7. 異世界ほのぼの日記3 271~275
-271 困った女子達-
おにぎりとバランス栄養食を食べているにも関わらず未だに勢いが増していくばかりで母親を待とうとしない姪っ子に叔父が苦戦している中(いや高校生なら待つ事も覚えろよ)、「暴徒の鱗 ビル下店」では何故か口論になりかけていた。第3者である俺の目線からすれば原因は1つしか無いと思われるが、このままでは何となく先が思いやられる。ただ一刻も早くデルアに店へと戻ってきて欲しいと願ってしまったイャンダだった、しかし改めて確認する事でも無いのだが本日デルアは有給休暇なので店に来ることは無い。
イャンダ「好美ちゃん、確かに雇用契約書通りに好美ちゃんの食事はちゃんと用意しているつもりだよ?でも最近に至っては守君が作ってくれているんじゃ無いのかい?ほら、あの子料理上手だし趣味の1つだって言ってたじゃないか。」
店長の言葉には説得力がある、しかし頬を膨らませていたオーナーも引き下がるつもりは無かった。
好美「だって、最近守早いんだもん。」
つい先日から多くの雌豚達が子豚を沢山産みだしたので用意する餌の量が一気に増えて生産が追い付かず、致し方なくこれまでより早い時間に出勤する様になっていた。これに関しては店主のケデールも申し訳なく思っている様だが守自身は承知の上で行っているらしい、ただ(特に夜勤明けの)好美が不満がらなくても良い様にそれなりに料理を用意してから出勤していたみたいだったがやはりこの大食い娘が満足する事は無かった。やはりか・・・、呆れて物も言えないよ。
好美「何よ、夜勤明けの朝ごはんが美味しいのはあんたも知っているでしょ?」
確かに夜に食べる少し豪華な食事も美味しいのだが、好美と同じ夜勤族である俺からすれば仕事後の朝ごはんの方がご馳走の様に思えて仕方が無かった。
イャンダ「だからって、これは食べ過ぎだよ。今自分の目の前に何杯分のお茶碗が積まれていると思っているのさ。」
よく見なくても好美の目の前には店中のお茶碗が高々と積まれていた、でもこれって全部大盛り用の茶碗じゃね?いや・・・、丼じゃね?
イャンダ「余りにもお代わりの回数が多いから1杯の量を増やして極力回数を減らさないとね、他のお客さんにも対応しなきゃだし。」
好美「じゃあ何、私が迷惑を掛けているとでも言いたい訳?」
どう見てもそうだろ、そうでないとこんな言い争いにはならないはずだぞ。
イャンダ「全く・・・、本当ここにガルナスちゃんやメラちゃんがいなくて助かったよ。」
結局はオーナーに甘くなってしまう店長、変態のイャンダの事だから理由はきっと好美が可愛い女の子だからだと思うが彼氏持ちだという事を忘れるなよ?
イャンダ「分かってるよ・・・、はぁ~・・・。」
好美「分かったら良いのよ、ほら、おかわり。」
イャンダ「結構盛ってたのにもう食ったの?嘘だろ、新しく炊かなきゃな・・・。」
さて、先程噂に出て来たもう1人の大食いであるガルナスなのだが母・光が弁当を届けるまでに叔父の持っていたバランス栄養食や父親に渡された大きなお握りを食べ尽くしてしまった様だ。相も変わらずの大食いっぷりに吸血鬼達は頭を悩ませていた、流石は育ち盛りと言いたいが食費について心配してしまう。まぁ、今に始まった事では無いのだが。
光「ほら、お弁当持って来たから早く行きなさい。」
ガルナス「あと2個だけ、あと2個だけお握り頂戴!!」
光「あんたね、自分が今まで何個食べたか分かってんの?お父さんが店用に炊いてるご飯を全部食べ尽くすつもり?」
ガルナス「ああ、それ私の夢だね。」
光「もう、しょうも無い事言って無いで早く行きなさい!!」
いや光さん、どうやら本当に小学校と中学校の卒業文集にそう書いてるみたいです。
光「あの子ったら・・・、恥ずかしいったらありゃしないわ。そうだそうだ、デルア君ごめんね。来てすぐに面倒くさい事を押し付けちゃって。」
デルア「いえいえ、平和な朝だなと思ってたんで構いませんよ。」
光「それで?今日はどうしたの?ナルなら店の方に戻っちゃったよ?」
