社畜 スポンサー契約

丸一日休み疲れがだいぶ取れた蓮二は翌日仕事に向かう


「おはようございます」

「おぉ、おはよう」


自分の椅子に座り今日の仕事をする

有給を取った分仕事残っている

(流石に有給中は他の人は仕事をしたのか)

獅子神源次郎の一件で上司は自分の仕事は自分で処理をし始めたが同僚は懲りずに押し付けてくる

いつも通りに仕事をこなしていく

上司の分がなくなり楽にはなるがそれでもかなりの量がある

(なんか増えてね?)

同僚の分の仕事がなぜかいつもより増えている


「頼んだぜぇ」

「それじゃ俺も」


仕事の資料を蓮二の机に置いていく


「井坂君少しいいかな」


白髪の増えた上司が現れた


「なんですか?」

「彼らの仕事が増えた理由なんだが」

「あぁ、なんか増えてますよね。何かあったんですか?」

「君がいない2日間に上の人が来てね。彼らは真面目に働いて気に入られてね。重要な案件を任されているんだよ」

「どれですか?」

「これだね」


上司は積み上げられている中から取り出して渡す

受け取り内容を見る

(成程……は? 探索者のスポンサー!?)


「探索者支援!? この会社にそんな金あるんですか」

「流石にそれは失礼じゃないかな。でね付近の探索者のリストがあるんだけど最近話題の」

「近くですか」


(獅子神さんや竜胆さんとかかな。ほかは……そういえば知らないな)

探索者はあの2人としか特にかかわってはいない

リストを見ると見覚えのある人物が居る、それは天音の救出の時にいた人物達

当然一鬼と天音も乗っている

そして名前の欄に鶏と書かれた仮面の人物も乗っている


「くわぁ」

「どうしたんだいニワトリみたいな鳴き声を出して」

「いえ、面白い名前の人も居るんですねって」

「あぁニワトリ君ね。最近話題の探索者らしいんだよね」


(これ絶対僕じゃん! 身バレは嫌なんですが!?)

ニワトリという名前の探索者など1人しか居ない

それも丁寧に補足で炎の異能を使う人物と書かれている


「それでこれは勧誘しろと?」

「うん」

「……あのこの狙い目の3人のうち2人は配信者なんですが」

「そうなんだよね。配信者のスポンサーになれたら宣伝出来るからね」

「あとこの1人獅子神って苗字ですけど源次郎さんの娘かお孫さんでは?」

「……獅子神? ……確かにその辺の年齢の娘さんが居るとは聞いた事がある……」


一鬼の所を見て上司は険しい顔で呟く

片手でスマホを操作して天音に連絡する


『今いい?』

『良いですよ? どうかしました?』

『今うちの会社でスポンサー契約の話出てるんだけど、あっ、探索者を金銭面とかで支援する代わりに商品宣伝してくれって奴なんだけど』

『海外とかだとあるらしいですね。海外の会社から勧誘された事はあります』

『……狙い目ってので竜胆さんと獅子神さんが乗ってるんだけど……どう?』

『……何作ってる会社なんです?』

『……何を……ちょっとまってて』


「あのこの会社って何作ってる会社でしたっけ?」

「興味無さ過ぎないかなそれは……この会社はね。今はコンピューターソフトやゲームアプリかな。後はこの会社のマークの服とか」

「ソフト?」

「ウイルスバスターとか写真整理アプリとか……ただ余り売れてない」

「まぁ大抵優秀なのありますからね。ゲームアプリは?」


(ゲームアプリってなると面白いアプリなら全然宣伝出来るはず、写真整理アプリって便利じゃね)

スマホで調べてみる……有料だった


「これ無料にした方がいいですよ」

「無料にすると収入がね。それでゲームだけど某アニメのアプリだね」

「終わりじゃねぇか……」

「……人気アニメなんだけど」

「いつ終わる予定で?」

「……来月」

「これ諦めましょう。無理ですよどう足掻いても、てかなんでこんな仕事多いのにやってる事少ねぇんすか?」

「この部署の仕事の殆どは仕事中の労災、事故や事件、不備とかだからね。あと無理難題の案件が来るくらい開発班も頑張ってはいるから」

「そういやそうだった……」


(全然安定してないなこの会社……いつ倒産するんだろ)


『ウイルスバスターとか写真整理アプリとからしい』

『あぁ……はい、宣伝くらいなら全然大丈夫ですよ?』


「宣伝以外に何かやらせる予定は?」

「ちょっと待ってね」


上司が電話をする

電話はかなり短かった


「この会社のマークの付いた服で配信とか」

「探索者は命懸けですよ?」


上司を睨みつける

つい2日前仲間が命の危機に陥った、探索者の危険性を明確に再認識した

そんな矢先に配信でそんな馬鹿な真似はさせられない

蓮二に睨まれた上司は白髪が増えた

魔物と戦った経験のある蓮二の睨みは並では無い

獲物を狙う肉食動物


「……まぁ配信って言っても雑談配信とかでも良いから……宣伝してもらえればなぁと」

「まぁ探索中にとかで無ければ大丈夫か」


『雑談配信とかってしてるの?』

『たまにしてますね』

『そういう時にうちの会社のマークの服とか着て欲しいらしい、後はまぁ宣伝を』

『それであれば大丈夫です』

『探索者の支援は出来る限りこっちから進言してみる』

『少し支援して貰えればって思ってるくらいなのでそこまで気にしなくても大丈夫ですよ』

『やれるだけやってみる』

『頑張ってください』


一鬼にも連絡を取る


『どうした鶏君』

『うちの会社とスポンサー契約してくれない?』

『単刀直入だね。うん大丈夫だ、その話は聞いてるからね』

『源次郎さんか』

『おっ、知ってるんだ。源次郎は私の父だ。それで話を持ちかけられた。全く無謀な事をする物だね』

『それはそう……』


この会社は中小企業、それが人気配信者にスポンサー契約を持ちかける

昨日話した通り日本ではまだ浸透しきっていない事をやろうとしているのだ

海外で実績があるとは言っても無謀に等しい

それもまだ条件などが決まっていない


『鶏君はどうするんだい?』

『どうするとは?』

『会社に所属しながら鶏としてスポンサー契約を受ける。そして探索者として活動する。そうすれば普通に仕事するよりも稼げると思うし今より自由時間は増えると思うよ』

『確かにその手はあるかも……いやそれって良いのかな』

『鶏君って父と結構関わってる?』

『いやこないだ。休み取れた時に一度会話したくらい』

『成程……もしかして苗字は井坂?』

『そうだよ』

『成程、その件父に聞いてみるよ。スポンサー契約はOKだそう言っといてくれ』

『分かった』


「よし!」

「ど、どうしたんだい?」

「狙い目2人スポンサー契約取れました。あくまで仮ですがね。条件次第では破棄されると考えてください」

「優秀だとは思ってたけど今の間に何をしたんだい? 彼女達は人気配信者だろうに」

「特に凄いことはしてないです。とりあえずこの仕事に集中したいので自分の仕事以外の仕事は全部ゴミ箱捨てますね」


積み上げられた資料を抱えてシュレッダーにぶち込もうとする


「それは待って欲しいかな? 一応権力あるから言っておくよ」


同僚の仕事の資料を抱えて上司は消えていく

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