短編：悪魔が来たりて首を切る！！！

第四話 自称小説家

　さて、ここは、石川県警本部の取調室である。

　「カキコメ」の運営に聞いて私のパソコンを特定。石川県警から、任意聴取を受けていた。

「まさか、ペンネームと本名とが同じとは、立花さんも中々の人物ですな。しかも、結構、この事件の核心を付いておられる。

　と言う事はですね。貴方が、この「ラブホ頭部切断殺人事件」の共犯者じゃないんですか？」と、取り調べの刑事が、狡猾そうな目と声で囁きかける。

「いや、この私の愚作、『人の生首の事件』は、私が勝手に推理して書いたものです。「カキコメ」のポイント数なんか、わずか数十ポイントしか無いじゃないですか？それだけ、読者からの注目も少ないのですよ」

「では、何故、貴方は、自分自身が疑われるかも知れないのに、捜査一課長宛に、自分の小説の手紙を書いたのです？」

「それは、この話が、万一、新聞にでも取り上げられれば、読者数、いわゆる「カキコメ」ではＰＶ数やポイント数と言いますがが、飛躍的に伸びると思ったからですよ。

　ＰＶ数とは、「カキコメ」で、この小説を飛んだか、目を通してくれた人の数です。人によっては、数十万ＰＶの作家さんもいますのでね」

「しかし、この貴方の小説は、まるで真実を描いているようにも思えますが……特に、石川県警が金沢市民に極秘で設置した特殊秘密防犯カメラの件を、どうして知っているのです？」

「馬鹿を言ったら駄目ですよ！

　北陸新幹線開設後、極秘で設置したと言うのは、都市伝説のように金沢市民の間に広がっています。

　但し、何処に設置したかは、石川県警内で見るにも、特殊なパスワードが必要ですがね」

「ここなんですよ。貴方は、あまりに内部情報に詳しい。これは、可笑しいではありませんか？」

「なあに、種明かしをすれば、私の甥っ子が、この石川県警に入庁しています。立花良一と言う刑事です。

　ちなみに、この特殊秘密防犯カメラの録画情報を見れる課は、捜査一課だけでは有りません。外に、生活安全企画課や科学捜査研究所のある程度以上の地位の者は、そのパスワードで、直接見る事ができます。

　私の甥っ子も、この事件のために設置された「ラブホ頭部切断殺人事件本部」の一員ですよ。で、色々調べてみたそうですが、この３０１号室は、一般の防犯カメラも含めて、最も死角になる部屋だそうです。

　で、私は、この事件は、共犯者がいる、その共犯者は、下手をすれば、この石川県警の中に潜り込んでいるのでは？

　とすれば、その協力者は、多分若い者か、逆に、中年でスケベ親爺で肩書きもそこそこの人間ではないかと推理したのですよ。まあ、最初の第一話では、巡回中の若い警官としてますがね……」

「では、立花さんの考えでは、あの生首の消滅事件の真実とは、３０１号室の窓に、傷の残らない特殊な滑車を使っての、ビニール袋に入った生首と、着替えの入ったカバンとの入れ替えが、その大きなトリックだと言われるのですね？」

「そうです。あそこの窓だけが開いたからです。ここでの最大の問題は、翌朝のゲリラ豪雨で、ラブホ３０１号室の真下に、もしかしたらあの事件当時には、わずかに飛び散っていたかも知れない血痕などが、綺麗さっぱり流されてしまった事です。

　そして、事件から既に、三ケ月以上も過ぎています。ソコを調査しても、如何なる痕跡も見つから無いでしょうね。残念ながら」

「では、その生首やガイシャのスマホは、今、何処にあると思いますか？」

「コンクリート詰めのドラム缶か何かで、日本海の海底にあると思います」

「では、その頭部等の発見はできると思いますか？」

「いや、真犯人を捕らえなくては永久に出て来ないでしょうね。残念ながらね……」

「と、言われますと？」

「多分ですが、証拠があまりに少な過ぎます。多分、迷宮入りでしょうね」

　この取り調べの話を聞いた、捜査一課長は激怒。

「その自称小説家を、別件で逮捕して徹底的に締め上げたらどうなんだ？」

「課長。お言葉を返すようですが、あの自称小説家は、身障者で、左半身はほぼ麻痺状態に近いですし、年齢も７０歳過ぎです。

　それに、毎日家自宅にいて、近所に住む高齢の母親の介護をしています。近所の人が、毎日、朝・昼・晩、その母親の元に通っているのを見ています。

　今回の事件への関与は、不可能では無いでしょうか？」

「うーん、確かになあ……」少し、冷静になった、捜査一課長は、己の発言の無理さを理解した。

　このまま、万事、休すなのだろうか？