第十五章 盗賊団と騎士団

第217話 護衛

 いつものように、朝は勉強をして、午後からカリーヌ家に行って遊ぶ。そして、騎士団の練習場で槍と魔法の稽古をする。

「シオン様。父上が動き出しました」

 エルトンに耳打ちされた。

 父は変わらず僕の命を狙っているらしい。それよりも犯罪者となった自分の命を大事にして欲しい。捕まったら死刑だ。

 なのに、父は僕に執着する。ストーカーよりもたちが悪い。本当に殺すか殺されるかしかないようだ。

「導師に連絡します」

「それですが、仲間に騎士団員を殺した犯罪者がいます。ここは騎士団に花を持たせてくれませんか?」

 騎士団の名誉がかかっているらしい。しかし、詳しい話はわからない。

「どんな、相手なんですか?」

 僕はエルトンに詳細をきいた。

 エルトンお話をきくと、国をまたいだ盗賊団らしい。それも、数は多く手練れがいるようだ。

 名前はペイモーピズという。

 父はその頭領を倒して乗っ取ったようだ。だが、部下はついてこないだろう。頭領を倒したからといって従う道理はない。

「頭領を人質にとったようです」

 エルトンはいった。

 頭領は魔法で監禁されているらしい。解放する対価として僕を殺すように持ちかけたようだ。

 だが、ペイモーピズはその道では名が知れている。最初は無視したようだ。そして、父を殺すために動いたようだ。しかし、父は人族である限り殺せない。なので、構成員は僕を殺すことに決めたようだ。

「今後、二十四時間、警護します」

「エルトンさんが?」

 僕はきいた。

「はい。先ほどランプレヒト公爵の許可は降りました。なので、今日からお屋敷にお邪魔します。もちろん、待機所で警戒します」

「すみません。導師に確認を取ります。それにききたいことがあります」

「はい。突然なのでわかっています」

 僕は導師にコールの魔法を使った。

『話は聞いたのか?』

 導師の第一声から僕のききたい話はわかっているようだ。

『はい。騎士団で僕の護衛をすると。それで、導師は他種族の手で父を暗殺しないのですか?』

『……一応、お前の親だろう……』

 導師のあきれた声が聞こえた。

『もう、その一線は超えています。勇者を生むための掃除屋と思っています。僕は戦略級魔法使いです。だから、戦争にはいらない人間です。排除したい駒でしょう?』

『……まあ、そうだ。だが、私も貴族だぞ。盗賊団に遅れはとらん。今回は外堀を騎士団に任せただけだ』

『盗賊団は脅威にならないと?』

『身内の保護はできている。後はお前というエサに食いつくかどうかだ?』

『……それって人使い荒くありません。僕は静かに暮らしたいです』

『そういえる余裕があるんだから、しばらくは騎士団に付き合ってあげな。王にも借りを作れるしな』

 僕は肩を落とす。

『わかりました』

 僕は騎士団の名誉回復に付き合うことになった。

 僕は息をはく。

 前世の淡々とした普通の毎日は貴重なものだったと痛感した。


「シオン様には三交代で付き添います」

 エルトンに三人の騎士を紹介された。

 その騎士は妖魔族討伐の時と同じ騎士だった。

 ハーマン・ロジャー。金髪で爽やかな大人だ。しかし、二十代だろう。

 アンディ・サムソン。黒髪で無口そうだ。この人も二十代に見えた。

 コンスタント・ウォルポール。白髪で苦労してそうな顔をしていた。しかし、同じ二十代のようだ。

「この三人は近い年なので仲が良いです。ケンカもしますが、気のいいやつ等です」

 エルトンはほほ笑んでいた。

「よろしくお願いします」

 三人はひざを着いた。

「伯爵様を守り抜いてみせます」

 三人は頭を下げた。

 僕はエルトンを見る。

 エルトンはうなずいた。

「はい。よろしくお願いします」

「私とアドフルはシオン様にずっと付き従います」

「それって、寝る以外はいつも一緒ってことですか?」

「はい。夜に襲われる可能性が高いですが、長期戦です。三人と共に守ります」

 僕は恵まれているようだ。警護が五人も付く。

 しかし。僕は自分自身で守らないと思っていた。

「では、今日は三人の相手をしてくれませんか? 魔法を相手の練習は滅多にできませんから」

 三人には意外なことのようだ。驚いて、エルトンを見ていた。

 その後は三人まとめて相手をする。もちろん、僕の手は二つだ。そのため、ファンネルを使った。そして、三人の相手になった。


「何ですか? あれ、不気味な板は。動きがおかしいです」

 ハーマンは馬車の外を一緒に歩くエルトンにぼやいていた。

「それも、シオン様の狙いだ。予測不可能な動きをすれば驚くし対処が遅れる。それを狙っている」

「……なるほど。シオン様って普通の貴族でないんですね」

「普通だったら、この歳で伯爵にまでなれん」

「そうですね……」

 護衛の三人は疲れを見せていた。

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