第224話 襲撃

 王都の下町で火の手が上がったらしい。

 ベットで寝ている僕を起こしに来たノーラからの情報だ。

 ノーラがいうには導師が僕を呼んでいるようだ。緊急事態として戦闘準備をするようにいわれた。

 僕は着替えてノクラヒロのリングを腕に巻きつける。

 リビングに行くと、導師は紅茶をすすっていた。

 やる気があるのか、ないのかわからない。

「今夜は忙しくなる。紅茶でもって頭をはっきりさせろ」

 今夜は寝れないようだ。

 だが、なぜ、断定できるのかわからない。

「私の情報筋だ。派手に花火を上げるらしい」

「目的は何ですか?」

「お前だな。お前の父が関わっている。なら、一番の目的はお前となる。しかし、他の構成員も思惑はあるようだ。動きが目標に一直線に向かっていない。それに、火の手は予告だろう。わざとだな構成員は父を嫌うのもわかるけどな」

「僕のせいですか?」

「いや、違う。お前の父のせいだ。勘違いするな。お前が生きているから、父親は反社会的な活動をしているわけではない。適当にお前を理由にして活動しているだけだ。だから、その理由は何でもいいんだよ。自分のせいとか間違えるな」

「……はい」

「それに、これは神霊族の狙いでもある。戦略級魔法使いは戦争ではいらないからな。だから、お前が生きている限り、新たな勇者や魔王は出てこない」

 僕の死は新しい戦争を呼ぶようだ。

 それなら、なおのこと死ぬことはできない。

「夜は長い。しばらく、くつろげ」

 導師は僕の頭をなでた。

 僕は紅茶をもらって飲む。カフェインで頭を覚醒させるためだ。


 敵というか、父はすぐに来たようだ。門番が緊急の警報を鳴らした。警告音が屋敷に響いた。

 待機室に控えていた騎士のエルトンやアドフルの五人が、走って玄関から外に出た。

 僕は導師と共に歩いて外に向かった。

 玄関の外では戦いが起きている。二十人ほど入り乱れて戦っている。だが、騎士団は後れをとっていない。

 相手の力量はバラバラだった。

「ようやく来たか」

 立っている父がいった。

 僕は聞きたくないので無視をした。

 また、訳の分からない理屈で文句をいうからだ。

 それに、父は門柱の上にはいない。見せているのは幻影である。

 本体は探知魔法で特定している。今でも半身になって逃げる準備をしていた。

 僕は杖を出して本体にブレイクブレットを飛ばした。すると、影は消えた。

 逃げることが優先で、幻影を維持することさえできないようだ。

「お前の相手はオレだ」

 なぜか上半身裸の男が殴りかかってきた。

 その脇で女の魔術師がファイヤーブレッドを僕に飛ばした。

 僕は防御膜の強度を上げた。

 ファイヤーブレッドが僕に当たる。

 そのスキに僕を殴るようだ。

 しかし、ファイヤーブレッドでは僕の防御膜は破れない。

 僕は男の胸に刺した。杖にはドラゴンシールドの要領で刃をつけてある。抵抗もなく刺さった。

 男は理解していないようだ。魔法をくらいながらも、攻撃してきたことを理解していない。

 僕は槍を抜いて払いながら、男の首を切った。そして、事態が読み込めない魔術師の懐に入って胸に槍を刺した。僕は同じように抜いて首を切り払った。

 父の幻影が現れた。態勢を立て直したようだが、逃げるための態勢だ。僕は何かいう前にブレイクブレットで爆撃した。

「シオン。余計なのは無視しろ。その間に敵を倒せ」

 導師はいった。

「了解」

 僕は剣で押し合っている相手に、サンダーバードの魔法で一時的に硬直させた。そのスキに騎士は斬り払った。

 導師は数に押されているのを見て、ドラゴンフォースで敵を攻撃していた。

 だが、上手く当たらない。しかし、それも予想道理みたいだ。敵を引き付けるにはちょうど良かった。

 敵はそれでも二人一組で戦いを進める。面倒になってサンダーバードを放って電撃で止める。そして、プラズマの魔法で体を消し去った。

「シオン様。助けてください」

 騎士のコンスタントはおされていた。

 僕はブレイクブレットを強めに放った。すると、相手の剣士は弾き飛んで鎧に穴を開けた。

「ありがとうございます」

「来るよ」

 新しい敵は現れた。最初にいた人数よりも多い。しかし、味方の騎士団も現れた。

 僕は乱戦の庭を探知魔法で感知しながら、敵をブレイクブレットで葬った。


「一番、庭を壊したのはシオンだな」

 なぜか導師は僕に怒っていた。

「不可抗力です」

 僕は言い訳をした。

「もう少し、使う魔法を選ぼうな」

「ブレイクブレットです。初心者の魔法です」

「うん。だからといって木の幹や石像を破壊するのはいただけない。加減は考えないのか?」

「一生懸命、頑張りました」

「うん。理由になっていない。街中での戦術を勉強しようか?」

「……はい」

 敵を追い返したのに僕は導師に怒られていた。

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