第20話 養護施設に魔物が出現!

「スズヤさん!」

「メルメーサ王国はサケ(鮭)が美味しい国でして、この時期ですから、鮭が安く買えるのですよ!!」


「ですので、サケなんかどうでしょうか!♪」

「魚は嫌いでも、サケが好きな子は案外多いですからね!!♪」


 リンは嬉しそうな表情で俺に話す。

 俺は和やかな表情でリンに話し始める。


「良いね。サケ!」

「サケをオーブンで焼いて……粉ふき芋でも添えれば、子どもたちも喜ぶだろう!」


「良いですね、スズヤさん!」

「粉ふき芋。私も大好きです!!」


 リンは表情で俺に話す。

 メインはサケのオーブン焼き。添え野菜は粉ふき芋。朝食時に作ったカッテージチーズ作りで残ったホエイが有るから、そのホエイにキャベツ・タマネギでも入れてスープを作れば、俺は一気に慕われるだろう!?


 リンのお陰で、朝食の挽回が出来そうだ!


 ……


 市場内に有る魚屋で、サケの切り身を25切れ買う。

 旬の時期だけ有って、一切れ当り100キランで買えた。


 異世界でも、切り身で買えるのは嬉しい!

 ジャガイモなどの各野菜も安価に買えて、どうにか予算内で収まる。


 重い物は俺は持って、軽い物はリンに持って貰う。

 これで、馬車とか荷車が有れば、もっと便利なんだが……


 ☆


『きゃ~~』


『うぉ~~』


『逃げろ~~///』


 後少しで教会の所で、教会の方から悲鳴らしき声が聞こえて来る?

 何か有ったのは間違いない。リンが心配した表情で、俺に聞いてくる。


「スズヤさん!」

「教会の方で、何か有ったのですかね?(汗)」


「……まさかと思うけど、魔物でも現われた?」

「でもな……ここは城下町だし」


 俺は怪訝な表情で呟く。

 メルメーサ王国は現在、魔王軍と交戦状態だ!


 だから魔王軍がいつ来ても、おかしくない状態では有るが、ここは城下町で有る。

 魔王軍もそんな易易やすやすに、攻められないと思うが??


 俺は眉をしかめながら、リンに話し始める。


「取り敢えず、急いで戻ろう!」

「リン!!」


「はい!///」


 リンも表情を、強張らせながら返事をする。

 二人とも荷物を持っている状態で、走るより早歩きだが、悲鳴が聞こえた方向に向けて足を進める……


「!!」


「!?」


『バサ、バサ、―――』


 悲鳴が聞こえた場所は、教会裏手に有る養護施設から左真横に有る、子どもたちの遊び場(広場)で有り、其処には大きなコウモリが空中浮揚していた!

 コウモリの目線は突然の出現で怯えている、養護施設の女子二人に向けており、今にも襲い掛かりそうな雰囲気だ!


「キッキッキッ~~~」

「キッキッキッ~~~」


 誰もが見て分かる、黒い大型コウモリだ。

 邪悪な雰囲気を漂わせているから、魔王軍の偵察隊だろう。


『これから、食べよう!』の意味で(?)、大型コウモリは鳴いている!


「―――///」


「―――///」


 女子二人は互いに抱き合っていて、互いをかばっている。

 リンは戸惑った表情で、俺に言ってくる。


「スズヤさん。どうしましょう!///」

「こんな所まで、魔物が現われてしまいました…///」


「そんな事を言われても……武器なんて、厨房に有る包丁しか無いし、それに包丁を取りに行っている間に、大型コウモリは子どもたちを襲ってしまう(汗)」


 俺はをしながら、リンに話す。

 だけど、このまま見殺しにする事は出来ない……その時。


『バン!』


『ダダッ―――』


 養護施設の正面扉から、アスが血眼の表情で飛び出して来た!

 子どもたちの悲鳴を聞いてか、逃げのがれた子どもたちがアスに伝えたのだろう。


 女子二人を守る様にアスは女子二人の前へ出て、大型コウモリに威嚇を示す!

 アスは母性本能が強い女性なんだろう!


 だが、アスの腕力では絶対、大型コウモリには勝てないし、女子二人を連れて逃げる事も不可能だろう!


「キッキッキッ~~~」

「キッキッキッ~~~」


『ギロッ!』


 大型コウモリは女子二人から、アスの方に目線を変える。

 大型コウモリはアスを敵と見なし、羽音を響かせながら、アスの方に一気へ襲い掛かり始める!!


『ババッ、ババッ、―――』


「キキッ、キキッ、―――」


『パッ!』


「……ブランド!」


「えっ!?」


「えっ……」


 アスは右手を広げて、それ大型コウモリに向けて、険しい表情で何かの言葉を発すると、右手から火球が突然飛び出す!!

 俺とリンは、当然驚く!!


『シュ、シュ、シュ―――ボン!』


「グッギャアァァーーー」


「……」


 火球は見事に大型コウモリへ当り、大型コウモリは火球に包まれる!

 アスはその光景を、真剣な眼差しで見ている。


「グッギャアァァーーー」


『バタン!』←地面に落ちた音


「グッギャアァァーーー」


『ゴロ、ゴロ、―――』


「グッギャアァァーーー」


『ゴロ、ゴロ、―――』


『ゴロ、……』


「…………」


 大型コウモリは火を消そうと、地面に落ちてが……しばらくすると絶命する。

 これは、アトラクションでは無い。この世界で現実に起きている事だ。


『てく、てく、―――』


「……」


「ふぅー(汗)」


 アスは無言で大型コウモリに近付き、絶命確認をすると溜め息を吐きながら、冷や汗の表情を見せる。

 アスは、女子二人の元に戻ったタイミングで……


『ガバッ!』


『ガバッ!』


「うあぁぁーん。アス先生怖かった~~(泣)」


「アス先生。怖かったよ~~(泣)」


 女子二人がアスに目掛けて、泣きながら飛び込んでいく。

 アスは女子二人を抱き締めながら、介抱し始める。


「大丈夫だよ…!」

「お姉ちゃんが、悪いコウモリを退治したからね……」


 アスは母性を感じる微笑みで、女子二人を抱き締めている。

 この光景を見ていたリンは、眉をしかめながらボソリと呟き始める。


「アスちゃん……黒魔法使いですとは…」

「意外です……あんな優しい子が、黒魔法属性でしたなんて……」


(アレが黒魔法か……確かに物騒な魔法だ!)

(そして、アスが黒魔法使いとは……)

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