7. 異世界ほのぼの日記3 251~255


-251 再び相まみえた憎しみあう親子-


 改めて早急な事件の解決とそれによる黒龍族の尊厳の回復を誓った捜査班達(なのか?)はどんな事でも良いから少しでも真実に近づける様に手がかりをかき集めたかった、一先ず希は先程ヌラルが語っていた凄惨な過去により流れていた涙を拭いながら捜査に協力すると自ら宣言した混沌龍に気になっていた質問をしてみる事に。


ヌラル「すみません、暗い話なんかしちゃって。」


 ただでさえピリついていた牢獄の中にしんみりとした雰囲気を持ち込んでしまった事を反省するヌラル、しかしクァーデン家への長年の怒りや恨みを思い出したティアマットの辛さは現場にいる全員の中でダントツの1番と言えるだろう。


希「お気になさらないで下さい、ただ恐れ入りますが少々質問させて頂いても宜しいでしょうか。」


 未だに先程の非礼を引きずっている希は相手が話しやすい様に言葉を選んでいた。


ヌラル「勿論です、どの様な事でしょうか。」

希「助かります、ハイラさん、恐れ入りますがあのカメラをお持ち頂けませんでしょうか?」


 ネフェテルサ王国警察署長に依頼された強制収容所長は安全な場所にて保管していた例の監視カメラが入った金庫(確かコイムだったっけか?)を持参してヌラルから見える様に開けた。


希「ありがとうございます。ヌラルさん、ハッキリとお聞きしますがこの監視カメラに魔力を込めたのは貴女ですか?」

ヌラル「いえ、私ではありません。確かこの魔力は私達に義弘の脱獄を手伝えと言って来た男に指示された私の友人の物だったと思います。」

希「因みにそのご友人は?」

ヌラル「私の母や同じ村で住んでいた黒龍族の者達と共に義弘の下で囚われています、私は犯人達の隙を見てかろうじて逃げて来ましたが嫌そうにしていた友人の表情を覚えていますので間違いありません。」

希「うーん・・・、という事はカメラに魔力が込められる場面を目の当たりにしたという事ですね?」

ヌラル「勿論です、目の前で行われていましたから。」


 再び『虚偽判定』を行っていた結愛により嘘ではない事が証明されたヌラルの返答を聞いて顎に手をやりながら考え始めた、何があったと言うのだろうか。


ヌラル「どうされました?」

希「いや・・・、分からないんですよ。どうやってこの難攻不落な強制収容所に侵入して「このカメラ」に魔力を込めたと言うんでしょうか。」


 するとハイラから重要なヒントと言える質問が。


ハイラ「ヌラルさん、もしかしてなんですけどこことは別の場所からカメラに魔力を込めたのではないですか?」

希「別の場所と・・・、仰いますと?」

ハイラ「ここの施設の監視カメラは事務所にある大型モニターを中心に独自ネットワークで全てが繋がっているんですよ、施設内のカメラは勿論、そして城門横の係員室の物もね。」

希「そうなんですか?それで・・・、いかがでしょうか?こちらとは別の場所で?」


 希が優しく質問するとヌラルは首を縦に振った。


ヌラル「所長さんが仰ってた通りです、別の者の魔力で係員室にいた方を眠らせた後に友人がこの魔法をそこから流し込んでいました。」

結愛「成程・・・、それにしてもどうして?」


 結愛が頭を悩ませていると牢獄の小窓の向こうから聞き覚えのある「あの声」が、それを聞いた瞬間に社長は相手への怒りにより一気に表情を歪ませた。


声「邪魔な『魔術阻害』を強制収容所外に放出しながらお前たちがカメラやそこのバハムートに気を取られている内に次の作戦を遂行させる為に決まっているじゃ無いか、そんな事も分からないのか。相変わらずだな、その調子で社長が務まるのかこの「馬鹿娘」が。」

結愛「くぅっ・・・、俺の事を「馬鹿娘」と呼ぶのはあの「くそ親父」しかいねぇ・・・。」


 全員が小窓から城門の方向へと覗き込むとそこには脱獄班である「くそ親父」の貝塚義弘の姿が、前社長はすっかり魔力と以前の姿を取り戻してしまっていた。


義弘「結愛、今日こそ貝塚財閥を、いや私の全財産(すべて)を返して貰おうか。」


-252 禁じられた行為-


 幼少時代から受験を意識した教育を徹底されていたのでその頃からずっと憎んでいた父親の出現に怒りを隠せなくなってしまっている結愛の横で高校時代に共に戦った守も義弘に向けて睨みを利かせていた、決して大きくはない窓から見えない場所にいたはずなのだが今までずっと手錠により制限されていた魔力が大放出しだした義弘には僅かな気配で気付かれていた様だ。