デルア「えっと・・・、俺って何で来たんでしたっけ。」
光「いや、私に聞かれても困るんだけど。」
-272 平和な朝?いや、平和では無い朝?-
当初の来訪目的を忘れかけていたデルアは義姉のお陰でやっと思い出しかけたみたいだがバス停へ向けて走り去るガルナスを見て呆然と立ちすくしていた際にまた忘れそうになっていた、つい先程まで大量のお握りとバランス栄養食を食べていたのにも関わらず物凄い勢いで遠くへと消えてしまったので消化不良でお腹を壊さないかと心配してしまった様だ。
デルア「お義姉さん・・・、これいつもですか?」
光「お恥ずかしながら、もう少しだけ早起きしてくれたらマシなんだけどね。もしかしてだけど、私のより吸血鬼(ナルリス)の遺伝子が強いのかな。」
デルア「いや、そんな事無いと思いますよ。実際俺も仕事の日はいつも早起きですけど別に平気ですので、それに俺達の先祖が夜行性だったのは500年以上前の事ですから。」
光「じゃあ前日の晩、遅くまで友達と電話している事が原因かしらね。」
デルア「間違いなくそれだと思います、それでなんですけど・・・。」
やっと当初の目的へと向かおうとし始めたデルア、ここまで何話分掛かったよ・・・。
光「それに関しても(多分)うちの娘の責任です、後でお茶でも飲んでって下さい。」
あらま、これはご丁寧にどうも。お気遣い頂きありがとうございます。
デルア「それでなんですけどお義姉さん、良かったらいつも野菜を作っておられる畑を見せて頂けませんか?」
光「別に私は構わないけどうちのはただの家庭菜園だよ?大した事はしてないよ?」
デルア「何を仰いますやら、兄がこの場所に拘る位に惚れ惚れしている野菜がどうやって出来ているのかを見せて頂けたらと思いましてね。」
光「そうなの、じゃあナルには用事は無しって事?」
デルア「いや・・・、全くもって無いと言えば嘘になるんですけど宜しければ収穫のお手伝いもさせて頂けませんか?」
光「それは助かるけど、折角の休みなのに良いの?」
デルア「勿論です、この為に有休を取った様な物ですから。」
光「あら嬉しい、じゃあお言葉に甘えようかな。ちょっと着替えて来るから待っててね。」
そう言うと光は少し微笑みながら一旦家の中へと入って行った、暫くしてジャージ姿となった義姉は収穫用の籠と鎌を持って現れた。ただ本人が気づかない位静かに後ろから近付く怪しい影が・・・(大抵この時出て来るのは「あの人」なんだが)。
デルア「あの・・・、おはようございます、渚さん。」
やっぱりか・・・。
光「えっ?!お母さん!!いつの間に後ろにいたのよ!!」
渚「ごめんって、一本漬けと冷やし中華の具にする胡瓜を収穫するって聞いたから便乗しようかなと思ってね。あらデル君、おはよう。こんな所で珍しいじゃないか。」
改めて当初の目的を話したデルア、その目的に渚も賛成した様だ。
渚「あんた良い所に目を付けたね、この土地は天候と日当たりは良かったんだが実は土壌が悪くてね。光が一から作り直したんだ、それに基本無農薬で管理機器の電力として使用する電気の発電方法まで拘っているんだよ。凄い娘さね、私には到底真似出来ないよ。」
デルア「ハハハ・・・、(小声)でしょうね。」
渚「デル君、聞こえてるよ?」
毎日の様に屋台での営業を終えた時の渚と会っている時の事を思い出したデルアは半分冗談、そして半分本音で返事をした(勿論小声の部分)。
光「朝から賑やかで良いじゃない、じゃあ行こうか。」
3人は明るい笑い声を溢れさせながら光拘りの家庭菜園へと向かった。
そんな中、好美の所有するビルの真下にあるバス停留所横に設置された「コノミーマート」出張所ではダッシュで到着したばかりのガルナスが息を切らしながら最後に残っていたお握りを購入していた(いや、まだ食うのかよ)。そして窓越しにその光景を見かけた好美の食の勢いが未だに収まらない「暴徒の鱗 ビル下店」ではイャンダが何となく違和感を覚えていた。
イャンダ「好美ちゃん、気の所為だったら良いんだけどさっきから食べるペース上がってない?本当に1人で食べてるの?」
