第19話 息つく暇も無く
……
「うん……りんご酢でも、カッテージチーズは出来た…!」
「でも、味の方は……」
俺は恐る恐るの表情で、出来たてのカッテージチーズ試食をする。
もし、失敗していたら……今朝の朝食はパンのみに成ってしまう///←牛乳は殆ど使った
「……うん!」
「りんご酢だから、りんごの風味を感じる!!」
「米酢より美味しいかも?」
俺の中では、中々の物で有る。
だけど、子どもたちはこれを喜んでくれるだろうか……
☆
『バタン!』
厨房内での作業を終えた時。丁度のタイミングで厨房ドアが開く。
「スズヤさん!」
「おはようございます!」
「あぁ。おはよう、リン!」
リンが笑顔で、俺に挨拶をしながら厨房に入ってくる。
俺も笑顔でリンに挨拶をする。
朝食作りは俺一人で出来る仕事なので(?)、リンは配膳から入って貰う様に、昨夜打ち合わせをした。
リンだって、流石に朝の5時からは起きたくないだろうし……←リン本来の仕事は養護施設管理
「スズヤさん。後は運ぶだけですね……この、白いボソボソの塊は何ですか?」
和やかな表情で俺に話すリンだが……俺手作りのカッテージチーズにリンが気付き、不思議そうな表情で尋ねてくる。
俺は、穏やかな表情でリンに話し始める。
「リン! それは、カッテージチーズだよ!!」
「普通のチーズよりさっぱりで、独特のチーズ臭さが少ないが特徴だよ!」
「?」
「また……スズヤさんの閃き料理ですか?」
リンは、俺が異世界から来た事を信じていない。
なので、リンは『変わった人』目線で俺に話す。
俺は手元に有ったスプーンで、カッテージチーズを少し
「少し、食べてみたら?」
「美味しいよ!」
「では……折角なので……パクッ」
「……うーん。チーズっぽい感じはしますが、りんごの風味も感じますね?」
「でも、チーズが苦手な人でも、これなら食べやすいですね!」
リンは首をかしげながら、食べた感想を言う。
リンの中ではイマイチで有ったか?
だが、最後の文章は和やかな表情で言う。
初めて食べる物は、みな抵抗感を持つ物だ。
さて、子どもたちの評価はどうだろうか?
☆
俺とリンで、養護施設食堂での配膳作業を進める。
途中からは、アスも手伝いに来てくれて、時間の余裕を持って配膳作業を終わらす事が出来る。
朝食の時間と成り、シスターか神父が食堂に来る者だと俺は思っていたが、アスが前に出て来て、和やかな表情で子どもたちに向けて話し始める。
俺とリンも、子どもたちと一緒に食事を摂っても構わないと、シスターから言われたので、食堂で一緒に食事を摂る。
そして、その席は上座と成るので、気分は学校の先生気分だ!
「みなさん、おはようございます!」
『おはようございます!』
『アス先生!!』
アスの言葉の後。子どもたちは元気な声で、アスに挨拶をする。
アスはその表情で、言葉を続ける。
「今日からの食事は、スズヤ先生とリン先生が作ってくれています!」
「感謝して、残さず食べましょう!♪」
「では、いただきます!」
『いただきます!』
アスの言葉の後。子どもたちは食事前の挨拶をして、朝食を食べ始める。
今朝のメニューは、ライ麦パン二切れ。自家製カッテージチーズ。飲み物は
(今朝は、神父やシスターは不在か?)
(それとも、この様な体制なのか??)
(アスは纏め役だから、シスター代わりをしても別に不思議では無い!)
(……さて、俺の特製カッテージチーズの味はどうだろう?)
「ねぇ、みっちゃん!」
「なんか、このチーズ面白い味だね♪」
「うん。さっちゃん! りんごみたいな匂いがする!」
「でも、普通のチーズの方が美味しいような?」
「俺はこの味好きだな~~」
「パンと凄く合う~~♪」
三者三様の声が、俺の耳に入ってくる。
だが、前回のサンドイッチの様な歓声は上がらない。
俺の横で食事を摂っているリンが、困った微笑み表情で、俺に話し掛けてくる。
「スズヤさん!」
「私はこの味が好きですけど……万人向けの味では無いですね///」
「……見たいだな。リン!」
「やはり、付け焼き刃すぎたか!!///」
俺はバツの悪い表情でリンに言う。
これで有ったなら、素直にパンと牛乳を出しておいた方が良かったかも知れない///
☆
だが、朝食を残す子どもは居なくて、お代わり分も綺麗に無く成った!
朝食後にアスが『初めて食べましたけど、美味しかったですよ。スズヤさんの手作りチーズ♪』とアスが褒めてくれたから、一部の人からの評判は良かった!
朝食後の後片付けを俺とリンで済ませた後。アスに一言言ってから、俺はリンを連れて市場に向う。朝食の挽回を夕食でしなければ……
神父とシスターは二人で、朝から王国城に用事が有って出掛けているそうだ。
そうすると、アスが一人で子どもたちの面倒見ないといけないが、アスにとってはこれが日常だそうだ。
……
パプテトロンの市場……
『がや、がや、―――』
『がや、がや、―――』
市場は今日も賑わっている。
市場に入った直後。リンが尋ねる表情で俺に話し始める。
「スズヤさん。夕食は何を作るのですか?」
「アスから聞いた話だと最近……スープばかり続いているらしいから、肉とか魚を出したいのだがな……」
俺は悩んだ表情でリンに話す。
朝食でパンを8本使い。牛乳も約5ℓ使っている。
これをキラン換算すると、2,800キランと成る。
夕食もパンと牛乳は必須だから、パンと牛乳だけで、5,600キランかかる。
残金……4,400キランで、約25人分のおかずを作らないといけない。
ちなみに、此処での支払いはツケ払いで有る。
翌月。店の人達が、教会へ集金に来るらしい。
すると、リンが嬉しそうな表情で俺に話し始めた。
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