第6話 クラスメイト

「ふう、ごちそうさん」


 アカの食事が終わる。僕は途中から味がしなかった。


「んじゃ。真面目な話だ」

「どれくらい真面目な話?」

「すごく」

「すごくかぁ」


 覚悟を決めよう。


「透、美術品を取り返したよな。最近」

「ナンノコトカナー」

「いやそこらへんは誤魔化さないで良い。クロコから聞いてる」

 

 あの人何喋ってんだ。後で詰めよう。覚えてろよ。


「うん。まあ、ここでは言えないような手段とここでは言えないような場所でね」

「あれな、ウチの管理品なんだわ」

「……ん? あれ国宝だよ?」

「そうだ。赤木の家はそういう事もしている。表向きにはならない役割ってんならお前も分かるだろ」

「これ教室でして良い話?」

「ん? 気づいてないのか、この教室はそういう教室だぞ、姫のナイト役」

「……ホント?」

「本当だよ、たとえば……青石ちょっと良いか?」


 青石君、水属性のかっこいい人だ。


「なんだいアカ、僕の事はアオと呼んでくれないと困るよ」

「ああ、気をつける。ところでお前一般人か?」

「何を言っているのかなアカ、もちろん僕は一般人だよ」

「アカ? 青石君はこう言ってるけど」

「……もしかして透君に話したのかい?」

「ちょっとだけな」

「おいおいおい、それは紳士協定に反するんじゃないかい。透君は聖域だろう?」

「聖域?」

「そうだとも。透君には世話になったからね。少しでもゴタゴタに巻き込まないようにしようという話だったんだ」

「でもよ、そろそろ限界だろ。何かと噛み合わなくなってからじゃ遅いんだぞ」

「噛み合わないとどうなるって言うんだい」

「透と疎遠になる。話をする事もなくなり思い出の1人になる」

「……それは嫌だね」


 話の置いてけぼり感がひどい。


「……透君。このクラスについて知っていることはどれくらいあるのかな?」

「今の今まで普通のクラスだと思ってたけど違うみたいだなって思ってるよ」

「じゃあ教えるよ。ここはね、利害関係が複雑すぎてとても一般のクラスに放り込めない者が集められた場所の一つだ。みんな事情があってね、それでも一つだけ共通点がある」

「共通点?」

「君だよ。透君、僕らはみんな君に救われたからここに居るんだ」

「……ごめん、心当たりがないんだけど」

「当然さ。全てはクロコが仕組んでやっていることだからね。君を守るために、有力者に貸しを作って回ってる。いきなりの無理難題には覚えがあるだろう? それを今まで全部こなしてきたことも。君はただ言われたことをやっただけでも、確かに救われるものはあったんだ」

「……」


 確かにとんでもない案件が多いなあとは思ってた。その理由について改めて尋ねることはなかったけど、そんな理由があったんだ。


「おいおい分かってもらえればとは思うけど、僕たちは君の味方だよ。それだけは信じてほしい」

「分かったよ青石君」

「……アオと呼んでくれないかい。どうしても僕達の家名には威光がありすぎて苦手なんだ。アカと同じようにアオと呼んでほしい」

「分かった、アオ」

「これからもよろしく」

「うん」


 アオと固い握手をした。


 とりあえず、クラスメイトは味方って事でいいのかな?


「……何してるの」

「あ、ななちゃん。来たんだ」

「なに、して、るの」

「握手だけど……?」

「後で、話があるから。放課後、校舎裏」

「え、何その呼び出し。初めてなんだけど、もしかしてボコボコにされる?」

「しないかも」

「しないって言い切って欲しかったなあ」


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