第251話 襲撃の結果

 騎士団が来てから、リビングで一休みしていた。

 しかし、僕は寝てしまったようだ。気付いたら導師に背中をなでられて、ソファーに横になっていた。

「まだ、寝ていていいぞ」

 導師の優しい声が聞こえた。

「今、何時ですか?」

「まだ、六時だ。起きるには早い」

「敵は?」

「来ていない。騎士団も警戒中だ。安心していい」

「わかりました」

 僕は目を閉じた。

 導師に起こされたのは昼になってからだ。

 その時にはあわただしさがなくなり、静かな屋敷に戻っていた。

「昼食にしよう」

 導師はほほ笑みながらいった。

「敵はどうなりました?」

「もう、来ないよ。騎士団も帰った」

 僕は起き上がって戦闘用のローブを脱いだ。そして空間魔法の倉庫に入れた。

 ふいに導師に頭をなでられた。

「なんですか?」

「よくがんばったと思ってな」

「そうですか? いつも通りですよ?」

「そうかもしれないな」

 導師はほほ笑んでいた。


 昼食を食べていると、頭が起きてきた。

「導師。あの後はどうなったのですか?」

 僕はきいた。

「相手は逃走。王都から撤退てったいしたようだ。おまえの父はわからない。騎士団が来るまで観戦していたが逃げたようだ」

「捕まえた人は?」

「全員、指名手配犯だったよ。今は牢屋にいるだろう」

 父の目的は僕なのはわかる。しかし、引き際がよすぎる。何を目的にして襲ってきたのかわからない。

「父の目的はわかりますか?」

「順当に考えれば、おまえだな。他の要因は神霊族がらみになる。神霊族のこまとして素直に動いたと考えられる」

「今回は理解できないですね」

「ああ、それで、クンツ・レギーンに調査してもらっている」

「クンツさんにですか……」

「他に心当たりはない。神霊族を知っていて、それ関係の情報を集められるヤツはいないよ」

「そうですね。神霊族を知っているのが前提です。知らない人が多いですね」

「そういうとこだ。クンツの報告を待つとしよう」

「はい」


 日常はすぐに帰ってきた。

 盗賊団の被害にあった家は貴族たちの住む山の手にはない。

 下町の平民が被害にあっていた。そのため、貴族の並ぶ山の手には火事の被害はない。

 三日もすると襲撃の事件も忘れ去られた。


 いつものようにカリーヌの家に行く。

 玄関でジスランに迎えられた。

 僕はジスランが導くまま、ジスランの書斎に入った。

「今回も大変だったね。でも、君の父の行動の意味が読めない。なにか心当たりはあるかい?」

 ジスランでも父の行動がわからないようだ。

「導師でもわかりません。もちろん僕も。……考えられるのは、僕の力を計っていた。それぐらいです」

「うん。そうなるね。でも、彼の仲間は限られている。これ以上の戦力はいると思うかい?」

 ジスランは手を組んで僕を見ている。

「……有翼族ですね。僕は有翼族とは仲が悪いです。何度か殺されそうになりました」

「なるほど……。でも、その線はないかな。彼には有翼族にツテはない」

「はい。ですが、神霊族と関わっています。それに有翼族は神霊族に刃向はむかうことができないみたいです」

「なるほど。……あれから、有翼族の大使は来ていない。可能性はあるが、彼の提案には乗らないだろう。有翼族の誇りがある。人族を下に見ているからね」

「他には思いつきません」

「ある公爵が亡命したのを知っているかな?」

「いえ。導師が敵対している貴族ですか?」

「うん。盗賊団の混乱の中で亡命した。公爵の領土は他の貴族が受け継いだけどね」

「それほどの貴族が亡命ですか?」

「うん。だから、不自然なんだ。彼は公爵の亡命を手伝ったと考えられる」

「それだけのために?」

 僕は父がそのためだけの騒動を起こしたとは考えられなかった。

「僕にも彼の性格からは考えられない。でも、公爵の亡命と共に国家機密を持っていかれた。君たちが作ったレールガンの情報もね」

「敵は人間ですか?」

「うん。僕はそうみている」

「戦争でもする気ですか?」

「可能性はある。でも、君という戦略級魔法使いがいる。戦争をこの国としたい国はいないと思う。だが、強い後ろ盾を持ったら変わるかもしれない」

「後ろ盾?」

「うん。君のいった有翼族だ。人族を超える種族の援軍がいる。心強いと思うよ」

「それをいったら、こちらは龍族がいます。名前だけでも借りられます」

「うん。そうだね。でも、名前だけだ。それでは意味がない。それに有翼族は君を敵として見ている。後ろにつく動機もあるんだ」

「僕は戦争で戦略級の魔法を使えと?」

「気が早いな。まだ、戦争となると決まっていない。だが、有翼族は君を狙いに来る。それだけは気を付けてね。戦争は大人に任せて欲しい。それに外交が上手くいくうちは戦争はないから。……君は自分が思っていないほど目立っている。それは自覚した方がいい」

 僕は有名になったと思っていない。だが、問題児としては有名だろう。龍と関り、戦略級の魔法を持っている。目立っていないと自覚している方が頭が悪い。

「はい。気をつけます」

「うん。悪い貴族には近づかないように」

 ジスランはほほ笑んだ。

「わかりました。では、失礼します」

 僕は書斎を出た。

 そして、ガーデンルームに行った。

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