好美「いや、私1人だけど・・・。」
少し離れた調理場で2人の会話を聞いていた女性は違和感では無く嫌な予感がしていた。
-273 仲の良い姉妹-
朝早くにも関わらず調理場に高く積まれていた皿をひたすらに洗い続けていたある女性はどう考えても好美1人の仕業ではない勢いで未だに積まれ続ける丼を見ながら頬を掻いているイャンダを見て嫌な予感がしたので店長のいる方へと近づいて来た、先程までずっと皿洗いをしていたにも関わらず何故かタオルを使わなくても手がもう既に乾いてしまっていた。
イャンダ「おっと、ごめんねピューちゃん。ナイトの仕事で疲れているはずなのに皿洗いして貰っちゃって、無理しなくても良いからね。」
店長とオーナーの会話をラジオ感覚で聞いていたのはこの店のナイトマネージャーであるマー・・・。
ピューア「ニクシーだっての!!作者の癖にあんたまでちゃんと私の事を覚えてくれていないの?!」
すいません、ちゃんと覚えているんですけど一応必要な件かなと思いまして。大変失礼致しました、では改めて。
この店のナイトマネージャーであるニクシー・ピューアとイャンダは店が開店した頃以上に親しい仲となっていた、互いの事も「イャン」「ピューちゃん」と呼び合う位だ。
イャンダ「それにしても大丈夫?眠くなっていないの?」
ピューア「大丈夫よイャン、好きでやってる事だから気にしないで。それにまだ呑んでいないから眠気なんて来ていないもん。」
イャンダ「そう言ってくれるなら助かるけど、無理そうだったらいつでも言ってね?いつ上がってくれても構わないから。」
イャンダの放った「上がって」が「仕事から上がって」とピューアの部屋のある「上の階に上がって」の両方に聞こえたのは俺だけだろうか、まぁそんなしょうも無い事を気にしても仕方が無いか。
ピューア「ありがとう、でも私がいなかったら誰が満腹になった好美ちゃんを部屋まで運ぶっての?」
毎朝床に倒れてしまう位に食いまくる好美を夜勤明けの度に15階の家まで運んでいるニクシー、ここ最近の定番となってしまっているがそれなら一層守にいっぱい作って貰うか自分で料理したらどうなんだよ。
ピューア「あんたもありがとうね、でもこれも好きでしている事だから気にしないで。それにしてもよく食べるね、もう殆どの炊飯器が空なんだけど。」
こう言っていたピューアの顔が若干赤くなっている様に見えたのは気のせいだろうか、もしかして金髪が少し青みがかっているからその分赤く見えるのか。
それは良いとして明らかに米の進むペースが速すぎる、やはりピューアの「嫌な予感」が当たったのか?
ピューア「好美ちゃん、ちょっと聞きたいんだけど私に『状態異常無効』って『付与』出来る?最近腰痛が酷くって。」
ピューア自身はこの国での生活が長いが、やはり人魚族自体は陸上より水中での生活に慣れている為に魔力で尾鰭を足に変化させている時間が長いと腰に来る様だ。
好美「良いよ、と言うかもう『付与』したよ?」
口いっぱいに白飯を入れながら能力を『付与』した好美、こんなお行儀の悪い子が店のオーナーだなんて思えない。
ピューア「ありがとう、助かる。あら本当に腰の痛みが無くなったわ、それで?『透明化』してるけど遅刻しかけのあんたは痛くない訳?」
時計を確認してから誰もいないはずの好美の隣の席の方をギロリと睨みつけるピューア、まさかな・・・。
声「お姉ちゃんにはバレるか、腰は大丈夫だしバスもあるから遅刻しないって。」
ピューア「やっぱりメラだったの、ちゃんとご飯は用意していたでしょ?」
メラ「だって足りないんだもん、お腹空いちゃうんだもん。」
種族関係なく大食いは同じ事しか考えないのか、いや今心配するべきはそこではないか。
ピューア「あんたね、このまま行くと万引きと同じになっちゃうよ。今日は払っとくけど。」
-274 好美、いや女は強し-
万引きになる寸前で代金を姉(ニクシー)に支払ってもらった妹(マーメイド)は「暴徒の鱗 ビル下店」のガラス窓から見えるバス停留所より本日最後に出る登校用のバスへと乗る為に勢いよく店を出て駆けだして行った、その背中をため息ながらに見送ったニクシーは少し落ち着きを取り戻す為に魔力保冷庫から取り出した烏龍茶をグラスに注いで一気に煽った。
