プロローグ ③
あたしは目を覚ました。
ムクっと起き上がり、周りを見渡す。ここは死後の世界かとも一瞬思ったが違う。
周りにはゾンビの死体が転がっていて、あたしの手には木刀が握られていた。
「……ん?」
なんか普通に生きてる……?
あたしは自分の身体を見てみる。ゾンビのように、体が少し腐敗していた。グロ……。
立ち上がって少し走ってみる。前と同じように動ける。
え、どうなってんだ? 普通に自我あるんだが?
でも、身体はゾンビになってんだよな……。ぴちぴちの女子高生だった六道 朝陽の身体がゾンビになってる。が、なんか自我がある。
「どういうこと? なんでゾンビになってんのに自我あるの?」
訳がわからん。
とりあえずみんなの様子を見に行きたい。この状態で行ってもパニックを起こすだけだろうけど……。陰から見るだけ……。
あたしは体育館の扉を開けて廊下に出た。
静かな廊下の中。だがしかし、ゾンビたちが徘徊している。そこには佐藤先生のゾンビとかいた。
「汐里無事だったかな……。てかあたしもゾンビだからゾンビに襲われねーのな」
ゾンビ仲間だからか。
とりあえず汐里が無事に逃げてくれてるといいんだけど……。
どこの教室を探しても汐里の姿は見えなかった。ゾンビの顔も確認してみたけど汐里の顔を持ったゾンビは見えない。
これは逃げ切れたと確信していいのだろうか。
そうだと信じたい。いや、逃げ切れたと信じておこう。とりあえずは安心だ。
……で、あたしはこれからどうしたらいいんだろうか。
このパンデミックの原因もわからねえし、なんであたしがゾンビになっても尚、自我が残ってるのかわからねえし。とりあえずこの学校のゾンビたちは全員殺しておくか。また誰か来るかもしれねえし。
数年後にはワクチンとか開発されてんのかな。ゾンビ化が解けるワクチンとか。
わからん。とりあえず、下手に動いて討伐される危険を犯すよりここにいた方がゾンビとしては安心かな……。
「意味わからんことだらけだ……」
とりあえずあたしはここで過ごすとしよう。ゾンビが入ってきたらその都度処理かな。
身体はゾンビでも心はゾンビじゃねえから。あたしはいつでも心は人間だからさ……。
「……食事とかいらねえよなこの身体」
ゾンビだし餓死の概念あるのか?
身体的には死体だろ。死体が動いてる感じだから死んでるやつに餓死の概念はねえ、よな?
「とりあえず、寝るか」
死体が寝るってどんな状況だよ。
死体が寝たらそれは死んでるってことじゃねえの?
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