義弘「馬鹿娘の横にいるのは宝田 守だな?貴様にも散々苦労させられた、聞けば俺を社長の座から引き摺り下ろしやがった筆頭株主の宝田真希子の息子と言うじゃないか。真希子を出せ、奴の持ち株を全て奪い取って再び貝塚財閥を私の物にしてやる。」

結愛「また「馬鹿娘」と呼びやがって・・・、それに守や真希子さんには何の罪もねぇだろ!!俺の恩人たちを巻き込むのはやめろ!!」


 まさかこの異世界で繰り広げられるとは思われなかった口喧嘩に希や好美達がおずおずとしていた中、転生者達のいた牢獄にダンラルタ王国警察の巡査たちが駆け込んで来た。


巡査「これは林田署長、ご足労ありがとうございます。」

希「構わないよ、それより一緒に義弘の行方を追っていたプニ君は何処にいるのかね?」

巡査「警部なら用事を済ませてからこちらに来るとお聞きしています、少し時間が掛かるかも知れないとも仰っていました。」

希「ほう、そうか・・・。ご丁寧にどうもありがとう。」

巡査「何を仰いますやら、例には及びません。」


 これは後で分かった事なのだがダンラルタ王国警察に配属された者は種族関係なく徹底した言語教育を受けるようになっている様だ、まさかこれは以前プニが少しチャラかったからなのだろうか。

 そんな中、城門の方向から相当大きな爆発音がした。


義弘「ハハハ・・・、この私を長年に渡りこんなチンケな場所に閉じ込めやがって。これからこの収容所を全てこの城門の様にしてやろうか。」


 どうやら義弘による「次の作戦」とはこのネルパオン強制収容所を崩壊させて今まで自分を苦しめて来た奴らに復讐する事だった、だがしかし・・・。


声「おい、貝塚義弘さんよ。まさかあんたの次の作戦ってのはコイツの事か?」

希「こ・・・、この声は・・・。」


 声の方向へと転生者達が振り向くとそこでは先程会話に出て来たダンラルタ王国警察の警部であるレイブンのプニが高らかに笑っていた、本人の足元には既に破壊された何らかの物体が何個も何個も転がっていた。


プニ「残念だったな、俺は今警部だが以前は爆弾処理班に所属していたんだ。爆弾自体ずっと触って無かったから上手く出来るか不安だったが身に付いていた技術は体が覚えている物だな、ご覧の通り全て解除させて貰ったぜ。」

義弘「くぅっ・・・、調子に乗りやがって・・・!!」


 勝ち誇った顔をするプニ、ただ今すべきは即座に状況を報告する事では無いだろうか。


希「プニ君、大活躍してくれた事は感謝しているがこれはどう言う事だね!!」

プニ「申し訳ありません、すぐ近くの海上で逮捕寸前まで追い込んだのですが上陸した際にいらっしゃった王城の魔法班の方々や係員の方を人質に取られてしまったので迂闊に手を出せなかったんです。」


 爆弾処理班のリーダーをしていた頃とは打って変ったかの様に丁寧な口調をしているプニ、いじりたいのは山々だが今はそれ所ではない。ただプニの言葉により希は未だに危機が去った訳では無い事を改めて実感した、因みに魔法班の者達は防御魔法で逃れた様だ。


