの処分が決まったところで、あたしの住むところという話になった。
あたしは別にゾンビがいる街で過ごしてもいいと言ったが、それだと指令が届かないということで、地下のゾンビ収容施設の一部屋を借りることになった。ここは調査用に捕らえたゾンビたちがいる。
「うへぇ……。環境最悪……」
「ゾンビたちが汚してしまうからな。ここに配属される者には給料を他より高くしている」
「じゃああたしも……!」
「いや、貴殿は違う。ゾンビだからここというだけであり」
「ゾンビ差別よくないぜ旦那!」
そもそもあたしに関しては給料貰ってどうするんだよという話はあるが。
あたしは比較的綺麗な牢屋の中に入れられる。扱いがゾンビなのはいいけどここは衛生面に関しては最悪だな……。ここの看守は臭いのかマスクつけてるし。
話し相手もいねえから結局暇なままじゃねえか。ゾンビたちは話し相手にならねえしよ。
「……ま、元に戻るまでの辛抱か」
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