第191話 準備
「シオン様の父上が傭兵を集めていると聞きました。ご用心してください」
騎士団の練習場に向かう道でエルトンにいわれた。
「ええ。導師からも聞いています。ですが、これほど有名なのは問題ですね。裏があるとしか思えないです」
「え? 傭兵とは関係なく、何か仕込んでいるというのですか?」
「はい。僕ならそうします。表向きは金で何とかなります。それらしい理由をつけて、雇えばいいだけですから。なので、本命は違うと思います」
「騎士団では他の情報はありません」
「クンツさんなら持っていると思います。まあ、王都にいればの話ですが」
「あやつですか……。悔しいですが、可能性はあります。私が頭を下げます」
「いや。まだ、決まってません。それにクンツさんなら導師の方が適任です。一応、導師からしたら下級貴族になりますから」
「なるほど。では、お母上にお任せします」
「はい。今夜にでも話しておきます」
「そういえば、ある伯爵が衛兵に金を掴ませて、甲冑の者を王都に入れたようです」
アドフルは横からいった。
僕はアドフルに振り返った。
「それって、大事では?」
僕はきいた。
「よくあることです。その代り、問題を起こさないように衛兵で情報共有して見張ります」
「その貴族の名前は知っているんですか?」
「多すぎてわかりません。衛兵にきけば名前は聞けると思いますが、騎士団が相手では何も話しません」
「どれぐらい、王都に侵入者はいるんだ?」
エルトンはきいた。
「わかりません。衛兵では上級の貴族には逆らえないのです。なので、貴族に関わる侵入者は多いと思います」
「衛兵とは騎士の誇りはないのか?」
エルトンは怒っていた。
「正しくても、上の爵位を持つ人に逆らえばクビになります。衛兵でいるのには知らぬふりをする必要があるのです」
アドフルの話から、王都は貴族の援助があれば素通りみたいだ。
「情報共有しているといいましたね。その情報をもらえますか?」
「はい。ですが、袖の下が必要になります」
「腐っとる」
エルトンは怒った。
「貴族を売るんです。それだけの危険があるということです」
僕がいってもエルトンは怒っていた。
「――という話がありました」
僕は夕食の席で導師にいった。
「それは騎士団に任せられないな。騎士団が動けばヤツ等は隠れるだけだ。だから、それは私に任せてくれ」
「導師に?」
僕にとって導師は荒事に向かないと思っている。直主な情報網は持っているらしいが、攻撃的ではないと思っていた。
「ああ。これでも調べ事は得意だ。だてに公爵という爵位を持ってい続けていない。それぐらいの力があると思ってくれ」
「はあ」
僕は導師の裏の顔は、いまだ見えなかった。
朝の勉強の時間で、僕は防御の魔導書を解析して再現する。そして、新たな魔法として形にしていった。
僕は魔術や魔法に偏っているらしい。医学書ではあんなに苦労していたのに、魔導書は頭によく入った。
僕は空間からファンネルという武器を出して、魔法陣を書き換えて性能を上げる。
攻撃から防御までできる。問題は魔力は貯めることは禁忌であることだ。
魔力は貯めると爆弾のような状態になる。そして、刺激があれば爆発する。使い方では有効だが、この世界ではできない。そのため、バッテーリーを使う魔道具は作れなかった。
ファンネルも空間魔法を使って魔力を供給するようにしてある。そのため、無線というより有線と感じる。ビットという名も
あるが、この世界では著作権に触れないので問題ないだろう。
ファンネルを一つ放つと、つないだ二つの板は変な動きで、空中を素早く動く。
僕はその変則的な動きに満足する。
荒野の岩を敵と定めて、試しに攻撃させた。
ファンネルは変な動きをしながら敵に近づく。そして、剣が届かない範囲で攻撃をする。それも、予測できない移動をしながら攻撃した。
出来に納得して僕のもとに戻す。そして、防御を取らせた。
ファンネルは板を開いて、障壁を展開した。
求める出来に満足した。
この魔法陣をバージョン・ワンとして、ファンネルを十二機作った。
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