第218話 盗賊団

 屋敷に帰ると執事のロドリグに迎えられた。

 僕はともかく、騎士たちの寝床や待機場所を案内しなければならないからだ。

「シオン様。導師様がお呼びです。書斎に行ってください」

 執事にいわれて、導師の書斎のドアをノックした。

「入れ」

 いわれて、ドアを開けて中に入る。

「すまんな。急なことで」

 導師はいった。

「今日、決まったんですか?」

「ああ。午後に宰相から依頼があった。なので、連絡が遅れた」

「はあ」

 僕には事態がよくわからない。

「お前の父が使っている盗賊団は一軍と二軍、三軍がいる。その中の一軍を使っているようだ」

「それほど、大きな組織なら頭が変わっても問題ないと思いますよ?」

「そうだな。だが、一軍は出身地が同じで仲間のつながりが強い。そして、二軍と三軍を手足として使っている。なので、一軍がすべての決定権を持つ。そして、頭領は類を見ないカリスマ性を持っていて、他の盗賊がうらやましがるほどだ」

「つまり、頭領の命には代えられないと?」

「そうなる。だが、捕まったのは死と同等と考える部下はいる。そして、お礼参りをしたが意味はなかった。理由は知っている通り神霊族の加護だ。それで、頭領の返還と共に契約を結んだようだ」

「父は契約をするように思えません」

 僕はいつも逃げ道だけは用意している父を思い出した。

「魔術的な契約ではない。普通の口約束だろう」

「その盗賊はいいように使われていませんか?」

「そうだな。だが、騎士団はペイモーピズに借りがある。潰すまで戦う気らしい」

「僕はおまけですか?」

 中心人物でありながら脇役である。

「そうむくれるな。中心はお前と父だが、この騒動はペイモーピズと騎士団の問題だ」

「また、王都が危なくなるんですか?」

「まあ、夜間の外出は禁止だな」

 僕は平穏を求めている。問題などあってはならないはずだ。普通に生きて普通に死ぬ。人並みの幸せを手に入れる。それが生まれ変わった時に願ったはずだった。

「導師。父を殺さないんですか? 導師ならできると思いますが?」

「そうだな。できるかもしれないし、できないかもしれない。だが、今は神霊族と相対したくはない。必要な駒がそろっていないからな」

 導師は考えながらいった。

 神霊族。その存在は厄介だった。


 勉強が終わり、中庭にはを見ると、エルトンたちが練習している。訓練ではなく体を温まらせているようだ。

 だが、人数は四人と一人欠けている。恐れく、二十四時間体制のため休んでいるのだろう。

 夕食を食べて、カリーヌに家に移動する。

 護衛は三人だ。

 エルトンとアドフル。ハーマンの三人だ。二人は待機のようだ。

 カリーヌの屋敷の玄関に入ると、三人と別れた。

 三人は待機室で待つようだ。

「やあ。面倒なことになっているね」

 ジスランはほほ笑んだ。

「はい。中心にいるはずなのにエサでしかないです」

 書斎に向かう道でいった。

「そうかもね。今回は騎士団に任せてゆっくりするといい。彼らは優秀だよ」

「それなんですが……。以前に父には逃げられてますから……」

「そうだったね。でも、ペイモーピズを壊滅したいのは王も一緒だよ。大きくなりすぎているからね」

「そうなんですか。ペイモーピズって凄いんですか?」

「一番力のある盗賊団だよ。子供でも知っているよ」

 子供である僕は知らない。そもそも、盗賊団がそこまで大きくなるのか理解できなかった。

「盗賊団に騎士団は後れを取らないよ。安心していいと思うよ」

「父が関係してますので、最低限の警戒はします」

「そうだね。彼は特別だった」

「それより、ビンゴはできましたか?」

 ジスランは僕のセリフに笑った。

「それよりって、君にとっては大事だと思うよ?」

「そうですね。父には狙われ慣れたのだと思います。またかという感覚です」

「それは頼もしいね。なら、安心できるかな。……ビンゴは大きな魔道具にしようと思っている。目立つようにね。だから、まだ、試作品はできていないよ」

「そうでしたか……。トランプの方は考えていますが、似たようなものになります。差別化ができないです」

「うん。ゆっくり考えてくれ。すぐに必要とは思ってないから」

「わかりました」

 僕はジスランと別れてガーデンルームに向かった。


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