第9章「真・魔王城へ、ざまぁ!」⑸

「ザマン様、私も助太刀いたしますわ!」


 ザモーガンもヨシタケに杖を向ける。

 その時、魔王城の外からホウキに乗ったザマァーリンが猛スピードで突っ込んできた。


「させないのドーンッ!」

「あだッ?!」

「ザマァーリン?!」


 ザマァーリンのホウキの先端が、ザモーガンの後頭部へ直撃する。常人なら致命傷だったが、ザモーガンはタンコブだけで済んだ。

 ザマァーリンは空中で体をひねり、ヨシタケのとなりへ着地した。


「何すんのよ、クソ魔女! 礼儀ってもんを知らないの?! 〈ザマァ〉!」

「やぁやぁ、ヨシタケ君。ピンチみたいだね?」


 ザモーガンの杖から、漆黒の炎の形をした闇の〈ザマァ〉が放たれる。

 しかしザマァーリンが完全に無視したので、ザマァーリンに届く前に消えた。


「何しに来たんだよ? ザマァーリンは世界のなんとかだから戦えないんだろ?」

「確かに、私は君を助けられない。でも、ザモーガンは別さ。彼女は世界のなんとかが始末しなくちゃならない、数少ない大悪党だからね」


 ザマァーリンはホウキを銀の杖に変え、ザモーガンと対峙する。

 臨戦態勢となったザマァーリンに、ザモーガンはあからさまに顔をしかめた。


「そういうわけだから、この悪女のことは私に任せて、君は心置きなく最強の呪文をザマンにかましてやりなさい。候補は、とっくに考えてあるんだろ?」

「……覗いてたのか」

「まぁね」


 ザマァーリンはいたずらっ子のように、ヨシタケにウィンクした。

 彼女の言う通り、ヨシタケは魔王城の壁を登っている最中、森の碑文にあった"闇を祓う最強の呪文"とやらがなんなのか、ずっと考えていた。


(この世界における「力」に近いってことは、二つのうち一つは〈ザマァ〉だろ? もう一つを組み合わせれば、"異世界より伝わりし言葉"……つまり、この世界には存在しない言葉になるってわけだ)


 ヨシタケが前にいた世界でも、「ざまぁ」と組み合わせて使う言葉など限られている。

 ヨシタケは知っている言葉をいくつか思い浮かべ、その中で一番言われてムカつく言葉を「答え」にした。


(俺が言葉を言われたのは一度だけだったが、すっげームカついた。ネット上だったからまだ許せたけど、実際にで言われたら、確実に手が出ていただろうな)


 ヨシタケはエクスザマリバーを片手で持ち変え、両手の人差し指でザマンを指差す。

 そしてイメトレ通りにを作り、唱えた。


「せっかく俺をスカウトしたのに、断られてて〈ザマァァァm9(^Д^)プギャーwwwwww〉」

「…………う、」


 直後、ザマンの兜が内側から爆ぜた。


「ウゼェェェェッ!!!!」

「ザマン様?!」


 ザマンのシャレコウベは光り輝きながら、漆黒の鎧とザマァロンダイトをも巻き込み、消滅する。ザモーガンは爆発の余波に巻き込まれないよう、慌ててテレポートで逃げていった。

 ヨシタケとザマァーリンは逃げ遅れたものの、爆発をもろに受けても全くダメージがなかった。むしろ、日だまりの中にいるような、暖かく優しい爆風だった。






「終わったのか……?」


 ヨシタケはザマンを倒した実感を持てず、困惑する。

 「あぁ」とザマァーリンは微笑み、頷いた。


「終わったよ。君のおかげで、ようやくザマンを倒すことができた。ありがとう」

「ザモーガンはいいのか?」

「アレは逃げ足が速いだけで、さほど強くはないからね。いつか倒せたらいいや」


 その時、魔王城がゴゴゴと音を立て、大きく揺れ始めた。


「お、始まったか!」

「始まったって、何が?!」

「城の崩壊さ。この城はザマンとの戦でオンボロになっちゃってね、ザマンが闇の〈ザマァ〉で改築したんだ。そのザマンがいなくなった上に、さっきの光の〈ザマァ〉による爆発の影響で、城が完全に浄化されたらしい」

「つまり……?」


 ザマァーリンはニコッと笑って言った。


「このまま呑気に留まっていたら、城と一緒にオダブツさ☆」

「逃げろぉぉぉーッ!」


 ヨシタケは破壊した壁の穴から外へ出ようとする。

 が、一歩踏み出した床が盛大に崩れた。


「あ、」

(終わった)


 死を覚悟し、頭の中が真っ白になる。

 その手をザマァーリンが握り、引き寄せた。


「ほら、脱出するよ。しっかりつかまって」


 銀色の杖をホウキに戻し、またがる。

 あれだけ乗せるのを渋っていたというのに、今回はアッサリとヨシタケも乗せた。


「いいんすか? 俺も乗っちゃって」

「いいよ。そもそも君は、前世で私の……」

「?」


 ヨシタケは続きを待つ。

 ザマァーリンは「何でもない」と寂しげに微笑み、言うのをやめた。


「君は私のお眼鏡にかなった要救助者だからね。特別に乗せてあげる」

「や、やったー! ラッキー!」


 ザマァーリンが床から足を離すと、ホウキはフワリと浮き上がった。

 猛スピードで、玉座の間から外へ脱出する。二人が出た直後、玉座の間の天井が崩れ落ちた。床にもヒビが走り、下の階へ落下していく。

 やがて、魔王城は粉塵を上げ崩壊し、大量のガレキの山と化した。エントランスにいたモンスターや兵は崩壊に巻き込まれ、ガレキの下敷きとなって倒れていた。


「……あいつら、ちゃんと逃げ出せたかな?」

「大丈夫みたいだよ。ほら」


 ザマァーリンが指差した先には、定員オーバーで低空飛行中のダザドラがいた。

 ザマルタ、ザマビリー、ノストラ、パロザマス、メルザマァル、ザマスロット、そしてエリザマスが、ダザドラの背から、ヨシタケに向かって大きく手を振っていた。


〈第9章 戦況報告〉

▽古都ノースフィールドに立ち寄った。

▽パロザマスとメルザマァルが仲間になった!

▽エクスザマリバーの鞘を手に入れた!

▽パーティを「ザマスロット護衛班」「エリザマス姫救出班」「ザマン討伐班」に分けた。ヨシタケは一人で不満そうだ。

▽メンバー限定メインクエスト「エリザマス姫の救出」をクリア!

▽メンバー限定メインクエスト「ザマスロット耐久戦」をクリア!

▽メンバー限定メインクエスト「ザマン討伐」に、追加討伐対象「ザモーガン」が加わった。

▽ヨシタケのパーティに、ザマァーリンが加わった!

▽メンバー限定メインクエスト「ザマン討伐」をクリア!

▽パーティを再編成した。

「やっぱし、ヨシタケがいないと落ち着かないな!」

「ザマスロット達も、王城まで任意同行を頼むぞ」

「分かっている。エリザマスを助け出せたんだ、もう何も悔いはない」

「ザマスロット……」


To be continued……

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