第277話 魔法

 レーザーの魔法を呪文にして、羊皮紙に書いた。

 攻撃魔法にはならなかったが、これも宮廷魔導士の仕事らしい。

 魔法を研究し調査する。そして、新しく開発する。それが、仕事のようだ。

 今は光学迷彩の研究をしているが、全周天からの光学迷彩はできていない。

 地面に足を着くと、そこに足跡が残る。

 完璧とはいえなかった。

 やはり、浮いて使うしかないのかもしれない。

 そんなことを考えていると、ドアをノックする音が聞こえた。

「どうぞ」

 僕はいうと、ドアは開いた。

「失礼します」

 ノーラが入ってきた。

「どうしたの?」

「席に座ってないということは、また浮かんでいたんですね?」

 ノーラは怒った顔を見せた。

「実験だよ。浮かないと光学迷彩の意味がなくなる」

「言い訳は聞きません」

 プイッと顔をそむける。

「なら、見ればわかるよ」

 僕は立ったまま光学迷彩の魔法を使った。

 ノーラは驚いた顔をする。

「シオン様。どこに行ったのですか?」

 ノーラの不安そうな声が聞こえた。

「目の前にいるよ」

 僕は光学迷彩を解いた。

 ノーラは僕を確認すると安心していた。

「いったいなにが起きたんですか?」

 ノーラは驚いていた。

「光を曲げただけ。ノーラには難しいと思う。光が曲がると思わないだろうし」

「光が曲がると聞かされてもチンプンカンプンです」

「そうだね まあ、光の特性を使っただけだよ。それで、視えなくなった」

「そうですか……。わかりません」

 やはり、この世界の人族は物理法則はないようだ。

 理由は魔法によって簡単に変わるからだと思う。

「それより、なにしに来たの?」

 僕はノーラにきいた。

「お茶です。安眠ができるように」

 ノーラはデスクに、ハーブティーが入っているカップを置いた。

「そんな時間なんだ。ありがとう」

「いえ。では、失礼します」

 ノーラは書斎から出て行った。

 僕はデスクについて、ハーブティーを飲む。

 僕は光学迷彩を完成とするか、未完成にするか迷った。


「戦術級の魔法はありませんか?」

 朝の勉強で家庭教師のギードにきいた。

「それなら、帝級になります」

「それ以上の範囲と威力がある魔法は?」

 戦略級の魔法は地形を変える。しかし、戦術級なら手加減ができるはずだ。

「残念ながら、ないと思います。それほどの魔法なら耳に入っているはずですから」

「そうですか……」

「やはり、戦略級の魔法は使いたくないのですか?」

「……はい。あれは持っているだけで意味があります。簡単に使うと意味がなくなります」

「そうですね。あの威力を知っていたら、恐れます。他国はこの国と戦争をしないでしょう?」

「ええ。ですが、いったん使ったら、簡単に使うようになります。それが怖いのです」

「そうですね。乱発すれば価値がなくなるのは一緒です。ですが、勇者と魔王の戦争は終わりました。使う機会は当分ないと思いますよ」

「それならよいのですが……」

 僕は帝級の一つ上の魔法を作ろうと考えた。


 昼食を食べてカリーヌの家に行った。

 今回もジスランに迎えられた。

「やあ。から揚げでスロットのことを忘れていたよ。今日はスロットを見て欲しい」

 ジスランはから揚げの泥沼から抜け出したようだ。

「はい」

 ジスランの後に続いて遊戯室に行った。

 遊戯室にはスロットマシーンが置いてあった。

 今度のは完成形に近いようだ。メダルが出てくる受け皿があった。

「さっそく、試してくれ」

 ジスランにいわれて台の前のイスに座った。

 メイドがメダルと渡してきた。

 僕はそれを受け取って受け皿に置いた。そして、メダルを入れてレバに手を当てる。すると、魔力が吸い出されてスロットは回り出した。

 順調にことが進む。

 僕はボタンを押してとめてみた。

 簡単に止まった。

 一列しかできないが、スロットの最低限の仕様は完成している。

 その後は何度も繰り返してスロットを回した。そろうと、メダルが下のさらに吐き出した。

 一番問題な目押しできないか確かめた。それも、成功しているようだ。そろいそうでそろわない。すべることが何度もあった。

 不安であった回しっぱなしは、吸い出した魔力が切れる前に勝手に止まった。

「最低限の仕様はできています。後は発展ですね。三つのラインにできるとよいと思いますが、それは後でよいと思います」

 後ろで、お茶を飲んでいるジスランにいった。

「完成でよいかな? 少し放って置いたので心配だった」

「ええ。きちんとできています」

「なら、さっそく、置くとしよう。パチンコと並べると思うけど、大丈夫かな?」 

「ええ。大丈夫だと思います。でも、最初はやる人は少ないと思いますね」

「そうだね。パチンコでもそうだった。しばらく置いて経過観察けいかかんさつだね」

「はい。そうですね」

「うん。ありがとう。また頼むよ。次はパチンコになるかな?」

「そうですね。新しい仕掛けが欲しいと思います」

「うん。その時はよろしく」

 僕は遊戯室から出て、ガーデンルームに移動した。

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