第283話 調査
夕食は日が落ちる頃に食べた。
全員が火を囲んで食事をしている。
雑談がほとんどだが、中には重要な話もあった。
カシュゴ王国が急に軍事国家に変わろうとしているらしい。そのため、反対する貴族は降格されるか、追放されているようだ。
冒険者の情報収集能力は高いようだ。だが、あまり、政治には興味がないようだ。
冒険者に金を出す貴族がいなくなったと、不満をいっている。
「明日は、調査になる。二人の行動は?」
クンツにきかれた。
「魔法と魔道具を使っての調査だ。少なくとも、半日は欲しい」
導師は答えた。
「物資なら、一週間分ある。長引いてもかまわない」
「そうなのだが、解析ができない可能性がある。その時の引き際は肝心だ」
「わかった。三日とする。それでよいか?」
「ああ。十分だ。……ところで、柱を壊そうとしたか?」
導師はいった。
「ああ。帝級の魔法をぶち込んだよ。それに斧でもな」
「結果は無傷か?」
「ああ。傷一つつかなかったよ」
クンツは不快そうにいった。
「簡単に調査したが理解できなかった。解析できない可能性がある。それは頭に入れといてくれ」
「わかった」
その後はすぐに寝るようになった。
日が昇って起き、日が沈んで寝る。それが冒険者のようだった。
朝、起きて、寝袋からはい出た。
テントを出ると、エルトンが火の番をしていた。
夜通し交代で周囲を警戒していたようだ。
「おはようございます」
エルトンは笑顔でいった。
「おはようございます」
僕はそういったが、頭はボーっとしていた。
「顔を洗ってください。飯の用意を始めます」
エルトンは休まずに動くようだ。
僕は魔法で水を出して顔を洗った。そして、ブラシで歯を磨いた。
朝食のころになると騒がしくなった。
冒険者は朝は強いようだ。
僕は静かに朝食を食べる。そして、今日の調査ですることをまとめた。
クンツが調査に参加した。
エルトンは万が一の護衛でいる。
導師は魔道具を柱に当てて計器を計っている。メーターは振り切っていた。
魔道具も当てにならないようだ。
四大属性の探査でも理解できないらしい。
「導師。触ってよいですか?」
「ああ。慎重にな。マナが濃すぎるから注意しろ」
「はい」
僕は柱に手を当てた。
マナが詰まっている。それはわかった。だが、それ以上がわからない。
僕は感覚を広げてマナの動きを探った。
地中からマナは吸い上げているようだ。地中を流れるマナを吸い出して、力を維持している。そして、そのマナを使って結界の壁を張っていた。
僕はその機能を
「導師。複製しました」
「よくやった」
導師にめずらしくほめられた。
「複製って、なんのことだ?」
クンツは導師にきいた。
「シオンは魔道具を魔法として複製できる。これで、持ち帰って研究ができる」
「はぁ?」
クンツは驚いていた。
「最初に覚えた魔法は、水道の魔道具の魔法ですから」
僕はいった。
しかし、クンツは言葉がないようだ。驚いているだけだった。
その後も調査するも、なにもわからない。ただ、マナによって結界としての機能を維持しているだけらしい。
僕は破壊するなら、詰まっているマナを壊せばいいと思った。
僕は軽く禁呪の滅殺を使った。すると、柱の一部がはがれた。
滅殺の魔法で柱は破壊できるようだ。
「シオン」
導師に鋭い目で見られた。
「すみません」
「あせるな。実験はおまえが複製したもので試す。それに、いつかは壊れる柱だ。それが千年後になるか、すぐになるかはわからないが……」
導師は柱を見上げていた。
「後は帰ってから研究だな。結界点の破壊による結界の変化。それと、結界点を壊しても、復元できるか確認しないとならない」
導師はそういうと柱から離れた。
それから、離れて柱を眺めているクンツと話し合っていた。
帰りは早かった。三日目の朝に帰路についた。
それは僕が結界の複製ができたので、ここにいる必要がなくなったからである。
安全な場所で結界を張り、機能を壊したりして試せるからだ。
帰りも導師は探知魔法を使っている。僕も同じように使っていると、魔獣はいるが探知範囲に入ると逃げていった。
導師の探知魔法を感じて逃げているようだ。
導師にケンカを売るには、それなりの力がないとならないだろう。
クンツはそれが理解できず頭をかしげていた。
まあ、導師の探知魔法でも逃げないのなら、僕は倒すだけだった。だが、襲いかかる魔獣はいなかった。
こうして、冒険は三日で終わった。
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