社畜 勝利

溜めた炎を放ち視界を遮る

それと同時に剣を持ち突っ込む


『突っ込んだ』

『決める気だな』

『頑張れー』

『負けるなあー』


異能の炎で作り上げた圧縮も溜めてもない炎の玉を用意しておく

炎が晴れると同時に炎を叩き込む

触手を防御に使い炎を防ぐ

魔物の視界は遮られている

炎は音もあり魔物はまだ蓮二の接近に気づけていない

攻撃をしようと触手を伸ばす


「鎖よ縛って!」


天音が叫ぶ

4本の鎖が触手を拘束する

触手が拘束された事もありまだ接近している事に気づいていない

防御していた触手が焼け落ちる

触手の防御が無くなった魔物に剣を振るう


「お願い」


天音は祈るように手を合わせる

異能を使った天音に出来る事はもう無い

狙うは首

素人の剣など技術面に置いてはたかが知れている

剣の知識はあるが知識で剣は振るえない

しかし、失敗すれば2人は死ぬという失敗出来ない理由による緊張と戦いへの覚悟

極限まで研ぎ澄まされた集中力と持っている知識によってこの瞬間、蓮二の脳は現状の最適な動きを導き出していた

脳の信号が体に伝わる、不要な物は全て排除され思考を介さずに身体は最適な動きを実現する

時間にして僅か一秒にも満たない刹那、体感では数分にも及ぶその刹那に刃は振るわれた

触手の防御は間に合わない

刃は確実に首を捉え首を切り落とす

振り終えて腕に痛みが走る

この痛みは本来出来る動きを超えた動きをした結果

(……痛いな……まぁ妥当か)

無理は承知、この程度で済んだのなら安い

首だけになった魔物は再生を始める

容赦なく炎を叩き込む

焼かれ魔物はコアを破壊される

身体も消滅していく、魔石と魔物の素材が転がる

素材は真っ黒な玉

禍々しい雰囲気を醸し出している、触ったら呪われそうな雰囲気がある

(何これ触れたくない)


『おぉ! 倒した!』

『すげぇ!』

『凄いな、再生持ちの魔物を倒しやがった』

『あれ3級の中ボス相当はあるだろ』

『それ以上かもしれんな。2人で討伐しきった』

『最後天音ちゃんの異能が上手く刺さったね!』

『流石確定拘束』

『剣術やったのかな? 身体能力高くね』

『少なくとも素人の剣では無かった……』


コメント欄は盛り上がっている

負けてもおかしくない戦いであった


「流石です」


倒した事に気付いた天音が近づく


「怪我は無いですか?」

「怪我は無いけど剣振った腕が痛い」

「大丈夫ですか!? どうしましょう」


『負傷?』

『負傷したのかな?』

『心配』

『天音ちゃん大慌てw焦り過ぎてる』

『落ち着いて』

『攻撃は受けてなかったみたいだけど』

『剣振って痛めたとか?』

『あぁ』

『まぁ普段使ってない筋肉使いそうだしあの人剣使ってないしね』


バックから応急処置に使える道具を取り出す

(外傷無い……使うのはどれだろ)

外傷に対する処置は出来るが今回はそうでは無い

対応が分からない


「まぁ後で病院行けばいいから大丈夫」


(時間かかったと思うし仮眠してシャワー浴びてご飯食べて出社かなぁ。時間あればいいなぁ)

魔石と素材を回収してダンジョンを出る

ダンジョンを出れば魔物に襲われる事はない


「あっ、今日の配信はここまでです! アーカイブには残しておくので」


『お疲れ様でしたー』

『おつっ』

『2人共休んでねぇ』

『いい戦いでしたお疲れ様です!』

『おつです! スーツの人仕事頑張ってね~』

『お疲れ様です!』


配信を終えてドローンを回収する


「蓮二さんお疲れ様でした!」

「あぁお疲れ様、なんとか勝てて良かったよ。最後助かった。どっち欲しい?」


拾った魔石と素材を見せる


「いえ、私はあの程度しか出来ないので……魔石の方を」


蓮二は魔石を手渡す

蓮二の場合売って金にするくらいしか無い

魔石の場合、証明に使える

取引所で魔石の鑑定を頼めば証明書をくれる

あくまで取引所が決めた強さのランクだが配信者にはかなり嬉しい仕組み

配信や動画で戦っても嘘だとか言われる事がある

そう言った人を黙らせる切り札になる


「竜胆さんの指示が無かったら頭が弱点って分からなかったし」

「あれは配信のコメントを見てその1つで推測しただけで」

「配信者なんだしリスナーのコメントも竜胆さんの努力の賜物でしょ?」

「……そ、そうですかね?」


天音が配信者で無ければコメントからヒントを得るとこなんて思いつかない上実行も出来ない

頭が弱点だと分かったからこそ蓮二は接近して剣で切る選択肢を得た

そもそも剣も天音が持ってきた物

ちらっとスマホで時間を確認する

今の時刻は4時

(出社は8時だから今からでも十分寝る時間もある)


「あっ引き止めちゃってすみません明日……今日も仕事あるんですよね」

「あるけど仮眠の時間取れそうだから大丈夫、思ったよりは早かったかな」


アクシデントで時間がかかると言うのは仕事で良くある事、天音の遅刻や想定外の敵、そう言った事が起きる事を考えて出社までに間に合えば良いと思っていた


「そうですか。それではお疲れ様でした無理せず病院に行ってくださいね」

「病院は行く予定」


(休みがあれば行く予定だから間違ってない)

解散してそれぞれ家に帰る

蓮二は帰ってすぐシャワーを浴びて仮眠を取り食事をして出社する

体力はろくに回復していないが仕事には行かなければならない

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