拘束
「信、知っているか」
信の視界が明るくなる。
信は、辺りを見渡してみると、高校の時に居た教室内だった。
前を向くと、高校の時に同級生だった友達が立っていた。制服を着ている。下を向いて確認してみると、自分も制服を着ていた。
「なにがだ?」
状況が上手くわからない信は、友達に話の続きを聞くことにした。
「俺達が小さい時に起きた、テンリ財閥本社で起きた爆発事故」
信は、話の内容を聞き心臓が、握られる感覚を覚える。
自分が執事になるきっかけになった事件だ。確か、自分が五歳ぐらいの時に起きた事件だ。
「その事件は知っている。それが、どうしたんだ?」
「実はあれ、派閥同士の争いで起きたって話だ」
友達が笑みを浮かべて、楽しそうに話すのを見て、信は気づいた。
この会話内容覚えているぞ。確か、高校二年生の時に話していた会話だ。てことは、今俺は夢を見ているんだ。
信は、やっと自分が夢を見ていることに気づいた。
「おい、信聞いているか?」
友達が不機嫌そうな顔で、信のことを見る。
「あぁ、聞いている。だけど、それは都市伝説だろ? あの事故は、結局ガス漏れが原因だって、警察が発表したじゃないか」
「どうも、それが違うんだよ。ネットの情報によると、あれは隠蔽。派閥同士が潰し合っていたことを世間が知ると、財閥のイメージが悪くなるだろ? それを政治家が警察に圧力をかけて、隠蔽させたって話だ」
友達の饒舌ぶりは止まらない。
まぁ、中学生、高校生のどこかで都市伝説にはまるのは、男子が通る道の一つだと思う。通らない人もいると思うが、俺は中学生の時に、その道を通った。楽しいんだよなこういう話。
「そんなことがあったら、日本は終わっているよ。真実を暴く警察が、真実を隠蔽しているからな」
「そんな夢がないことを言うなよー。こういう話は、実際に合ったって思うからこそ、面白くなるんだろ?」
友達は、両手を広げてやれやれと言う仕草をした。
信が、目を覚ますと、畳の上に寝させられていた。
「ここは?」
起き上がろうとすると、体に痛みが走る。
「いてて、この痛みは体勢を長時間変えなかった時の痛みだ」
信は、静香に毒を盛られたことを思い出した。
「確か、麻痺成分があるとか言っていたな」
信は、麻痺によって体が動かせず、長時間同じ体勢いたことが原因で、体が痛くなったんだろうと推測した。
「目覚めたようだね」
声の方向を向くと、スイが立っていた。
「早くここから出せ!」
信は、スイの元に走り出したが、途中で見えない壁にぶつかった。
なにに、ぶつかったんだ? 全く見えなかったぞ。
「あ、そうそう。僕の前には強化ガラスがある」
スイは、そう言うと目の前にあるガラスを、ロックする。
「強化ガラス。なんで、そんな物が?」
「ここは、元々展示室でね。国宝級の物を展示することもあるんだ。盗まれないようにするため、作られた部屋さ」
信は、その話を聞いて、脱出ではなく、情報を集めることにした。
闇雲に動き出すのはダメだ。ここは、スイと話して少しでも情報を得よう。
「それにしては、やけに広くないか?」
信は、辺りを見渡して言う。
俺がいる所は、住宅の一室分の広さがあるような気がする。
「ここに展示されるのは、部屋なんだよ。金閣寺の内部や、豊臣秀吉が作ったとされる黄金の茶室。それを再現したのが、展示される」
信は、それを聞いて納得した。
部屋を展示するスペースだったのか、それなら納得する。
「これから、俺をどうするつもりだ?」
「尋問ってところだね」
スイは、両手を腰に当てながら言った。
「なんで、俺が源財閥を見学しに来たのではないってわかった?」
「捕まっている身なのに、よく質問を言って来るね」
スイは、しばらく黙り込んだ。
「それは、静香お嬢様に聞いてみな」
スイは、そう言うと立ち上がった。
「部屋を出るのか?」
スイは、頷いた。
「そろそろ、静香お嬢様の所に戻らないとだからね」
スイは、真っ直ぐ部屋の出入り口に向かう。
「これだけは言う、俺は危害を加えに来たわけじゃない」
信が、そう言うと、スイは開けかけていたドアを止めた。
「知っているよ」
スイは、そう言うと部屋を出て言った。
「知っている?」
信は、スイが最後に言った言葉に引っかかりを覚えた。
なんで、危害を加えに来ていないことを『知っている』んだ?
