第298話 魔法使い
夕食の席で導師に術士の試験があるのかきいた。
「ああ。魔法使いは自称が多いから、区別するための試験を
僕は試験なんてない異世界が好きである。現実はいらない。
「それなんだが、おまえが審査員として名前が挙がっている」
「本気ですか?」
僕は驚いた。
「だよな。七歳の子供に選別されたくないよな」
自分でいうのもなんだが、導師のいう通りである。
「だれが、指揮を取っているのですか? 宮廷魔導士の偉い人ですか?」
「いや。宰相だ」
なぜ、宰相が審査員として選ぶのかわからない。
「それって失敗してません?」
「私もそう思う。おまえが十七ぐらいならわかる。だが、現実は七歳だ。ふつうなら認めないよ」
「宰相は今までの付き合いで、感覚がマヒしてませんか?」
「そう思う。これは、私から断わっておく」
「ええ。お願いします。……それだと、僕も試験を受けないとならないですか?」
僕は試験を受けたくなかった。
「それはないな。宰相は認定している。それに、龍帝級を名乗っているのは、私とおまえを入れて五人だ。ドラゴンブレスを使える人間を魔術師だと下にいえない」
「他に三人しかドラゴンブレスを使えないんですか?」
「ああ。それに、使えるのは傭兵と冒険者だ。宮廷魔導士には私しかいない。使える術者は少ないんだよ」
「冒険者ってクンツさんですか?」
「ああ、そうだ。よくわかったな」
「相談されましたから」
「だが、冒険者の身で龍帝級だ。冒険者として逸材なのはわかる」
それなら、悪龍の討伐で戦闘はできただろう。しかし、クンツは戦いには参加しなかった。やはり、冒険者であって、戦闘には特化してないのかもしれない。
「冒険者としての地位は上がったと?」
僕はきいた。
「ああ、そのために冒険者ギルドを通して、私のところに来たからな」
「導師が判断したんですか?」
「ああ。呼ばれたので見てみたらできていた。だが、魔術の方だった。魔法と呼べるように、四大魔術の他に魔法を組み込めてはいなかった」
「それは魔術では?」
「それができるだけで、魔法使いだ。ふつうの術者はできない。おまえは簡単に使っているが、それがふつうでないと覚えておけ」
「……わかりました」
僕には魔法とは難しいというイメージがある。いまだに、満足に魔法陣を作れない。もちろん、新しい魔法も困難だ。
だからなのか、ドラゴンブレスは少し難しいぐらいの魔法だった。世間では僕の基準は違うようだ。
自分の書斎で新しい魔法を考えていると、ドアがノックされた。
空中の浮かんでいるので、ノーラが来たら怒られる。
僕は床に降りた。
「どうぞ」
そういうと、ノーラが入ってきた。
「その様子ですと、また浮かんでいたんですか?」
ノーラは僕をとがめた。
「魔力増強の練習だよ。それより、何の用なの?」
普段なら、お茶とか置いて行くのだが、今日は違った。
「新しいおやつのレシピを教えてください」
ノーラは僕に泣きついた。
「おやつばっかり食べていたら太るよ」
「それでも、足りないんです」
僕はおやつの知識は少ない。
「ポテトチップかな?」
「なんで、疑問形なんですか?」
「味付けの種類が多いんだ。だけど、再現の仕方がわからなくて」
「それでもいいです」
ノーラは必死だった。
「それなら、ジャガイモを薄切りにして、硬くなるまで揚げる。そして、……まあ、最初は塩だけで味付けするとよいよ。ポテトチップというけど」
「でも、それってポテトフライと一緒では?」
「まあ、似ているけど、おやつとして日持ちするよ。それに、スパイスを変えて色々と試せる」
「そのスパイスは?」
「それはノーラに任せる。コンソメなんてふつうの家ではできないし」
「コンソメスープですか?」
「ん? あるの?」
「ええ。作るのは大変です」
「それを粉にしてといったら無理でしょう? だから、色々なソースで試してみて。粉にした香辛料をまぶすのが主流だと思う」
「わかりました」
「あっ、それから、ジャガイモを砕いたものを、チップと同じ形にして揚げるのもありだから」
「わかりました。がんばります」
そういうとノーラは出て行った。
今回はハーブティーはないらしい。
家庭教師のギードと使い魔の機能の向上するために勉強する。まだ、知らない紋様と紋章の使い方があるようだ。描く場所と位置で大きく変化する。それを合理的に考えながら魔法陣を描く。まだまだ、一人ではできなかった。
僕は残った自習の時間で、ファンネルの機能向上をした。
人型と違って簡単に機能をつぎ込める。しかし、人型になると、難易度は極端に上がる。
宮廷魔導士が人型を使うのかわかる気がした。
難易度が高い使い魔も作れると宣伝でもあるからだ。
宮廷魔導士の権力争いには処世術だけでなく実力もいるということだろう。
僕は宮廷魔導士の道を考える。だが、権力争いは苦手だ。他人を踏み越えていけるほど鈍感にはなれないからだと思う。それより、今の魔法使いとしての仕事で十分だった。
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