第186話 謝罪の仕方

 アドフルとエルトンに迎えられて、騎士団の練習場に向かった。

 その途中に、またしてもジークハルトがいた。

 消えればいいのに、また問題を持ってきたようだ。

「何の用だ?」

 エルトンは厳しい声を出した。

「今回は謝りに来た。貴族というものをクンツさんの教わった」

 サムエルはため息をはく。

「だったら、顔を見せるな。クンツさんがランプレヒト公爵様に謝りに行った意味がない」

「そうなのか?」

 ジークハルトはきょとんとしていた。

「貴族には貴族の謝り方がある。ごめんなさいで終わる話ではない」

「どうすれば、終わるんだ?」

「お前は顔を出すな。それだけで問題になる。それと、この責任はすべてクンツさんが持った。だから、オレたちができることはない。しようとすれば、クンツさんの足を引っ張る。わかったか?」

「ああ。わかった。……その、すまなかった」

 そういうとジークハルトは下を向いて去った。

 剣の腕だけでも生きられない。知力だけでは生きられない。僕の頭には文武両道という言葉がよぎった。


 騎士団での訓練の帰り道で殺気を感じた。

 エルトンは察知していたのか、アドフルに手信号で指示を飛ばしていた。

 僕は前を歩くサムエルを見る。顔は険しかった。

 襲撃がわかっているようだ。だが、父の気配は感じない。念のため、探知魔法を広げて、ノクラヒロの腕輪を付けた。

 襲撃者は五人。前に三人。後ろに二人だった。

 エルトンとアドフルはすぐに動いた。

 前をエルトン。後ろをアドフル。サムエルは数に入っていないようだ。

 僕は背後のアドフルの援護に魔法を放った。

 ブレイクブレットが二人を襲う。その弾丸の嵐の中をアドフルは突っ込んで一人を切った。

 そして、弾丸が続く中を防御膜で受けながら、もう一人を切った。

 アドフルが切った二人は気配が消えた。死んだようだ。

 アドフルは残心して周りに注意を払っている。

 僕は前を見てエルトンの動きを見た。

 お互いが牽制して殺気を放っている。

 先に動いたのはエルトンだった。

 暴力的な強さだった。数に関係なく切り捨てていた。

 引っかくように、剣を振ると相手は剣と同じように真っ二つになる。相手は攻撃することなく、剣と共に真っ二つにされていた。

 剛の剣というのだろうか。僕は何もすることができず、見ているだけだった。

「シオン様。敵の気配を感じますか?」

 三人を切り捨てたエルトンがいった。

「いえ。反応はないです」

「では、警戒を続けたままでお願いします。騎士団には連絡をしましたので、すぐに来ると思います」

 すると、転移の魔術で騎士団が移動してきた。

 その後は騎士団に任せて、多くなった護衛と共に帰った。


「災難だったな」

 導師に玄関で迎えられた。

「どうしたんですか? わざわざ」

 導師が出迎えるとは思いもしなかった。

「いや。クンツと色々あっただろう? それで、火の粉が飛んだと思った」

 リビングに行く最中に導師はいった。

「そうですか。……ちょっと思ったんですが、敵対貴族の襲撃ではないのですか?」

「ありうるが、尻尾を掴ませる下手な手は使わないだろう。闇ギルドは今だ潰れていないと思う」

「そうですか。誰が、僕なんか殺したいのですか?」

「お前は戦略級魔法使いだ。いるだけで国と私の派閥の力になる。だから、消したい人間がいる。他国も含めてな」

 リビングに移動すると導師はソファーに座った。

 王の派閥でない貴族には僕は邪魔のようだ。少なくとも王の力を削ぎたいらしい。

「そういえばそうでいたね。僕も気をつけないとならないんですね」

 僕もソファーに座った。

「すまんな。お前には平凡な人生を生きて欲しかった」

「導師に買われる前に平凡とは無縁になりましたよ?」

「そうかもな」

 導師はふと笑った。

「ところで、クンツさんとは付き合いを続けるのですか?」

「そうだな。まだ、考え中といっておく」

「カリーヌさんのお父様が心配してましたよ?」

「ああ。忠告はもらっている。だが、忠告相手はクンツを使っている。説得力がない」

「そうですね。クンツさんはどこか惹きつけられますから」

「ああ。それはわかっている。それが彼のやっかいなところだ」

 導師は苦笑いを浮かべた。

「少し。お前の意見が聞きたい」

 僕は導師と共にリビングでお茶を飲んで過ごした。

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