第二十章 から揚げと冒険
第272話 終戦後
龍族から連絡が来た。
有翼族から魔王の保険になった魔族を殺したようだ。
そのため、その遺体の見分と、有翼族と終戦の約束ごとを決めるらしい。
僕と導師は大使としておもむくのだが、今回は宰相は同行した。
戦勝と人族の力になったので、そのお礼があるらしい。
王都の正門で合流して龍の運ばれた。
いつものように、龍の島を歩いて集会場に行く。
そこには変わらない顔ぶれがあった。
違うのは黑い翼を持った有翼族がいることだ。
『ようこそ。待っていたよ』
長老の優しい声が聞こえた。
『さっそくだが、本題に入る。魔王の予備の死体は見るかい?』
長老はいった。
『私たちには必要ありません。シオン伯爵の父とは違い顔も知りませんから』
宰相は答えた。
『うむ。私たちを信じるということでいいかな?』
『はい。異論はありません』
長老は僕と導師を見た。
僕はうなずいた。
『はい。宰相と同じです』
導師はいった。
『わかった。これで、終戦とする』
『ありがとうございます』
有翼族の代表らしい人がいった。
『有翼族との終戦の条件の変更はあるかな?』
『ありません』
黒い羽の男はいった。
『うむ。下がってよし。白い翼の仲間にも伝えるように』
『わかりました。では、失礼します』
有翼族は広場から後ろの方に飛んでいった。
有翼族との終戦の条件は、もう決められたようである。
中身は気になるが、探り方はわからない。
『小さき子よ。すまないことをした。敵になったとはいえ父の遺体を残さなかった。遺体でも、使われる可能性がある。そのため、消すしかなかった』
『いえ。あれでよかったです。父とは敵でした。戦闘の中でどちらかが消えるのは覚悟していました』
『そうか。すまないね』
『いえ。終わらせてくれたのです。ありがとうございました』
『うむ。小さき子よ。父は生まれた前から神霊族に干渉されていた。だから、父の行動は神霊族の行動でもある。だから、父は運が悪かった。恨むのなら神霊族にしておくれ』
僕は優しい言葉に心でうなずく。だが、ききたいことがあった。
『……その神霊族なのですが、探知魔法を使うと見つけられます。しかし、敵意も向けずに隠れるのです。なにか心当たりはないですか?』
『うむ。……われわれでも、探知はできない。それが本当なら
『そうですか……。わかりました』
導師のいう通り、何も考えず干渉するのは危険なようだ。
『私からもいいですか?』
宰相が長老にきいた。
『なにかな?』
『このたびの戦勝の記念を用意しました。お納めください』
宰相は空間魔法の倉庫から三つの箱を出した。
『精神感応金属で作った剣と槍、斧が入っております』
長老の念動力で箱は宙に浮いて長老の方に浮かんでいった。
念動力で箱を開けて中身を取り出していた。
『おお』
龍たちは感心していた。
『これは魔剣のたぐいだね』
『はい。そのように作らせました』
『ありがたい。感謝する』
『いえ。人族としてできることをしているだけです。このたびの戦争は、人族の未来もかかっていましたから』
『大きく見ると含まれるね。だが、われわれは小さき子を特別視している。小さき子は神霊族と戦うための力になる。そのために人族の力になっている。小さき子は人族であるから、一人では生きられないからね』
『それでも、問題はありません。シオンを通じて人族も助けられているのですから』
『結果的には、そうだね。今後もよい付き合いになればよいと思う』
『はい。そう願っています』
『うむ。贈り物は素直にいただく。ありがとう』
『いえ。よろこんでくださりありがとうございます』
『では、また、おいで。小さき子よ。それと支える二人も』
『ありがとうございます。失礼します』
宰相は頭を下げた。
僕と導師も頭を下げて広場から去った。
いつものように龍に運ばれて王都の正門に帰った。
「今回も来てくれ。王に報告する」
僕と導師は登城することになった。
「大義である」
王の労いの言葉は何度も聞いているので新鮮さはない。だが、貴族として役目を果たさないとならなかった。
一連の報告をすると、解放された。
「これからは、重大な時に呼んで欲しい。その判断は任せるよ」
宰相はいった。
「はい。報告は必ずします。それと、私では判断してよいかわからない時は頼みます」
「ああ。そうしてくれ。今回みたいに流れで動く時もあるだろう。その時は任せる」
導師は苦笑いを浮かべる。
「王の考えに従えるようにがんばります」
「いや。この国のため、人族のために考えて欲しい。王はその後だ」
「わかりました。では、失礼します」
宰相とは別れて、僕と導師は城から屋敷に帰った。
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