信は、しばらく考えたが、思い当たることがなかった。
「まずは、この状況をどうにかしよう」
信は、部屋の探索を始めた。
部屋の形は、正方形。コンクリート製の壁二面に、ガラス張りの面が二面。
「この強化ガラスは、どうやって開くんだ?」
信は、ガラスをくまなく触ってみる。
出入り口っぽい場所がない。ていうことは、スイッチを押すと、上下どちらかにガラスが上がっていく仕掛けになっているのか。
「ガラスを割って出るのは、難しそうだな」
信は、考えるために一度座り込んだ。
横からだと難しいなら、上下からはどうだ?
「天井に換気扇が付いている」
信は、上を向くと換気扇が付いているのに気づいた。
あそこから空気が来ているのか、あれがなければ、俺は息ができないだろう。唯一、この空間から出られる可能性があるなら、あそこしかない。
「だけど、高いな」
天井まで、五メートルはあるだろうか。何もない、この部屋から、あそこまで届かせるのは難しそうだ。
「ルカお嬢様。今頃、怒っているだろうな」
今回、信が起こした行動は、ルカに言っていなかった。信とジジ、二人で考え出した作戦だ。
多分。ルカのお父さんである優助様も知っているか。
信は、優助に直接話していなかったが、ジジと優助は連絡を取り合っていると考えている。
「ここからだと、脱出不可能と考えていいか」
てことは、チャンスは尋問の時がチャンスだと考えるべきだな。しばらくは、大人しくしていよう。
信は、そう心に決めて、体力を温存させることにした。
尋問の時は、しばらくしてやってきた。
「信。尋問の時間だ」
スイが、部屋に入ってくるなり、信にそう告げた。
「この部屋以外のとこでやるのか?」
「あぁ、そうだよ」
スイが、そう言うと屈強そうな男が三人、部屋に入ってくる。
「では、行こう」
信は、男に挟まれる形で、部屋を出ていく。
廊下の構造は、ビルの内部みたいにコンクリートで覆われていた。
ここは、城内部ではないのか? いや、静香は城に入った時、『建物の外観は、江戸時代、城の敷地内に存在していた建物を再現している』言っていた。てことは、城の内部は違うとこもあるってことだ。
信は、後ろを振り向いてみると、もう一人の男が後ろからついて来ていたのを確認した。
「逃げようとしても、無駄だよ」
スイは、信に向けて笑みを浮かべて言う。
「逃げようとして、後ろを向いたわけじゃない」
信は、ぶっきらぼうに言った。
とりあえず、ここがどこなのか知りたい。
「着いたよ。ここが尋問部屋だ」
スイは、扉を開けて、信を中に入れさせた。
尋問部屋の中には、机と二つの椅子以外、なにもなかった。
「ここが尋問部屋」
「早く座って」
スイに急かされるような形で、信は尋問部屋にあった椅子に座る。
「尋問するのは、スイなのか?」
「私ですわ」
静香が、そう言って尋問部屋に入ってくる。
「静香お嬢様。自らがやるんですか?」
「えぇ、そうよ」
静香は、自信ありげに言うと、信の前に座った。
「スイ以外の人は、部屋を出て行って、くれるかしら?」
「わかりました」
屈強な男達は、部屋を出て行った。
部屋の中にいるのは、スイと静香、信の三人だけになる。
「では、尋問を始めるわ」
信は、鼓動が高くなるのを感じた。
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