ピューア「もう・・・、あの子ったら朝は落ち着いて行ける様にいつも早めに家を出なさいって言ってるんだけどね。」
好美「でもさ、ああやって楽しそうに過ごせるのも子供のうちだけじゃ無いの?私は今のメラちゃんが何となく羨ましかったけどな、また学生時代に戻れたらなって今でも思っちゃうもん。」
ピューア「あんたって見た目に寄らずだけど偶に年寄り臭い事言うよね、本当は何歳なの?」
好美「失礼な事を言わないでよ、私は見た目と変わらず中身もずっと25歳だもん(※改めて言うべきだとは思っていませんがこの世界に来た転生者達は歳を取らない様になっています、本当に羨ましい限りだわ)。」
頬を膨らませながらもまだ来ぬ満腹を目指して食を進める好美の下にイャンダが新たな料理を運んで来た、ただ1人で持ちきれなかったのか後ろでピューアに手伝って貰っている様だ。
イャンダ「本当にごめんね、もし今日料理教室があるって言うならいつ上がってくれても良いからね。」
ピューア「大丈夫よ、今日は生徒の方々の都合が悪いみたいだから休みにしたから気にしないで。それに好きでやっているの、イャンは遠慮しなくてもいいから。」
イャンダ「本当にそう言ってくれると助かるよ、それにしても好美ちゃんはまだ食べるつもりなのかい?もう店の材料の在庫が無くなっちゃうよ。」
と言っても一応拉麵屋として店を出しているのでスープや麺などと言ったラーメンを出す為に必要な最小限の在庫は押さえてはいる、しかし他店舗と違ってこの店舗においては好美の拘りで「中華居酒屋」も兼ねているので現状の様に酒の肴(ご飯のおかず)として出す料理の材料が全くないと正直言って店が成り立たない。
好美「大丈夫よ、ちゃんと営業出来るようにするから。」
イャンダはいち早く買い出しへと向かいたかったが好美からすればそんな事お構いなしの様だ、店長は何となく嫌な予感がしたがオーナーは本人なりに「仕入れ」を行っていた様なので心配ご無用との事。
イャンダ「本当に困るんだよ、材料が無い状態で折角来てくれたお客さん達に何を出せば良いか分からないじゃないか。」
好美「なぁんだ、そんな事心配してたの?」
イャンダ「「なぁんだ」じゃ無いよ、予約のお客さんもいるんだから失礼な事出来ないでしょ。オーナーだったらそう言う事も把握してもらわないと。」
好美「気にしなくても良いって言ってんじゃん、イャンダは心配性だな・・・。」
そう言うと好美は仕方なさそうに席から立ち上がり『アイテムボックス』へと手を突っ込んだ、今更分かった事なのだが空間の中と周辺はほぼ無重力の状態なので重さ関係なく物は取り出せる様だ。
好美「よいしょっと、これで良い?」
好美は買って来たポテチを出す感覚で黒毛和牛を1頭丸々取り出した、食材が手に入ったのは良いが調理はどうするつもりなのだろうか。
イャンダ「うちは焼き肉屋じゃ無いんだぞ、それに肉ばかりじゃなくて野菜も必要でしょ。」
好美「その言葉はさ・・・、あれを見てから言ってくんない?」
イャンダは若干ぞっとしながら好美が指差した方向にある調理場奥の小部屋の方を見た、室内にはキャベツや白菜の入った段ボールが高く積まれていた。ただ顔を蒼くしていたのはイャンダだけではない様だ、店長が肩を落としていると朝露店で野菜を売るあの肉屋の店主から『念話』が・・・。
ケデール(念話)「好美ちゃん、もう店に在庫が無いし殆どが原価ギリだから商売にならないよ。その上持ち込んだ黒毛和牛を捌いてくれだなんて・・・、はぁ・・・。」
好美(念話)「何、文句あんの?一昨日の事奥さんにバラすよ?」
ケデール(念話)「そ、それだけはちょっと・・・、分かったから!!」
イャンダ(念話)「成程・・・、そう言う事か。」
奥さんという言葉を出されると従わざるを得ない肉屋店主、と言うかまた負けたんけ。
-275 家庭菜園、いや節約への拘り-
