第6話

「もぉ~なんでこんなバラバラになっちゃたのよ、ご主人様!」


 遠くの方で、俺の惨状に呆れかえる、聞き慣れた声が聞こえたような気がした。


「ペンネちゃん。ご主人様、どのくらいで直せそ?」

「うーん、これは半日はかかりそうね、サラダ」


 聞き間違いではないようだ。

 この声は、俺の愛する激カワ奴隷エルフのペンネちゃんとサラダちゃんの声だ。


「とりあえず、ちん〇んから直そうぜ!」


 明らかにふざけているこのギャルっぽいしゃべり方の主はパスタちゃん。

 俺はどうやら死の淵から現世に無事?還ってこれたみたいだな。


 しかも彼女たちは、俺の遺体を[ドナルの穴]から回収して店まで連れて帰ってくれたようだ。


 まだ目は開けてないが、匂いや雰囲気でここが店の中だということがなんとなくわかる。


「どのくらいの大きさなの?ご主人様のお◯んちん」

「こんなもんじゃね?」

「パスタちゃん!ご主人様のおTNTNはそんなにおっきくないよぉ……」


 ねぇ、エルフちゃんたち。

 俺が今しゃべれないからって、人の凸を弄ぶ発言はやめてくれないかな。


 しかもサラダちゃん。

 いつの間に俺の聖遺物いちもつのサイズを肉眼で確認してたの?


 お風呂とか覗かれちゃったとか?いやん。


「てかさ、ご主人はほっといても元に戻るんだし、ここに置いておけばよくね?」


 ひどい、パスタちゃん。

 ペンネちゃんは結構優秀なヒーラーなんだから、俺の自己治癒能力を活性化させて早く直してほしい。


「そうね。結局ケーキも買ってこなかったし、むしろ遺体回収しに行った私たちのほうが労働してるんだから、このままでもいいかもね」


 なーおーしーてーくーれー


「もう!二人ともひどいよ!ご主人様は身体がくっついたらすぐにケーキ買いに行ってくれるよ!きっと!絶対!必ず!!」


 サラダちゃんはどうしてもケーキが食べたかったみたい。

 でも身体が元の状態に戻る頃にはもう夜だろうから、今日中ってのは無理だけどね。


 ……えっ?もしかして、夜でもやってる店探して今日中に買って来いってこと?


 それはそれでなかなか鬼畜なお願いだと思いますよ、おじさん。


「ま、どうせ暇だし、じっくり直すとしますかねぇ」


 すまないねぇ、ペンネちゃん。

 この埋め合わせは必ず、近いうちにさせてもらうからね!



◇ ◇ ◇ ◇



5時間後



「ふぅ。五体、問題なし!ありがとぽよね、ペンネちゃん!」

「疲れたぁ!」


 ペンネちゃんが介抱してくれたおかげで、俺の身体は思いのほか早く元に戻った。


 手足や体の動きをチェックし、どこも不足なくしっかり動かせることを確認した。


「あ、ご主人様!お還りなさい!」


 店の仮眠室で治療してもらっていた俺とペンネちゃんのもとに、サラダちゃんが再びやってきた。


「あっ、サラダちゃん。ただいまぽよ!」


 色々あったが、ようやく平穏な日常に戻ることができたようだ。


「もう!ご主人様ったら!冒険者登録行ったっきり全然帰ってこないから、(ケーキの)心配して色々探しちゃったじゃないですかぁ」


 そういえば俺、[ドナルの穴]に行くってこと、彼女たちに言ってなかったな。

 探すの大変だっただろうに……

 苦労かけたね。


「それにしてもよく俺が[ドナルの穴]でってるってわかったぽよね。色々聞きまわって情報集めて探してくれてたぽよか?」

「そりゃあんだけドデカい爆発起きりゃなんか巻き込まれてんじゃねーかって思うのがフツーでしょ」

「パスタちゃん!」


 遅れてパスタちゃんも仮眠室に顔を出してくれた。なんだかんだ、俺のこと心配してくれてたのかな?


 奴隷商冥利につきるね、これは。


 ただ……


 ドデカい大爆発ってのは、もしかして俺が自爆したせいなのか。

 まぁそれしか考えられないか。


「ご主人さ、あの洞窟でいったい何があったんだよ」

「ち、近いぽよ……」


 パスタちゃんが背伸びをしながら、俺との顔面距離を詰めてくる。


 く、くそー!


 俺の苦手なギャルのご尊顔なのに、クッソ可愛いなコイツ。

 思わず顔が赤らんでTNTNの爆発準備が整ってしまいそうになる自分が憎い。


「つかその『ぽよ』って語尾なんなん?流行ってんの?それ」

「ぽよ?」


 まったく意識せずしゃべってたけど、確かになんでさっきからぽよぽよ言ってんだ、俺。狭間のなんとかってところでスライムのしゃべり方、うつっちゃったのかな?


「い、いや。なんか勝手に出てくる……ぽょ」

「爆発の影響?ペンネ!ご主人のこと、もっとしっかり直してやれよ!」

「失礼ね!ちゃんと真面目にやったわよ!」


 ペンネちゃんの治癒は完璧だったよ。


 でも、これマジでなんなんだろうな。

 自分でコントロールできないところにすごい気持ち悪さを感じる。


 ……ステータス見れば、なんかわかるかな。


「[ドナルの穴]で何があったかの説明は後にするぽよね、パスタちゃん」

「?」


 俺は至近距離にいたパスタちゃんから少し離れ、頭の中でステータスオープンと唱えた。


 目の前に、ステータス画面が表示される。


―――――――――――

名前 名無しの鬼頭タカヒロ

職業 スライム ▼

レベル 16


HP 80/80

MP 15/15


腕力   35

体力   29

敏捷  257

精神   33

魔力   21


スキル 

 【突撃】

 【ぶきみな笑み】

―――――――――――


「……職業、スライム??」


 ぽ、ぽよぉぉぉぉぉぉぉ!

 

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