第3話
「はいオッケーです。これで冒険者登録の手続きは終了になります」
少し頭がボヤッとしながらも高速で書類を書きを終え、受付のお姉さんに渡す俺。
案外事務作業は得意なんだよねー。
「っておじさん、ホントに頭大丈夫ですか?血がピュッピュピュッピュ噴き出してますけど……」
「あーだいじょぶだいじょぶ!あたりどころ良かったみたいだし、包帯でも巻いておけば勝手に直るよ!」
受付用紙が汚れないように気を付けて必要事項を書いたつもりだったけど、端々に少し血がついて汚れてしまった。
まぁ俺のDNAが染み込んだから、個人情報としての信ぴょう性は増したでしょ!
結果オーライ!
「包帯ありますけど、あげましょうか?」
「えっ?マジで?助かるぅ!」
「えっと確かこの箱に……あっ!あったあった!はい、どうぞ」
「ありがとう!よっと!」
うおっ!額から短剣抜いたら血が噴水みたいに噴き出してきた!早く包帯を巻いて……よしっ!これでオッケーだ!
「それではステータス画面の確認方法を……」
「あーどうせステータスオープンとか言えば出るんでしょ?」
「ええ、そうですね。それで出ます。なんなら思い浮かべるだけでフツーに出ます」
「へぇそうなんだ。まぁ、大体の事はわかってるから説明はもういいよ。んじゃね」
「ちゃんとヒーラーに頭直してもらってくださいね!おじさん!」
この程度だったらあと1分くらいしたら勝手に血が止まるから問題ないよ。
ヒーラーの治癒はいりません!
「(あのおじさん、ヤバすぎでしょ)」
「(頭に短剣刺さってたよね?)」
「(なんで生きてんだろ。ゾンビ?)」
「(アンデットおじさん?怖い)」
ちょっと。さっきざまぁしてた主人公さんとヒロインさん。ヒソヒソ話してるみたいだけど全部聞こえてますからね!
ゾンビちゃうわ!
でも関わると面倒くさそうなので無視。
俺は早くダンジョン探索行って少し稼いで、可愛いエルフちゃんたちにケーキ買って帰らにゃならんのだ。
夜になる前に帰りたいから、とっとと[ドナルの穴]に向かうとするか!
◇ ◇ ◇ ◇
「案外覚えてるもんだな」
[ドナルの穴]までの道のりはスムーズだった。特にトラブルもなく歩いて15分くらいですぐ着いた。
「中の構造も大体記憶に残っているが……今はとりあえず、入口付近のスライム狩ってレベリングと金稼ぎだな!」
ちなみに俺の武器はさっき額に刺さってた短剣。たぶん主人公さんに倒されたモブおっさんズが所有してたブツだろうけど、案外レア度高めだったので、俺に
いや、パクったワケじゃないし!
慰謝料だよ、慰謝料!
「おっと早速お出ましだな!スライム!」
などと考えながら洞窟内をテクテク進んでいたら、エンカウントした。
目の前にはクリクリお目目とブーメランみたいな口をした青いプリンプリンのスライムさん。ゲームしてる時は可愛らしい見た目だと思っていたが、実物見るとなんか腹立たしい顔面してやがるな。
……この野郎。ニヤニヤしてんじゃねぇぞ。
ぷっちんスライムにしちまうぞ、コラ。
「ニタァ」
アイツ絶対俺のことバカにしてるだろ?ブーメランの口角が明らかに上がったし!最弱モンスターの分際で生意気な!
今痛い目見せてやるからそこで大人しくしてろよ!
……いや待て。落ち着け、俺。
とりあえず先に自分のステータスくらいは確認しておくか。
別に死なないから適当にやっても大丈夫だとは思うが、ケーキ買って帰らにゃならんし、あんまり時間かけるとケーキ屋さん閉まっちゃうもんな。
もしかしたらとんでもない魔力とか腕力とかあるかもわからん。
効率よく行くためにも、まずは自分の能力は把握しとかなきゃな。
「ステータス、オープン!」
最初なんでとりあえず言ってみた。
次からはもう声に出さないのでご了承ください。
おっ!ゲームやってた時と同じ画面だ。
さて、俺の能力値はどんな塩梅かな?
―――――――――――
名前 名無しの鬼頭タカヒロ
職業 奴隷商
レベル 1
HP 0/0
MP 0/0
腕力 5
体力 5
敏捷 2
精神 1
魔力 0
デスP 4/999
スキル
【無死】
―――――――――――
ま、まぁレベル1だしね。こんなもんでしょ、普通。HP0ってのは特殊だけど、俺のスキル考えたら当たり前の話か。死なないし。
てかデスPってなんだろう。こんなステータスは見たことない。裏ステータス?デスっていうくらいだから、死に関係あるのかな?でも4/999って表記は意味わからん。
……まぁ、いいか。
それにしてもMPと魔力も0なのはちょっとショックだなぁ。これ、まったくソッチ系の才能がないってことでしょ?
せっかくゲーム世界来たんだから魔法でドッカンドッカンやりたかったのに。なんか楽しみ半減だな。
いや、転生して来れただけマシか。
俺、普通だったらこの世にいないもんな。
あまり贅沢は言うもんじゃない。
意識があるだけ感謝しなきゃだな!
「この能力値でもスライムくらいなら軽く倒せるだろ。武器は結構いいの持ってるし、サクッと攻撃を当て……」
「うるああぁぁぁぁ!!」
「ぐえっ!」
ボケっとしてたらいきなり凄いスピードで突進を仕掛けてきたスライム。
一瞬のことでまったく反応できず、もろに攻撃を受けてしまった。
「いてててて……。あれ?スライムは?」
ヤツは体当たりしてきたはずななのに、前にいない。アイツ、どこ行きやがった……あ、後ろにいた!なんで?
あれ?それにしてもなんか、胸のあたりがスースーするなぁ……なんだろこれ……
「ごぼぁ!」
血を吐いた。
そして俺、鬼頭タカヒロの胸にはスライム型の穴がボッカリと開いていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます