第223話 龍の知識

 龍に迎えられて浮島に運ばれた。そして、広間に行って長老と会った。

『今日は何の用だい』

 コールの魔法で届いた。

 長老は相変わらず優しい感じがした。

『今日、来たのは神霊族について知っていることを聞かせて欲しいからです』

 導師はいった

『その話ならちょっと長くなるかな』

『なら、お先に献上させてください』

 宰相はいった。

 宰相は空間から長い箱を出した。そして、前に出す。

『お納めください』

 宰相がいうと、箱はわきに龍が念動力で持ち上げた。

 広間の中央に箱が飛んでいくと開いた。そして、中身が出てきた。

 宝飾された剣のだった。武器にしては無駄にきらめいていた。

『おお。素晴らしいね。これは観賞用の剣だね。戦士に持たせる剣ではないね』

『はい。今度は名のなる鍛冶屋に実用的な剣を作らせますか? 龍の牙を持つ者に剣を下賜されたと聞きました。我が国の鍛冶屋にも腕に覚えがある者がいます』

『そうだね。有望な剣士を見ても、実力に合った剣を持っていない人族がいる。そんな者に与える剣は欲しいね』

『でしたら、用意します』

『すまないね。要望をしてしまった。それより、龍の牙は足りているかい? 五つほど用意してある。今度は他国の要人も含めて渡して欲しい』

『恐れ入ります』

 宰相は胸に手を当てて礼をした。

 宰相は念動力で運ばれた五つの牙をもらって、空間魔法の倉庫に入れた。

『では、本題に入ろう。人族の歴史は発展と滅亡を繰り返している。その原因は人族と魔族の争い多い。だが、勘違いしないで欲しい。人族と魔族は神霊族も魔神族も関わる前から争っている。理由はあり方が近い上に文化が違うからだろう。肥沃ひよくな土地を奪い合っている。文明が発展すればするほど争い合い、文明を引き継げないほど破壊が起きる。そして、人族も魔族も少数になる。その度、数を増やして文明を発展させる。それが何千年以上も続けている。そんな時に神霊族と魔神族の二柱が介入した。我々、龍族にも話を通している。計画的に戦争をして両種族を管理すると。だが、問題がある。管理するために柵で囲った。そのため、他の種族も捕らわれることになった。そして、問題は人族と魔族の戦争が激化した。小さい世界での陣取り合戦だ。そのため、環境兵器などで天変地異が起きて、他の種族の存続にも問題が出た。わしは神霊族と魔神族のしていることは間違っていると思う。争うために囲ったとしか考えられない。昔なら他の地に逃げていたからね』

 広場は静かだった。

 他の龍も思うところがあるのだろう。

『神霊族と魔神族は何回、戦争をしたんですか?』

 導師は沈黙を破った。

『十は越える。だが、進展はない。繰り返してばかりだ』

『神霊族と魔神族を倒しても問題ありますか?』

『元に戻るだけだ。変わらないだろう』

『龍族は二柱は邪魔ですか?』

『もちろん。自由な空を失くした。だが、神霊族と魔神族と争うには武器がない。物質的なドラゴンブレスでは二柱を滅せない』

『それで、人族を頼っているのですか?』

『ふむ。情けないが、そうだ。我々では二柱を滅せない。存在の在り方が違うからだ』

『いつ頃、二柱を滅せる魔法ができますか?』

『その兆しはある。だが、今は完成されていないだろう。二柱がいなくなる未来は視えない』

『わかりました』

 導師は下がった。

『小さき子はききたいことはないかな?』

『あります。二柱は不死身ですか?』

『いや、存在は違うが不死ではない』

『ドラゴンブレスはどれぐらい効きますか?』

『こちらの攻撃が効かないように、あちらの攻撃も我々に通じない』

 二柱は神の名を持つ通り物質的な体を持っていないようだ。

『人族にはあちらの攻撃が効くんですか?』

『効く。人族は物質的な力と精神的な力を持っているからだ』

『精神的な力を磨く方法はありますか?』

『すまんが、知らん。私たちの在り方は違うので予想もつかない』

『その技は未来予知ではどう視えましたか?』

『わからん。魔法とは違っているようだ。形は視えない』

『わかりました。ありがとうございます』

 僕は頭を下げた。

『また、疑問が出たら来て欲しい。答えられる限り答えるよ』

 長老に見送られて広場を去った。

 そして、迎えの龍に王都に運ばれた。


 今回は宰相だけで王に話すらしい。

 国賓がいるため、王も忙しいようだ。

 僕と導師は素直に家に帰った。そして、帰るなり導師の書斎に入った。

「神霊族に手を出すのは早いようだな」

 導師はいった。

「そうですね。ですが、気になります。滅殺と崩壊は形になってきています。しかし、予兆しかないといわれました。禁呪は使えない可能性があります」

「うむ。私もそれを考えた。しかし、他の道は今はない。シオンは禁呪を自分のものにしてくれ。私は他の古文書を探す」

「わかりました。それで、今回の騒動には参加するんですか?」

「不参加だ。参加する意味がなくなった。危険なら素直に逃げろよ。戦う必要はない」

「わかりました」

 僕が退席しようとすると、導師はとめた。

「夕食まで時間がある。トランプでもして遊ぼう」

 導師は照れながらいった。

 恥ずかしがることではないと思うが、導師が遊ぼうというのは珍しい。

 勉強や神霊族のなどで余裕がなかったのかもしれない。

 リビングに移動して、メイドのノーラとマーシアを引き入れて遊んだ。

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