第355話 使い魔の性能

 僕は日課となっている瞑想をする。

 マナを吸い込んで体の中を通して練る。それを繰り返していると、意識は金色の世界に来ていた。

 神霊族がいた。

 僕はその姿を見ると、神霊族は金色の草の中に沈んでいく。

 今日も見られるのを嫌がって隠れるようだ。

『準備はできていない』

 神霊族から念が飛んできた。

『なんの準備?』

 僕は念を飛ばした

『外への』

 神霊族はそう念を返して消えた。

 神霊族は勇者を使って、人族と魔族を間引きしていたはずである。しかし、いっていることは違う。神霊族の立場がわからなくなった。


 朝はいつもノーラに起こされる。

 遮光カーテンを開けて、窓を開ける。これは、冬場でも一緒だ。

 僕は寝間着から着替えて、洗面所に向かった。

 そして、歯を磨いて顔を洗う。

 いつもの日常が始まった。


 朝食は導師の要望通りに、導師の慣れ親しんだ料理が並んだ。

 しかし、少し違う。

 パンは柔らかく硬くない。そして、野菜と肉の煮込みは味が深くなった。一手間も二手間もかけている。その証拠に、肉がフォークで切れた。

「ノーラ。野菜と肉の煮込みが以前と違うが?」

「はい。知り合ったコックさんに教えてもらいました。一手間入れるだけでおいしくなります。お気に召さなかったですか?」

「いや。同じものなのだが、おいしくなった。それに驚いただけだ」

「それなら、コックさんに喜ばれます」

 ノーラはうれしそうだった。

 ノーラはメイドでなくコックとしてやっていけるかもしれない。


 午前の授業は読み書き算数である。

 計算は前世と同じく十進法なので問題はない。勝手に連立方程式を使って解いている。

 問題なのは読み書きである。この世界に来てから、七年である。まだまだ、覚える言葉は多かった。

 だが、本物の問題は魔法の授業である。魔法の方は導師から免除されている。しかし、魔道具に使う魔法陣の書き方などを習っている。

「今回は人型の使い魔に力を入れてもらいます」

 家庭教師のギードはいった。

 荒野に移動して、僕は改造した人型の使い魔を四体出した。

「剣士と戦士の武器は変えたのですか?」

 僕は戦闘態勢に移行させた。

 剣士はドラゴンシールドの要領で作られた鋭い剣を持っている。同じく戦士も斧を持っていた。そして、ドラゴンシールドの盾を持っている。

 ギードはそれを見てこわばった顔をしている。

「魔法使いはドラゴンブレスとドラゴンシールドを使えるのですか?」

「もちろんです。使えないのは僧侶だけです。ですが、僧侶は再生の魔法を使います。他の剣士たちは斬られても復活ができます」

 ギードは遠い目をしていた。

 僕はギードが戻って来るのを待った。

「……では、機動力を見ます。力があっても動きが遅ければ意味がないですからね」

 僕はギードの使い魔と対戦することになった。

 僕の使い魔である剣士は速さに特化している。そのため、盾ごとギードの戦士を斬った。

 戦士は力に特化してある。そして、ドラゴンの刃である。敵を力ずくで沈黙させた。

 魔法使いはドラゴンブレスを使う。遠距離から敵のシールドごと消し去った。

 僧侶の出番はなかった。

「ドラゴンの力は反則です」

 家庭教師はそう評価した。

 とにかく、家庭教師の使い魔を相手に勝てたのだ。ギードは使い魔で文句をいうことはないと確信した。


「シオン。ギードになにをした?」

 昼食の席で導師にいわれた。

 いや、責めている節がある。

「きちんと人型の使い魔を作っただけです。それで、ギードさんの使い魔と戦いました」

「それで、へこんでいたのか。手加減してやれよ」

 なぜか僕が責められた。

「ギードさんが人型の使い魔に力を入れろといったんですよ。それをしただけです」

 僕は不満を込めていった。

「なるほど。おまえは自分を過小評価しすぎる。自分の使い魔を他人が使った時を考えろ。それで、少しはわかるはずだ」

 僕は敵が僕の使い魔を使った時を想像する。

 僕は使い魔以上のドラゴンブレスで対応するだけだった。

「もっと強いドラゴンブレスで消すだけですね」

「そうなるか……」

 導師はあきれた顔をした。

「一度、学院に行くか? 魔法学院なら平均をわかるだろう?」

「集団生活はできません。それに、この精神年齢では学校は苦痛です。青春などないですから」

「友達は作る気はないのか?」

「四人いるので十分です」

 導師は僕の顔をジッと見る。

「なんですか?」

 僕は視線を避けるように下がった。

「いや。少し思っただけだ。おまえは学院にいっても、ほとんど勉強することはないと」

「まあ、魔法を作れますから。それに、導師から習った方が勉強になります」

「そうだな。おまえは宮廷魔導士になる気はあるのか?」

「将来、なれたらよいと思うだけですね。まあ、将来の話です。実際は、そこら辺の魔法使いで終わる可能性が高いでしょう」

「おまえは龍帝級だ。選ばれるより選ぶ方だぞ」

 導師のいっている意味はわからない。

「そんな風に思えません。龍帝級は他にもいるんですから」

「そのうちわかるよ。おまえは私と一緒に先を走っていると」

「そうなんですか?」

 僕は魔法の最先端にはいない。まだ、知らない魔法がたくさんある。それに、龍族の長老からもらった魔導書の魔法も、再現は終わってなかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る