今に始まった事では無いのだが商売の場においても「鬼の好美」が絶好調となっている事を改めて実感していたイャンダは、もしもオーナーがこれから先もずっとこの調子だったらデルアはどうなってしまうのだろうかと心配してしまっていた。しかしデルアだってちゃんとした大人、そういった事はしっかりとわきまえて(と言うより覚悟して)いると信じていたい。そんな中、自分が子供の様に心配されているとはこれっぽっちも思っていないデルアは義姉の家庭菜園に入った瞬間から驚きの連続だった。
デルア「さっき義姉さんはただの家庭菜園だって言ってましたけど滅茶苦茶広いじゃないですか、これはもう農家が世話をしている本格的な畑ですよ。これだけ広いと水やりとそれに伴う水道代が物凄いんじゃないですか?」
いちから全て自分で考えて作って行った際にどんどん広くなってしまった光の家庭菜園の広さは近所でも評判だった、近所の子供達が公園代わりに走り回れる位だからデルアがこう聞きたくなっても仕方が無い。
光「それが全くもって大丈夫なのよ、水はすぐ傍の川から引いているし各々の菜園に穴を開けたパイプを巡らせているから川の流れの勢いで水やりが出来るの。別に私は何もしなくても水やりが終わっちゃう訳、どう?」
デルア「「どう?」って言われましてもね・・・、パイプなどの設備を備えるだけでも大変そうなんですけど。工賃はいくらだったんです?」
光「自分でやったから無料に決まってんじゃない、パイプも近くの建設業者や水道の修理業者から要らない物をもらったから一銭もかかってないよ。」
光は簡単そうに言っているがそこまでしてでも家庭菜園をしたかったのだろうか、正直パン屋の仕事を辞めて本格的に農家として生活すべきなのではと思ってしまう。
デルア「凄すぎますよ、こんなのなかなか貰えないでしょ。」
実際はデルアの言う通りだった、光はパイプ等の廃材を貰うため建設業者や水道の修理業者へと向かった際にそこの社長や営業の担当者にお得意のプロレス技をかけて脅していた様だ。今更ながらだが、どうか死者が出ていません様にと祈っておこう。
光「人聞きの悪い事を言わないでよ、お金が無いって言ったら皆素直にくれたんだから。」
いや、きっと社長達はフォール寸前となり意識が朦朧としていた状態で返事させたと思われる。まぁ、これ以上は触れない方が身のためかと思ってしまうのは俺だけだろうか。とはいえ自給自足の為の家庭菜園への費用までも節約してしまうとは、まだこの家庭菜園には光の節約テクが隠れていそうだ。
デルア「そう言えば発電機もご自分で作られたと渚さんにお聞きしましたが。」
光「そうなの、川から水を引く水路にプロペラとモーターを設置して水力発電としているの。それとあれを見てくれる?」
光が指差した自宅の屋根の上にも大きなプロペラが設置されていた。
デルア「あれってもしかして風力発電ですか?」
光「そう、この辺りはよく風が吹くからね。利用しなきゃ損じゃない?」
デルアは口を大きく開けて驚愕していたが光が設置した発電機はこれだけでは無い。
光「ねぇ、あのプロペラの真下も見てくれる?」
デルア「あれは・・・、ソーラー発電ですか?」
光「うん、うちの家とナルの店の屋根全体にソーラーパネルを設置して眩しく輝く太陽の光も利用しようと思ってね。」
義姉の節約に対する気合の入れようの凄さにまだ開いた口が塞がらないデルア、とてもでは無いが真似できそうにない。
光「家の電気も基本的にこの発電機での物を使っているから電気代は殆ど掛からないって訳、雨の日以外はほぼタダって考えてくれても良いかもね。」
デルア「凄すぎますね、この環境で育ったこのトマトも美味そうです。」
光と共に真っ赤に育ったトマトを収穫しながらまじまじと眺めるデルア。
光「良かったら食べてみて、農薬を使って無いから川の水で洗うだけで食べれるよ。」
言われた通りに川に流れる綺麗で冷たい水でトマトを洗って1口齧ったデルア。
デルア「嘘でしょ?!甘くて美味いです!!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます