第十三章 火遊びと静かな戦い
第173話 日常
カリーヌの家に家庭教師兼生徒になりに行った。
だが、玄関で待っていたのは家長のジスランだった。
「やあ。さっそくだが見て欲しい。今、増産しているけど、君の意見をききたくってね」
僕はジスランと共に遊戯室に移動した。
その間にちょっと話した。
ジスランは僕の留守の合間に事業を進めていたようだ。
そして、魔王が倒されたと聞くと、王都の外に作る予定の競馬場も建築が再会したようだ。壁と共にレース場も作っているようだった。
遊戯室に入ると、パチンコとスマートボールの台が二台ずつあった。
「作りは前と一緒だよ。変えたのは部品の精密さだね。前よりも力を入れないで打てるよ」
僕は試すようにパチンコ台の前に座って球を打った。
ジスランのいう通り、軽い力で打てるようになっていた。これなら、そう簡単に疲れないだろう。
そして、玉はよく弾んで落ちた。文句はなかった。
スマートボールも同じで完成品であった。
「後は確立の調査ですね?」
「そうか。なら、みんなを呼んで来てくれないか? 統計を取りたい」
「わかりました」
僕はみんながいるテラスにメイドに連れて行ってもらった。
「よう。遅いということはできたのか?」
アルノルトは博打には目ざといようだ。
「ええ。確率の調査をしたいので、呼んで来て欲しいといわれました」
「おう。任せろ」
「その前に休憩よ」
レティシアはいった。
「わかっているって」
アルノルトはいった。
珍しくアルノルトはあせっていなかった。
僕が紅茶を飲んで一服するまで待っていた。
その後は遊戯室でパチンコとスマートボールで遊んだ。
だが、今回はクギの調子で、確立が変わるため長期戦になった。そのため、何日もわたって試遊することになった。
「当分、パチンコとスマートボールは見たくない」
アルノルトはぼやいた。
「ギャンブラーになるのではなかったの?」
レティシアはいった。
「さすがに手にマメを作ったんだ。ちょっとは休みたい」
「まあね。こんなにも大変になるとは思わなかったわ」
レティシアでも堪えたらしい。
「毎日、クギの調子を変えていました。なので、それなりのデーターは取れていますよ」
僕はいった。
「それなら、救われる。最後には苦痛になったからな」
エトヴィンは思い出したのか辛そうにいった。
「ごめんなさい。みんなには感謝しているわ」
カリーヌは申し訳なさそうな顔でいった。
「別にいいわよ。それだけ、楽しませてもらっているからね」
レティシアは答えた。
「今日は簡単にババ抜きしたい」
アルノルトはいった。
「それなら、じじ抜きは?」
僕がいうとみんなが僕を見た。
「何だそれ?」
エトヴィンはいった。
「あれ? 教えませんでしたっけ? ババ抜きのルールが変わったパターンです」
「ん? 初めて聞くぞ」
アルノルトはいった。
「ジョーカーはなしで、一枚普通のカードをわからないように引きます。そうしたら、ペアが一つなくなります。そして、最後まで、隠したカードを持っていたら負けです」
「それって、ババがわからないということか?」
エトヴィンはいった。
「はい。そうなります」
「それは面白そうね。さっそくやりましょう」
レティシアは楽しそうにいった。
いつものようにトランプで遊んですごした。
アドフルとエルトンに迎えられて騎士団の練習場に向かう。
その道中でエルトンにきかれた。
「魔王を倒したのはシオン様と聞きました。確かですか?」
「はい。長距離砲では魔王を倒せませんでした。なので、戦略級の魔法を使いました」
「そうですか。ですが、戦争では誇っていいことです。お間違えないように」
「戦争という状態では歓迎されますが、実態は恐怖でしかないようです。あちらの使者も驚いていました」
「それは了見が狭いだけです。上位種族との戦いではありうる結果です」
エルトンの言葉に僕は疑問を持った。
「見たんですか?」
「……はい。見学させてもらいました」
「よく、騎士団を抜けられましたね」
「それぐらいはできます。そうでなければ、龍の牙をもらえません」
クンツもエルトンも見学していた。なら、他の龍の牙を持つ者も見学していたのだろう。
「龍の牙を持つ者は多いのですか?」
「はい。ですが、今ではこの国中に配られています。それを含めると多すぎます。それに、龍族に認められて持っている者は隠しています。シオン様でも見つけるのは難しいかと」
「力があるからですか?」
「はい。私がいうのはおこがましいですが、力なら持っています。そうでなければ龍族は認めません」
「そうですか。わかりました。……アドフルさんは、王様から牙を下賜されていますよね?」
僕はアドフルを見た。
「はい。いただきました。これで、安心してシオン様の盾になれます」
「なら、安心しました。アドフルさんが敵にならなくていいですから。……敵は父だけで十分です」
僕はおかしくなっていった父を思い出す。それは神霊族か魔神族の干渉によるものらしい。だが、殺す気で来ている。なので、こちらも殺す気でないとやられる。
「父に龍の牙を刺せば変わると思いますか?」
僕はエルトンにきいた。
「……無理と思います。あれだけの干渉をされています。もう、戻れないと思います」
エルトンは答えた。
父は瀕死の状態から助けが入った。それは神霊族にも魔神族にも大事な駒であるということだ。だから、人族の敵でもある。
僕と父の道は決定的に違えたようだ。
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