第8話 武器屋にて……

俺はその足でアイボリーン横丁のジッゲーン屋を訪れた。

表向きは奇妙な人体模型や、珍妙な漢方薬が置かれていて。

【健康は人間のダチ公】と錆び付いたブリキの看板に笑顔の人魚と河童が描かれているそんな古びた薬局だ。

中に入ると一人の若い緑色の河童がポケーッと座っていた。今流行りの温故治水(注 有害なドラッグの一種。液体状で魚人や人魚の間に広まっている)を試しているのだろう。

俺は悪戯心がわいてきて驚かせようと思った。

「おい! 河童野郎」

いきなり怒鳴り付けてやった。

「わたっ!」

愛すべき河童野郎マクベルは飛び上がって。ビシャビシャと皿の上に乗せてある温故治水をこぼした。

「な、な、なんだサバノさんじゃないですか。驚いたなぁ大分久しぶりじゃあないですか」

「おい、マクベル。武器が必要だ売ってくれ」

「お安いご用でショットガンがお要りようですかそれともサブマシンガンで?」

「いいや、魔獣筒と銃の弾が必要だ」

「いいですとも、オーツリボルバーの弾で結構ですか?魔獣筒は呪殺ようで?」

「いいや、オーツリボルバーは3箱魔獣筒は守りのヤツで頼む」

「守りのヤツですか、誰かの護衛で?」

「ああ、出来たら青護姫ブルー・クイーンのヤツでお願いできるかなあと呪文の紙とインキもお願いできるかな」

「お安いご用で……」

そう言うとよろよろと薬局の奥に入っていった。

ガサゴソ……ゴンガラ……ガッシャン。

物凄い音が中から響いている。

「おいおい、大丈夫か」

段ボールの箱をひっくり返したり。棚を漁くりかえしている(注 温故治水の中毒症状として整理整頓が出来なくなったりする)

俺も手伝ってやることにした。

ふと足元に落ちている、魔獣筒の底を覗いてみる。

あった。青色の肌の女神が微笑んでいる。

「おい、あったぞ」

「あっどーもすみませんすみません」

「まったく、どうなっているんだ? この店は?コルコル婆さんが見たら泣くぞ」

ピタッと体を止める。

オットット地雷を踏んでしまったか?

「またまた、サバノさんったらー」

俺の皮肉にも動ずることもなく、

マクベルは肘で俺をつついた。

「弾も3箱貰っとくからな」

棚から1ダース入りの、箱を3箱頂戴する。

「1万6千バルクいただきます」

分厚い封筒から、2万バルク紙幣を取り出すとマクベルに渡した。

「ああ、ありがとう」

釣り銭を受け取り紙袋に入ったそれを受け取った。

「ああ、あと聞きましたよ。あなたチョリソーアイスの中毒者になったんですって?」

露骨な嫌悪感を露にして河童野郎が言った。

「ふん、温故治水の中毒者に言われる筋合いはないね」

背を向けた瞬間だった。

「あ、あ、あ、あんたは俺たちにとって勇者みたいな存在だったんだ! それがなんで……」

吃りながら叫ぶ。嗚呼、こいつも馬鹿の類いだったのか、根の葉もない噂の尾鰭のついた、裏世界の暴露本などを読んでそれを間に受けてるってタイプのやつ。

「うるさいぞ! 黙れ!」

俺は頭に血が上ってそう叫んだ。

その時だった。

「うぃーっす!河童野郎いるか?」

縮れ毛にパナマ帽をかぶり浅黒い肌をした。筋肉質の男が入ってきた。



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