第269話 真意
龍族の島にはすぐに着いた。そのため、導師との話は流れに任すという方針で決まった。
導師と話ながら集会場所まで話す。しかし、よい案はなかった。
広場に着くと有翼族の代表がいた。
前に返答を保留して帰った有翼族だ。白い羽を持っている。
有翼族の黑い羽の方は、龍族に関わらないのか不思議に思った。
導師は僕の手を取って歩く。そして、有翼族に対して、僕の壁になるかのように位置を取った。
『ようこそ。今回は有翼族の方針が決まったようだ。それで、二人にも聞いて欲しい』
龍族の長老はいった。
『龍族は事前に聞いてはいないのですか?』
導師はいった。
『うむ。彼の頼みである。なので、待った』
導師は目を閉じる。そして、開けた目は力強かった。
『わかりました。聞きます』
『うむ。では、聞こうとしよう』
長老は有翼族の男に顔を向けた。
『すべては一つの命で終わります』
『それはどういう意味かな?』
長老はきいた。
有翼族の男は雷をまとった。
同時に導師はドラゴンシールドを展開した。しかし、回り道をして僕に迫る。
僕はドラゴンシールドを全面に展開した。
男は飛んだ。
僕は頭上にシールドを張った。
キンッと頭上で音が鳴った。見ると、男が剣を刺そうとしていた。
僕はクラッシュ《粉砕》の魔法を広域で放つ。
男はその魔法に捕らわれた。空から落ちて転がった。そして、血だらけでゆっくりと立ち上がった。
『最後にきく。なぜ、小さき子を殺そうとした』
長老の声には敵意があった。
『戦略級の魔法使いがいる限り、魔族と人族で戦争ができない。それに我々の
『それは神霊族と魔神族のゲームを続けたいということか?』
『この世界は神霊族と魔神族で管理されている。ある意味、
『
『なら、龍族も有翼族の敵だ。心して待つがよい』
『素直に帰れると思っているのか?』
男は予想していなかったようだ。驚いた顔をしている。
長老は口を開ける。すると、口の中が輝いた。
有翼族の男は長老が放つドラゴンブレスによって消えた。
『小さき子よすまない。悪い方向に転がった。もう少し、時が欲しかった』
『いえ。敵がはっきりしました』
『では、出陣しよう。有翼族が攻撃する前に静かにさせる』
長老が立ち上がると、他の龍たちはほえた。
僕と導師は同じ龍の手に乗って運ばれている。
百を超える龍の大軍だが足並みはそろっている。飛行速度は速く地面はすぐに通りすぎる。
龍の防御膜の中にいなければ、目を開けることもできないだろう。
『導師。よかったのですか?』
僕はコールの魔法できいた。
『仕方ないだろう。おまえが騒動の中心にいる。それに龍族が力を貸してくれるのだから文句はいえない』
導師は流れが戦争になって不満のようだ。
『ですが、宰相に怒られますよ』
『龍族の力なしに戦争をする方が不利だ。それぐらいわかってくれるよ』
『それでも、怒られるのでは?』
『その時は逃げるなよ』
宰相から怒られるのは決定しているようだ。
やがて、有翼族の領地に近づいたようだ。龍の飛ぶ速度が落ちた。
遠見の魔法で見ると、有翼族が壁を作るかのように空を飛んでいた。
数は五十ぐらいだ。だが、初動で動いた人数だ。後から来る人数は多いだろう。
『使者から、宣戦布告を受けた。これより龍族は人族と共に戦う』
長老ではない龍がいった。
戦闘時の軍団長なのかもしれない。
『人族ごときで戦争をすると?』
前に出た有翼族はいった。
この有翼族も白い翼だ。
黑い翼の有翼族は見かけなかった。
『もう、言葉は不要。いざ』
『バカが!』
龍たちはほえると、ドラゴンブレスをはいた。
またたく間に空中には数多くの大輪の花が咲いた。
魔法とドラゴンブレスがぶつかっている。それが、花のように咲いていた。
『導師。戦略級を使いますか?』
僕はきいた。
『近すぎる。使うのは危ない』
『では、観戦しかできません』
僕たちは後方にいるため、魔法を放ている距離にはいなかった。
『そうだな。ところで、戦略級の魔法の名前を聞いたことがない』
『そういえば、つけてませんでした。……
原子爆弾の威力は前世の博物館で何度も見ている。大量殺人と放射能。その悲劇はマンガでも読んだ。
だから、この名前にすれば身が引き
『おまえらしい名付けだな。名前は重複していない。これから、そう呼ぶ』
『はい』
『それで、威力の強弱はつけれるようになったか?』
『実験ができないので、できていません』
『あれは荒野でも使えないな。今後の課題にしよう』
『そうですね』
『遠距離からの撃ち合いが終わった。これからは接近することになる。龍の手から落ちても、私から離れるなよ』
『了解しました』
龍たちは前に行軍した。
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