希「そうだ、あそこには魔法班の方々が・・・!!義弘、これ以上罪を重ねるな!!頼むから人質を解放して俺の話を聞いてくれ!!」

義弘「馬鹿者、私が他人を信用して言う事を聞くとでも思ったか。爆弾が駄目ならこれで私の実力を証明して見せようではないか!!」


 そう言うと空に向かって高らかに両手を延ばしてハイラと同様に巨大な黒球を出現させた、それを見て誰より驚いているのは他でも無いリンガルス警部だった。


リンガルス「あの野郎・・・、署長・・・、こうなってしまったのは迂闊にも彼に魔法を教えた私の責任です。私の責任です、私が何とかします!!」

希「リンガルス!!言いたい事は分かるが3国においての戦闘行為は重罪だ、友のお前を犯罪者にしたくない、お願いだからやめてくれ!!」

リンガルス「頼む、やらせてくれ!!奴の魔力を永遠に封じ込めてやる!!」


-253 魔法で芽生えたの・・・?-


 リンガルスは義弘の魔の手からこの強制収容所を、いや世界を救いたいという気持ちでいっぱいだったので周りが良く見えていなかった。


リンガルス「以前もそうだった、こうなるなんて全く思って無かった私のミスだ!!」

希「言いたい事は分かる、ただお前にも大切な人がいるだろう!!お前が逮捕された時、残された人達はどうなるか分かっているのか!!」

リンガルス「希・・・、残念だが私はずっと独り者だ。私が罪を犯したとしても誰にも迷惑なんて掛からないよ、私は平気だからやらせてくれ!!」


 友を守るか、それとも世界を守るかという究極の選択を迫られる希。そんな中、リンガルスに戦闘行為を行わせる訳にはいかないと言い出した女性がまた1名。


女性「ハラル!!お願いだからやめて!!貴方を失いたくないの、代わりに私がやるからやめて!!」

リンガルス「どうして私のファーストネームを・・・、いや、今はそんな事どうでも良い。」


 女性の思いは届かなかった様で、リンガルスは義弘と同様に黒球を出現させた。しかし、どこかおかしい・・・。


希「ちょっと待てリンガルス、義弘の物に比べてお前のは一回り小さくないか?」

リンガルス「仕方ないだろ、今はこれが精一杯なんだ。こんなんでも数撃てば何とかなるだろう!!」


 どうやら強制収容所無いから抜けきっていない『魔術阻害』がリンガルスの魔法を邪魔している様だ、これではどう考えても義弘に勝てそうにない。そんなリンガルスに再び女性の声が。


女性「ほら、あの頃から殆ど休まずにいたから疲労が溜まっているんだよ!!お願いだから無理しないで!!」

リンガルス「だからどうして私のファーストネームや過去を知っているんだ・・・、ただこれは私がやらないといけないんだよ!!」

女性「覚えていないの?!私の事を、魔学校時代から一緒だった私の事を・・・!!離れ離れになって言えていなかったけど私はずっと・・・、ハラルが好きだったの!!お願い!!ハラルの事を守らせてよ!!」


 リンガルス改めハラルが声の方向を振り向くとそこにいたのは先程強大な魔力を放出させた黒髪のエルフ、強制収容所長のハイラだった(※ここからはリンガルスの事を「ハラル」と表記します)!!


希「ハイラさん!!お気持ちは分かります、でも戦闘行為は許されない事です!!貴女も分かっているでしょう、今すべきなのは防御に徹する事です!!」


 ハラルの隣で魔力を放出しようとするハイラの必死に掴んで引き止める希、ただその希を止めたのは友であるデカルトだった。


デカルト「待つんだ、のっち!!今ハラルさんやハイラさんがしようとしているのは正当防衛だ、ダンラルタ国王の名の下に私が許可しよう!!お2人、責任は私が取るので撃って下さい!!義弘を捕えるのです!!」

希「デカルト・・・、良いんだな・・・。」


 正当防衛とは言え、戦闘行為を許可した王はその座から降ろされかねないと言われている。ただデカルトはもう既に覚悟していた様だ。


デカルト「構わないさ、私は昔から王の座などどうでも良かったんだ。それに今何より大切にすべきはこの世界と国民だ、私の王の座位で済むのならいくらでも明け渡してやるさ。」

希「デカルト・・・。」


 友の思いの強さを知った希は国王の言葉に涙した、城門の側で未だに魔法班が防御魔法を使っているがそれで防ぎきれるかは分からない。それでも国王は選んだ、「何を犠牲にしても絶対に国民を守る」と。


デカルト「お2人、やっちゃって下さい!!」


 デカルトの指示で黒球を放とうとした2人、しかしそんな2人をノームが再び止めた。


ノーム「待って!!折角姉と再会出来た私はどうなるのよ!!リンガルス警部、貴方が一緒だからって私はこの「正当防衛」に賛成できない!!」

ハイラ「ノーム止めないで、私は良いの!!ハラルの隣にいるだけで幸せなの!!」

ハラル「私も同じです、これからの人生を賭けてハイラさんを守ります!!」


-254 親子喧嘩の先に-


 ハイラによる先程の説得が利いたのか、どうやらハラルも学生時代を思い出してハイラに恋してしまった様だ。幸せになって欲しいと言う気持ちが無いと言えば嘘になるが、そのままだと行先は留置所だぞ?


