第270話 父

 龍のドラゴンブレスが押しているらしい。有翼族は魔法で防ぎながら、後退している。

 そして、一つの小隊を作って有翼族はドラゴンブレスの間をぬって出てきた。

 有翼族は魔法の打ち合いをやめて、接近戦に持ち込もうとしている。

 しかし、それもドラゴンブレスで撃ち落とされる。だが、数名がドラゴンのふところに入った。

 僕はブレイクブレットを放ってけん制する。

 有翼族は嫌がって離れた。

 そこに、僕の乗っている龍はブレスをはいた。

 有翼族はブレスを受けて落ちていった。有翼族の防御膜も龍に並ぶのかもしれない。

『助かった』

 乗っている龍はいった。

『いえ。僕も戦わないとなりません。人族との戦争でもあるのです』

『そうだったな。前にでる。頼りにしているぞ』

 そういうと龍は最前線に近づいた。


 最前線は前に動いている。

 龍が優位のようだ。

 飛んでいる有翼族は少なく、後方からの支援はなかった。

 百対五十の戦争だ。

 人族なら小さな戦場だが、龍族と有翼族のつかう魔法は帝級を超えている。巨大なエネルギーが飛び交っている。

 大きな火球の戦場で何百と咲いている。

 人族なら、すぐにでも消えてもおかしくない。

 それだけの魔法というエネルギーが飛び合い、ぶつかって殺し合っている。

 僕は人族と有翼族の戦争が起きたら、人族が負けると思った。

 それだけ、異次元の戦争だった。

 導師と僕はドラゴンブレスを撃っている。龍と共にブレスを撃っているので、三つの砲台である。火力があるため、自然と僕たちを運んでいる龍が前に進んだ。

 だが、その頃には、有翼族は少なくなった。

 有翼族は十人ほどの人数で戦っている。だが、時間の問題だった。

 落とされた龍は少ない。数だけでなくだけでなく、固体の戦闘力も勝っていた。

 有翼族は龍に囲まれる形になって集まった。そこに、魔法が放たれた。

 雷撃の魔法だが、十人ほどの有翼族は空から落ちた。

『降参だ』

 有翼族が白旗を持って現れた。

 だが、一つ気になった。羽の色が黒いからだ。

『なぜ、黑い羽の有翼族が降参する。主導権は白い羽の者だろう?』

 軍団長らしきの龍がいった。

『黑い羽の者たちは、この度の戦争に参加していない。元より、魔族や人族をどうしようとは考えていない』

『だが、神霊族と魔神族の命令をきかないことになる』

『黒たちは……。ああ。オレたち黑い翼の者たちは協力的でない。魔力は欲しいが、動かなければよいだけだからな』

『それで生きていけるのか?』

『生きていけない。だが、結界の外にいる仲間は、マナから魔力を抽出するすべを持っている。だから、この結界が壊れることに賛成だ』

『なぜ、白い羽たちはそれを拒んだ?』

『簡単に魔力と人族の感情エネルギーを食べれるからだ。魔力は魔神族からもらえる。それに、戦争が起きれば勝とうとする前向きな感情が食べれる。そして、魔族と人族のどちらが勝とうとも、勝利のよろこびかあるからだ』

『感情エネルギーはおやつと聞く。魔力が主食だろう?』

『そうだ。だから、黒の者たちは傍観ぼうかんを決め込んだ。白のヤツらと一緒にしないでくれ。これを見ればわかるだろう』

 下から黑い翼の有翼族がなにかを運んできた。

『シオン。見るな』

 導師の言葉が聞こえた。

 しかし、すでに遠見の魔法で視界に入れている。

 そこには胸に槍が刺さった父が、十字に張り付けられて運ばれていた。

『これで、こちらの意思は理解できたと思う』

 有翼族はいった。

『魔族の予備の者は?』

『必要なら、これから用意する』

 龍はドラゴンブレスで父を消した。

『では、それが終戦の時とする。それまでは停戦だ』

『わかった。近い内に届ける』

撤収てっしゅう!』

 軍団長らしき龍はいった。

 龍族は反転して戦場を後にした。

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