第213話 戦争

 目印の妖魔族。王のボゼナヴァルはゆっくりとだが進軍していた。

「そろそろだな。射程距離に入る」

 導師はいった。

 妖精族は里に引きつけてから、攻撃をするらしい。なので、本番は長距離砲で撃ち放題だ。

 朝のご飯を食べる。

 携帯食のためおいしいとは思わないが腹はふくれた。

「食い過ぎだ」

 導師にいわれた。

「昼食はないでしょう? 食べ貯めてないとお腹がすきます」

「今日で終わらす気か?」

「そのつもりですけど?」

「ドラゴンブレスをどう使うつもりだ?」

「極限まで増幅して発射します。もちろんねじりを入れて貫通力を上げます。五発持つかわからないですね」

「そんな使い方をするのか?」

「ええ。あれを倒すには道具の心配をしていられません」

 導師はため息をつく。

「無謀なのは変わらないな」

 導師はあきらめたかのようにいった。


 昼前に里のすぐ外のボゼナヴァルは進軍していた。

「シオン。出し惜しみはなしだ。いいな?」

 導師が長距離砲のサイトを見ながらいった。

「もちろんです」

 僕も長距離砲をサイトを見ながらいった。

「では、いくぞ」

「ちょっと待って下さい。溜めに時間がかかります」

「溜め?」

「はい。ノクラヒロの砲身一杯にマナを溜めています。少し待ってください」

「そんなことができるのか?」

「ええ。導師も修行してくださいよ。マナを体内で回してためるのを」

「……それなんだが、怖いんだ。魔力だけでも問題なのに、マナとなるともっと大きな問題になる可能性が高い」

「でも、そうしないと、僕は人間爆弾ですよ」

「お前は仕方ない。だが、私がする必要があるかわからないんだ」

「まあ。先はわかりません。僕もマナをためていますが、理解できない異変はあると思いますから」

「その異変は?」

「さあ? 自覚できません。……それより、たまりました。発射できます」

 僕は探知魔法を全開にして、サイトの中のボゼナヴァルに照準を合わせた。

「では、一斉に行くぞ」

「了解」

 僕は緊張する。だが、やり切らなければならないことだ。息をはいてサイトをにらんだ。

「三。二。一。発射」

 導師のカウントで長距離砲からドラゴンブレスを放った。

 僕の砲身からは、大砲よりも何倍も大きな光線が出る。それが、らせんを描いて直線的にボゼナヴァルの体を一部消した。

 ボゼナヴァルの左の肩口は消えている。そして、導師の攻撃で頭はなくなっていた。

 しかし。核が存在しているため、力を削ったに過ぎない。

 核はこちらの攻撃を感じたのか移動を続けている。

「再装填」

 導師の言葉にマナを溜めた。

「後どれくらいで行ける?」

「五秒ください」

 僕はマナを集めながら導師にいった。

 僕はカウントする。

「五。四。三。二。一。どうぞ」

「発射」

 導師はいった。

 僕のドラゴンブレスはさらに太くなっている。狙撃でなく極太の光線のようだった。

 その光線はボゼナヴァルの胴体に消した。だが、核は残っている。下半身に逃げたようだ。

「お前は右足を狙え。溜めはなしだ」

 導師の指示が飛んだ。

「了解」

 僕は答える。

 急いでレバーを回して角度を変える。

「三。二。一。発射」

 導師の声に従ってドラゴンブレスを放った。

 ボゼナヴァルの核は足から飛び出した。だが、足は僕と導師のドラゴンブレスでなくなっている。

 依り代をなくした核の行方はわからなかった。

 核は空に浮かんでいく。それを触れるように空中に手が現れた。

 神霊族だ。

 僕は核を触った手と共に、滅殺の呪術を放った。

 念を込めて放つ。

 核はマナを吐き出して崩れて消える。そして、その核を触っていた神霊族らしき手もボロボロになって消えた。

 僕はその方向探知魔法を使って探りながら見る。しかし、敵意は飛んでこない。神霊族は素直に離れたようだ。

 ボゼナヴァルは消えた。後は妖精族に任せるしかない。

 僕は緊張を解くように息をはいた。

「シオン」

 そういう導師の言葉は怒っていた。

「禁呪は使うなといったはずだ」

 見上げると導師の顔は怒っていた。

「ごめんなさい。でも、逃げられると思ったし、神霊族に効くか試せる好機でしたから」

 導師は僕の頭を拳ではさんで締め付ける。

 ゴリゴリと音がして頭が痛い。

「確かにそうだ。だが私の指示もなく使ったのはダメだ。後でお仕置きな」

 後といいながら今している。それに、僕は最善のことをしたのに怒られるのは不本意だ。

「文句があるようだが、約束を破ったのは問題だ。禁呪にした意味がない」

「はい。わかりました。でも、痛いです」

「ダメだ」

 僕はゴリゴリと音のする痛みを受け入れた。

「それより、妖魔族が飛んで来てません?」

 騎士団の一人が指さした。

 飛べる妖魔は僕たちを狙っているようだ。

 僕は長距離砲をしまって、襲撃に備える。

 そして、両腕にノクラヒロの腕輪と杖を持って迎撃に移った。

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