デカルト「私が認めているんです、2人に何の罪もありません!!いくら作者でもそんな事言うのは駄目でしょうが!!」


 すみません、駄目とは分かっていたんですが何となくイジらずにはいれなかった物で。話の進行に戻ります・・・。

 国王の許可を得た2人はより一層魔力を強めて黒球を大きくした、ここまで行ってしまうともう元には戻れない。


ハイラ「まさかこれが2人での初めての共同作業になるとはね。」

ハラル「おいおい、くそデカい演出での告白のすぐ後にプロポーズを無しにして結婚式ってか、昔のお前に比べれば面白い冗談じゃねぇか。」

ハイラ「留置所で結婚式位は開いてくれると思うから良いんじゃない?」

ハラル「フッ・・・、そりゃ楽しみだ。」


 死ぬ間際の様に冗談をかまし合う2人、きっと学生時代からずっとこうだったに違いない。そんな中、2人の魔力放出量は最大まで上がったらしく・・・。


ハラル「そろそろ行くか・・・。」

ハイラ「そう・・・、だね・・・。」


 楽し気な話も終わったのか、巨大な黒球を義弘へとぶつける準備をし始めた2人。その間何故かずっと待っていた様で・・・。


義弘「お2人さん、話は終わったかな?そろそろ行くぞ!!この大賢者(アーク・ワイズマン)の魔力を思い知るが良い!!」


 2人と義弘が同時に魔力を放出した、放たれた強大な黒球は互いを押し込み合った後強烈な音と共に大々的に爆発した。


デカルト「皆さん、私の後ろに逃げて!!」


 爆発による強烈な光が辺りを眩く照らす、国王は牢獄にいた全員を守るために自らの体を張った。

 爆発が止んでから数秒後、そこには悲惨な姿で倒れるコッカトリスが1体・・・。


希「デカルト・・・、デカルトぉー・・・!!」


 目を開かないコッカトリスの頬に署長の涙が数滴・・・、すると・・・。


デカルト「馬鹿か、勝手に国王を殺すんじゃねぇ・・・。まだ・・・、お前と酒を吞んで無いのに・・・、死ねるかよ・・・。」


 そう、傷だらけになったが命に別状はなかったのだ。


希「お前こそ馬鹿じゃないか、本当に死ぬかと思ったぞ。何より大切にしている国民を置いて行くだなんて国王失格になる様な事をするな。」

デカルト「ハハハ・・・、今の俺は国王じゃ無くてただのコッカトリスさ。これは俺が許可した結果だからな・・・、好美ちゃん、お願いがあるのですが・・・。」


 デカルトがすぐ近くにいた好美に小声で何かをお願いすると、好美は守を連れて牢獄を外へと向かい走り出した。2人だけでは不安だと思った結愛も後からついて行った。


守「好美、デカルトさんは何て・・・?」

好美「「救護班を魔法班のいる場所へと向かわせて欲しい」ってさ、本当に最後の最後まで民思いなんだから。」

結愛「そうだな・・・、あのおっさんならやりかねねぇな・・・。」


 久々に笑顔を見せた結愛、しかし本当の闘いはこれからだ。

 3人が強制収容所の外に出ると先に現場に到着していた救護班が魔法班の治療を行っていた、その横で土埃に塗れながら義弘が再び現れた。


義弘「痛ぅ(つぅ)・・・、流石に今のは喰らっちまったな・・・。」

結愛「義弘・・・、俺は一生お前の事を許すつもりも無いし会社も渡さねぇ。俺にも国民を守る義務がある、そして大切な生徒達がいる。全力でお前の事を止めてやる!!」

義弘「馬鹿娘が面白い事を言う様になったな、良いだろう、かかって来い!!」


-255 父と娘-


 海の方からやんわりと吹いた風が土埃を消し去った時も結愛は変わる事無くずっと父親を睨んでいた、長年の間憎んでいたので瞬時にその感情が消え去る事があるとは思えない。守と好美は水を差してはいけないと少し離れた所で様子を見る事にしたが大賢者の義弘にネクロマンサーの結愛が太刀打ち出来るのかが問題だ、その上長年魔法を使用してない無かった「くそ親父」には魔力が有り余っているので対抗できるか不安で仕方ない。

