短編：悪魔が来たりて首を切る！！！

第三話 深まる謎

　石川県警の中に、１００人体制を誇る、「ラブホ頭部切断殺人事件本部」が設置された。

１．二人の歩く姿は、金沢駅西口（裏側）周辺の防犯カメラには、一切映っていない。なので、二人は、想像ではあるが、ラブホの近くにある有料コインパーキング（ラブホから徒歩１分程度）に車を止めた事は間違いが無い。

２．で、殺害現場は、ラブホ「ピンク・シャトー」のユニットバスである事は確定している。

３．しかも、そのラブホのテーブルには、度数の強い洋酒のジンのロックの飲みさしがあったが、そこからマイナートランキライザーのエチゾラム（商品名：デパス）の成分が検出された。

４．以上の事から、被害者は、ベンゾジアゼピン系の向精神薬が入って作用の増強した強いジンを飲んで、入室後１時間頃には、既に、寝入っていた可能性がある。

５．で、この寝入った被害者をユニットバスまで引きずって、そこで、頭部を切断した。問題は、退出時の犯人らしき女性の服装は、入室前のものと同じであって、血痕などは全く映っていなかったのである。

６．しかし、当日の当該時間に、そのラブホに泊まっていたのは、その当該一組のみであって、他の部屋には、協力者は誰もいないのである。また、全室オートロックのため、警備員も置いていない。

７．もう一つだけ、唯一、防犯カメラにも写らずに、当該ラブホの３階に入るには、非常階段から上り、内側から鍵を開けてもらう事だ。しかし、鑑識によれば、その非常階段や非常用ドアは開けられた痕跡が全く無い。

８．最も不思議なのは、石川県警が誇る特殊秘密防犯カメラには、全く映っていないのである。あたかもその秘密防犯カメラの位置を事前に知っていたかのようだ。

９．更に、犯人と思われる女性が退出したあと、急激なゲリラ豪雨が降り、ラブホ「ピンク・シャトー」を直撃、１時間に４５ミリの大雨である。ラブホ周辺の痕跡は、綺麗サッパリ洗い流されていた。

１０．なお、ラブホの窓は、開け閉め可能であった。行為後の独特の匂いを消すために、開閉は既に何百回もされていた。

　本来はこのような窓は「はめ殺し」構造になっているのだが、設計上の欠陥か、開閉可能だったのだ。

　まさか、捜査一課内に共犯者や内部協力者がいるので無いのだろうか？

　それ程の疑いを、捜査一課の係長は持ってしまった。

　そこで、絶対の信頼の置ける一警部に、捜査一課内の刑事達のその日のアリバイを、徹底的に調べさせた。しかし、全員、鉄壁のアリバイがあったのである。

　ちなみに、冒頭で北川恭子と関係を持ち、その後刑事になった竹本雄一は、今年の４月に、生活安全企画課に異動になっており、もはやこの捜査一課には、陰も形も無かったのである。

　なお、一つだけ進展があったとすれば、被害者の男性の身元が判明した事だ。

　あの、世間を騒がさせた日本最大級の中古車販売業者のビックリモーターの元店長で、１０年前にこの金沢市で独立。

　今回のラブホ事件の場合、その最も重要な、被害者の生首とスマホは、持ち去れていたのだ。通話や連絡記録も、当該スマホが無い以上調べようが無いのだ。

　やがて、一ヶ月、やがて二ヶ月、三ヶ月経っても、全く、犯人は捕まらない。

　しかし、ラブホの薄暗い画像ぐらいが、雄一の証拠であり、当該県警が誇る特殊秘密防犯カメラにも、全く映っていないのだ。

　この特殊秘密防犯カメラに写ってさえいれば、例え、マスクやグラサン等を付けていても、最新型のＡＩである程度の人相画像が作れるのだが、何度も言うように、この特殊な防犯カメラには、全く映っていないのだ。

　これは、下手をすれば、「迷宮入り」かも、と、捜査一課長、係長も思い始めた時である。

　そこに、一通のパソコンで打った手紙が、捜査一課長に届いた。

　差出人は、「立花　優」となっている。

　手紙の内容は、

「パソコンを開いて、小説投稿サイトの「カキコメ」の中の、私の投稿した小説『人の生首の事件』を読んで見て下さい。私なりの、推理が書いてあります」と書いてあったのだ。

「係長、何だこの「カキコメ」とは？」

「いわゆるＷＥＢ小説投稿サイトの一つです」

「いや、こいつこそが、実は女の犯人の本当の協力者じゃ無いのか？まず、こいつを、任意聴取だ！」

「まず、「カキコメ」を読まれなくてもいいんですか？」と、捜査係長が聞く。

「三文作家の小説なぞ、読む必要も無いわい。直ちに、何処の何奴か調べてくれ」