第120話 手紙
「今日の治療者は三人です。お願いできますか?」
練習場に向かう道でエルトンにいわれた。
「問題ないです。数が減りましたので、増やしても問題ないです」
「そういっていただけると助かります」
エルトンは頭を下げた。
「まあ、欠損を治せるのなら、騎士でも平民でも一緒ですよ」
「シオン様のところには、平民の依頼があるのですか?」
「いえ。教会から依頼されます。貴族ばかりでなく平民に目を向けろと。ですが、貴族だけで手一杯なのです。なので、教会の僧侶を指導する時があります。ただ、僕に習うには不満のようですが」
「名前をいってください。切り捨てます」
エルトンの冗談は殺気が含まれていた。
「まあ、自分の息子のような歳の子供に習いたくないだけですよ。プライドが傷つきますから」
「それをわかっていて教えているんですか?」
「ええ。僕の年齢では仕方ないです」
アドフルとエルトンはため息をついた。
「お優しすぎます。大人のくせしてできないかと、見下すぐらいでいいと思います」
エルトンはいった。
僕はアドフルを見る。
「物分かりが良すぎるのも問題です。相手を突っぱねるのも必要です」
アドフルもエルトンと似た意見だ。
どうやら、僕は甘すぎるようだ。
寝る前の読書をしていると、ふと、カジノに置くのはスロットでなくていいと思った。
パチンコでもスマートボールでもいいだろう。
僕は記憶にあることを思い出して、紙に書いた。だが、内部の機関がわからない。これは致命的だ。だが、ジスランに任せて作ってもらえるかもしれない。
僕は覚えている限りの記憶を書いた。
書いた紙を見ると字が汚いことに気が付いた。前世も字は汚かった。だが、頭が求める速さに手は付いていかない。後で書き直せばいいと考えて保留した。
それより、龍族からもらった魔導書である。内容を読み進めると驚きばかりが増えた。
神経をつなげる方法が、変わった言い回しで書いてあった。この世界には神経などない言葉だ。それが書いてあった。
それだけで驚きであるが、その方法も書いてあった。
前世より医学が進んでいるかもしれなかった。
導師が理解できなかった理由もわかる。これは専門書である。それも医学についてだ。医療に関係していなければ読み解けない。
僕は専門書を閉じてため息をついた。
僕には高度過ぎてついていけないと思ったからだ。だが、一通り目を通すと決めた。まだ、知らない魔法が載っているかもしれないからだ。
一枚の手紙が届いた。それは導師でなく僕に宛ててだった。
僕は送り主の名前は知らない。ルシア・ハーギンという名前は聞いたことがない。
僕は封を開けて中身を見る。それには、きれいな字で言葉が並べられていた。
『やあ、君は魔法に届いたとウワサできいた。それで、魔法を習ってみないか? 私は俗世を捨てているために、人族の未来に干渉はできない。だけど、君になら干渉はできると思う。君の母と一緒に来て欲しい。君なら私のところにたどり着けるはずだ。君にはそれだけの力があるはず。なければ、縁がなかったということだろう。私は待っている。時間なら君が大人になるぐらいならあるからね。失われた魔法使いより』
僕はすぐに導師に相談した。ウソか真実かわからない。だが、僕の本能は正しいと判断していた。
「封筒を見せてくれないか」
僕は手紙の入っていた封筒を導師に渡した。
「住んでいるところがわかるようなことは書いてないな。どうやって、たどり着くと思ったのやら」
導師はため息をつく。
「いたずらだと思うか?」
導師にきかれた。
僕は首を振って否定する。
「この手紙を持ってきた人を探せばいいかと」
「うむ。そうなるな。頼んでいる古文書の翻訳には時間がかかる。私の方で追ってみよう」
導師も差出人が気になるようだ。
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