 ただ「友」を守りたいという気持ちが強かった好美はその場で立ち上がって父親との喧嘩に決着を付けようとするネクロマンサーに向かって声を荒げた、こんな事は初めてなのでは無いだろうか。


好美「おいコラ、結愛!!いくらお前でも戦闘行為が禁じられているのは知っているだろうが!!あんたを失いたくねぇんだよ、「戦わない」という選択は出来ねぇのかよ!!」

結愛「この期に及んでそんな事考えれねぇよ、折角このくそ親父を消し炭に出来るチャンスなんだぞ!!止めんな馬鹿野郎!!」

好美「馬鹿野郎はどっちだコラ!!長年憎んでいたとしてもな、お前にとってはたった1人の父親だろうがよ!!」

結愛「良いんだよ!!こんな奴とはとっくに縁を切ってんだから気にするかよ!!」


 とても女性同士の会話とは思えない口喧嘩に守や魔法班は手も足も出そうにない状況であった、そんな中で結愛達に待ちわびた瞬間が訪れた様だ。


デカルト(念話)「皆さん、聞こえますか・・・?」

結愛(念話)「おっさん・・・、ど・・・、どうして俺は今『念話』が使えてんだ?」

好美(念話)「私も・・・、使えてる・・・。」

守(念話)「俺も・・・。」


 いやいや、それより国王の事を「おっさん」と呼んだ結愛の事を放っといて良いのかよ。


デカルト(念話)「一時的にですが『魔術阻害』を解除する様に魔法班に伝えました。結愛ちゃん、好美ちゃん、そして守君。私から貴女方にも許可を出しますのでこの世界を・・・、いや私の大切な友を救ってください。」


 あれ、無視ですか・・・。まぁ、空気を読んで今は引っ込んでおこうかな・・・。


結愛(念話)「当たり前だろ、おっさん!!くそ親父をやっつけたらビール奢れよな!!」


 またかよ・・・、本当にこの世界はどうなってんだ・・・。


好美(念話)「ずるい!!私も吞みたい!!」


 いや、お前さっきまで散々呑んでいただろ・・・。


デカルト(念話)「相も変わらずだな・・・、分かった・・・、王城にあるビールを好きなだけ呑んでくれて良いから頼む・・・。」

結愛(念話)「何?!隠し持ってたのか?!よっしゃー!!俄然やる気が出て来たぜ!!」


 実は以前、結愛が視察でデカルトのいる王城へと足を運んだ際は全くもってビールの在庫を見つける事が出来なかったそうだ。きっと見つかれば呑まれてしまうと思ったデカルト直々の指示だったと思われるが今は何も言わない方が身のためだろうか。

 そんな中、義弘は落ち着いた表情で呟いた。


義弘「馬鹿娘よ、お前は変わったな。」

結愛「何だよ、俺はずっとこうだろうが。」

義弘「いや、私の知っている結愛は今の様ではなかったよ。綺麗な洋服に身を包んだ可憐な姿で周囲に関係なく真面目に受験勉強に打ち込む、正に「お嬢様」と言える姿だった。なのに今は何だ、ずっと前から思っていたがどうしてスーツ姿な上にそんな口調なのだ。私の知っている結愛は何処に行ってしまったと言うんだ、あの頃のお前は何処に行ってしまったと言うんだ!!」

結愛「あのな、この際ハッキリ言わせて貰うけど俺はずっと我慢してたんだよ!!自分でも吐き気がするあの姿が嫌だったんだよ!!お前に強制されていたお嬢様口調や洋服にウンザリしていたんだ!!これが本来の俺の姿だ、誰にも口出しなんかさせるもんか!!ましてや罪を犯して貝塚財閥や貝塚学園の評判を著しく下げやがったお前に一番言われたくねぇ、長年かけてようやく信頼も回復して来たんだから一切口出しなんかさせるもんか!!分かったら大人しく牢獄に戻りやがれ!!」

義弘「そうか・・・、だったらこの私を牢獄に入れてみろ、この馬鹿娘が!!」


 義弘はこう吐き捨てると再び黒球を出現させた、ただ結愛との決着をつける為か先程の物より貼るかに大きい物となっていた。


義弘「縁を切ったならもう構うまい、無理矢理にでもこの世界ごと奪い取るまでだ!!」

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