筋肉の宴

 ある日、お金持ちの知人の別荘に招かれました。ジャグジーやらワインセラーやら完備したゴージャスな邸宅でした。


 とりあえずお高い酒をグビグビいただきながら、おセレブな会話に参加しようと試みます。

 しかし金の話ばかりで退屈でした。ジャグジーで遊んでいた方がマシです。空いてる部屋はどこでも使っていいとの許可を得て、適当な客間で寝転がります。知らない場所でもすぐ寝られるのが私の特技です。


 酔いもあって、睡魔に誘われるまま、本格的に寝ようとしたところ。


 誰かが耳元で呼吸しています。はぁはぁ煩いし酒臭い。オマケに何か生温かいモノを握らされています。半分寝惚けながら頭突きと肘鉄を繰り出し、グリップ最大出力でソレを握り締めました。


 筋トレ趣味の私の握力は40㎏以上。子どもの頃から石頭で、3歳の時に1cm以上の化粧硝子を頭でカチ割っても掠り傷でした。


 特技があるとはいえ、知らないところで寝てはいけませんね。危機感の薄さを少々反省しながらおうちに帰りました。


 母さん、僕の握ったモノなんだったんでせうね 。「西條八十『ぼくの帽子』より」 (嘘)

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る