第171話 龍の牙

 僕と導師は龍の手によって王都に送られた。

 そして、宰相に迎えられた。

 正門を通る時に衛兵に止められたからだ。

「龍に乗って移動するとは聞いてないぞ」

 宰相は怒っていた。

「ええ。クンツ・レギーンの計らいで龍族の島に行ってました」

「何で龍族が関わる?」

「魔王の消滅を確認したからです」

「……なるほど。話は我が家でききたい。いいか?」

「ええ。こちらからもお願いがあります」

 僕と導師は宰相の家に馬車で移動した。


 登城して王への報告になった。

「この度は大義であった」

 王はいった。

「ありがとうございます」

 僕と導師は王の御前でひざを着いてかしこまった。

「それより、問題があるときいた。それは人族の未来に関わると」

「ランプレヒト公爵。説明を頼む」

 宰相がうながした。

「はい。勇者と魔王の戦争は終わっていません。今は保険にされた人物が、次の戦争のために動いています」

「それは誰だ?」

 宰相はいった。

「シオンの元父です」

 貴族たちがざわめいた。

「理由は?」

 宰相はいった。

「龍の牙を持っていないからです。龍の牙は神霊族や魔神族の影響を弾きます。しかし、元父は持っていません。なので、シオンを殺そうとしています。間接的にも勇者と魔王を倒したのですから」

「それは龍の牙を持たないと、神霊族か魔神族に使われるということか?」

「はい。そのために、龍族は力あるものに牙を渡しています。今回も牙を渡されました。龍族を信じるなら、この牙を分けて持つ必要があります」

「その力があるのか?」

 王は導師にきいた。

「はい。龍の気配を感じます。ですが、それ以外の力を感じません。なので、お守りとしての効力しかないようです」

「王よ。どうしますか?」

 宰相は王を見た。

「……牙を持つ者に話をきけ。体調の変化や思想の偏りがなければ、必要な者に持たせよ」

「御意」

 宰相は頭を下げた。

「この度の働きに、ほうびを出す。待っているように」

 王はそういって黙った。

「ありがとうございます」

 導師と共に答えて謁見も間から退席した。


「何で、また出世しているんですか? 伯爵とか、少しは遠慮してください」

 ノーラは泣き言をいいながら、僕の体を採寸していた。

「平民が出世できる最高の爵位だ。お付きのメイドならうれしいだろ?」

 導師は笑った。

「ですが、また、礼服がタンスの肥やしになります。もったいないです」

 ノーラには爵位など関係がないようだ。

「シオン様。おめでとうございます」

 執事のロドリグにいわれた。

「ありがとうございます」

「この家は安泰ですな。公爵家でなくなっても伯爵家として残ります」

「私はまだ死ぬ気はないぞ」

 導師はすねてみせた。

「申し訳ありません。シオン様が養子なので気になっていたのです。それに、主人の死は見たくありません」

「そうだったな。まあ、私は長生きをする予定だ。すぐには死なんよ」

「はい。よろしくお願いします」

 執事はほほ笑んだ。

 執事であるロドリグが導師の家に来たのは、前の主人を失くしたからのようだ。

 ロドリグは顔には出さないが、苦労をしているようだ。

「前々から思っていたんですが、伯爵は何をするんですか? 子爵の時も役目は受けていません」

 僕は導師にきいた。

「今は公爵家の養子だ。成人するまで勉強をするだけでよい。大人になれば、やるべきことがわかるよ」

 導師の言葉には納得できないが、今は子供であるので仕方ないらしい。

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