第70話 今後

 龍に運んでもらって正門に着くと、宰相は今後のことを相談された。

 遺跡の兵器の破壊。ドラゴンブレスとドラゴンシールドの件だ。

 宰相の馬車で宰相の家に行った。そして、応接間で話し込んでいる。

「龍の咆哮といわれているブレスを使えるのは、シオンだけなのか?」

 宰相は確認してきた。

「はい。私はまだ、自分のものにできていません。かなり難しい魔術です」

 導師は答えた。

「天才と呼ばれるランプレヒト公でも難しいのか?」

 宰相は導師を見た。

「天才とは思っていませんが、私には難しいです。動作発動でできるのはシオンしか知りません。私は無詠唱でできる程度です」

 導師は苦い顔をした。

「そうか。それで、詠唱は?」

「ありません。四大属性を同時起動するのです。詠唱化は難しいです」

 やはり、導師でも詠唱化は難しいようだ。僕は詠唱化はすでにあきらめていた。

「時間がかかってもいい。できないか?」

「頑張ってみますが、期待しないでください。四大属性の同時起動。それだけでも難しいです」

 導師の顔には影が差していた。

「わかった。それは無理しなくていい。それより、遺物だ。あれを破壊しなければならない。街で起動したら問題だ。被害は想像できない」

 宰相は深刻そうな顔をした。

「ええ。シオンに破壊してもらいます。もちろん、私も参加します」

 導師にはいつもの勢いはなくなっていた。

「すまないな。その日は数日以内に決める。それまで待ってくれ」

「はい。それより、シオンの実父は捕らえられましたか?」

 導師は顔を上げた。

 その顔は力が戻っていた。

「すまないが、また、失敗した。逃げ足が早いようで騎士には追い切れていない。隣国でも捕らえるように頼んでいるが難しいようだ」

 父は国外逃亡もしているらしい。だが、王のいる王都に顔を出しているのが変だ。

「ですが、調査を打ち切った遺跡の危険な遺物を持ち出しています。裏に貴族がいるのはわかります」

 導師は確信しているようだ。

「そうだな。だが、尻尾を見せない。私でも手を出せないでいる。すまんが辛抱してくれ」

 僕の問題はまだ終わる気配を見せない。

 父にはその強さを正しい方に使って欲しかった。


「クーちゃん。はーい」

 カリーヌは聖霊に魔力を与えていた。

 今はカリーヌの自宅に魔術兼ダンスの練習に訪れていた。

「前みたいに、魔力切れしないでよ。こっちが不安になる顔になっていたわ」

 レティシアはあきれたようにいった。

「大丈夫。今度は倒れないから」

 カリーヌは腕に力を入れて力強いポーズをとった。

「でも、シオンはいつも面倒に巻き込まれているわね。体の前に神経は持つの?」

 レティシアにいわれた。

「まあ、父の件は仕方がないですから。それよりも勇者の件は喜ばれましたよ。厄介者がいなくなったと」

 僕は紅茶を楽しんでいた。この家の紅茶の種類は色々あって飽きない。

「それ聞いた。各国から祝いの手紙が来たそうよ」

 カリーヌは聖霊を相手にしながらいった。

「そうなんですか? 死んでお祝いされるとは勇者もかわいそうですね」

 僕はそういって思い出す。聖霊に簡単に殺された勇者を。

「まあ、人族のガンよ。それに、シオンは迷惑をかけられたのよ。もっと怒ってもいいわよ」

 レティシアは怒っていた。

「でも、死んでしまったので、何もいえません。死人にむち打つのは悪いと思うので」

 僕は紅茶を見つめた。

「そう。まあ、本人がいうなら仕方ないわ。勇者の話はこれでお終いにしましょう」

 レティシアは無理やり話題を終わらせようとした。

「それなんですけど、勇者と反対の魔王はどうなるんですか?」

「それはわからないわ。魔族が決めることだから」

 レティシアでもカリーヌでもわからないらしい。まあ、子供にきかされる重要な話などないのと同じだ。


 午後の練習で城の騎士団の練習場を訪れた。

 アドフルはひざを着いて迎えられた。

「申し訳ありません。敵を逃がしていました。至らぬ私を許してください」

 アドフルの堅苦しさは磨きがかかったようだ。

「父の件は気にしていません。逃げ足の速さは類を見ません。それに、僕も逃がしてしまいました。……僕としては父にその力を正しく使って欲しかったです」

 僕は父を残念に思った。

「申し訳ありません。嫌なことを思い出させました」

 アドフルは頭を上げなかった。

「いえ、相対しなければならない相手です。その時に側にいてくれたので助かりました」

「いえ。私の技量が至らなく悔しいです」

「うん。僕も力が足りないです。一緒に頑張りましょう?」

「はい。今日もよろしくお願いします」

 僕たちは空いている場所に移動する。そして、僕は木の棒を出して構えた。

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