7. 異世界ほのぼの日記3 246~250
-246 「理由」が欲しい-
どうして所長が城門等の施設を壊す程にソフトキャンディーへと執着しているのかがやっと分かったノームは改めて本格的な捜査(?)を開始する事にした、取り敢えず今できる事と言えば唯一の手掛かりを持つバハムートに話を聞く事だろうか。
結愛「それにしてもガーガイ、どうしてうちの学内で捕まる事があったんだよ、一応はセキュリティ対策は万全にしていたはずだぞ。」
貝塚学園にある全ての入り口となる各門のすぐ横には必ずと言って良いほどに警備員室が設置されていた、その上バルファイ王国警察の警部であるリンガルス入学センター長指導の下で各所に設置された監視カメラにより対策は完璧だったはずだ。流石に「無理矢理」で行われた連れ去り事件なら周囲から目立つので監視カメラが逃す訳が無いと思われるのだがどうしてなのだろうか、まぁ俺個人的には何となく想像したくないのだが・・・。
そんな中、所長と副所長が懐に仕込んでいたインカムから声がしたのでハイラはムクルの方へと向いて2回頷いた。
ハイラ「こちらクランデルです、どうされました?」
2人の様子から見るとどうやら今のアクションは「自分が対応する」という意味のサインだった様だ、因みに余談だが離れている場所においては互いが所持している腕時計のボタンを押してサインを送るらしい。一方がボタンを押すともう一方の腕時計が振動する、その回数により相手にサインが送られる様だ。因みに短めの2回だと「自分が対応する」、長めの1回だと「そちらに頼みたい」と言う意味との事。
係員(無線)「所長、貝塚光明さん宛にお電話なのですがいかが致しましょうか。」
ハイラ「分かりました、すぐ近くに本人がおられますのですぐ伝えます。」
係員(無線)「宜しくお願い致します。」
インカムを懐にしまったハイラが光明に電話の事を伝えると、副社長は再び所長と共に所長室へと向かって電話の受話器を上げた。
光明「大変お待たせいたしました、貝塚です。」
相手が誰であれ、必ずと言う程丁寧な対応を心がけていた光明。そこは「流石副所長」と言える、正直言って社長にも見習ってほしいと思うのだが。
結愛「ハークション!!あれ?風邪引いたかな・・・。」
希「結愛ちゃん、こんな暑い所でそんなスーツ着ているからじゃないの?もっと涼し気な格好は持って無いの?」
結愛「いや・・・、持って無いって言えば嘘になるんだけどさ・・・。」
仕事の場と言えど、普段楽しく呑みに行く仲間だから気兼ねなく話している2人。
そんな中、光明が出た電話の相手は先程の事務局長だった様だ。
事務局長(電話)「副理事長、突然の電話申し訳ありません。」
光明「それは構わないけど、どうかしたのかい?」
事務局長(電話)「先程の清掃班の者についてついさっき思い出した事がありまして。」
何故か購入してまでも黒の制服に拘った上に2週間前から無断欠勤をしていると聞いた清掃班、これ以上不審な点がまだあると言うのだろうか。
光明「どんな事でも構わないよ、教えてくれ。」
事務局長は例の清掃班について思い出した事を光明に伝えた、すると光明は深くため息を吐いて答えた。
光明「はぁ・・・、時に人間とは意味が分からない生き物だなと嘆きたくなるよ。分かった、参考にさせて貰おう。ありがとうね。」
事務局長(電話)「あの・・・、こんな情報でお役に立てるでしょうか。」
事務局長自身大した事を伝えたつもりは全く無かったので不安で仕方なかったが光明はどんな些細な情報でも重要な手掛かりと思っていたので何とかお礼がしたかった様だ。
光明「何を言っているんだい、本当に助かったよ。今度酒でも奢らせてくれ。」
事務局長(電話)「大袈裟ですよ、でも有難く頂戴いたします。」
重大(?)な手がかりを手に入れた光明は再びハイラと牢獄へと向かった、早くこの情報を妻へと伝えねばという思いから少し小走りになっていた。丁度その頃・・・。
結愛「それにしてもその清掃員、やたらとガーガイについて詳しく無いか?」
-247 新たな情報-
光明が電話を取りに向かってからも結愛は依然として研究生の話を聞いていた、完璧なはずの自社のセキュリティが簡単に破られてたまるものかという思いでいっぱいだった。
結愛「ガーガイ、その清掃員にどうやって声をかけられたかは思い出せるか?」
ガーガイ「えっと・・・、「ここでは経験できない様な凄い事をしてやるからついて来い」と言われたので堪らなくなってつい・・・。」
どうやらこのバハムートが連れ去られた理由は相も変わらずと言うよりもうお馴染みとなってしまった本人の「ドMな性格」であった、何となく嫌な予感はしていたがやっぱりか・・・。
結愛「お前な、誰にでも自分の本性を丸出しにしてんじゃねぇよ。恥ずかしくねぇのか?」
諦めろ結愛、ガーガイと同様の方々は「恥ずかしい」と言う気持ちも顔を赤くする位に喜んでしまうんだからな。
結愛「確かにそうだな・・・、今に始まった事じゃないからもうツッコむ気も起らねぇ。」
ガーガイ「あの・・・、本当にすみません・・・。」
おいこら、本当にそう思っているのか?まさかと思うが「自分は今辱めを受けている」という意味で喜んでいる訳じゃないよな、顔が赤いんだが違うよな。
ガーガイ「え?そんな訳無いじゃないですか、この期に及んで。」
そうか・・・、じゃあもうこれ以上は何も聞かないでおくわ・・・。はぁ・・・、取り敢えず話を進めるぞ。
ただ結愛自身には不審な点が浮上していた様で顎に手を当ててずっと考え込んでいた。
結愛「それにしてもその清掃員、やたらとガーガイについて詳しく無いか?」
確かに学生と話す事が無い学内の清掃員が、しかも入ったばかりの「ド」新人がどうしてガーガイについてやたらと詳しいのだろうか。
理事長がそんな疑問を抱えていると息を切らしながら小走りで牢獄へと戻ってきた副理事長が結愛の肩を軽く叩いた。
光明「結愛・・・、あの・・・、清掃員の・・・、情・・・、報・・・、掴・・・、んだ・・・。」
結愛「分かった、分かったから落ち着けよ。」
今にも倒れそうな旦那を落ち着かせるために最善を尽くそうとする妻、それにしてもどうして急に能力が使えなくなったのだろうかが今最大の疑問だ。
結愛「守、悪いが水か何か持ってないか?ご覧の有り様だから頼むよ。」
正直藁にも縋る様な気持ちだった、ただ守はこういう時の為にもしっかりと対策を施していた様で。
守「水で良いなら。」
そう言うと『アイテムボックス』から水の入ったペットボトルを取り出した、因みにだが本来は好美が酒を吞み過ぎた時に渡すつもりで備えていた物だけど今はそんな事などどうでも良かった。ペットボトルを受け取った結愛は勢いよく蓋を開けて光明に飲ませた、ただ大量の水を急激に飲み込んだために光明は落ち着きを取り戻すどころか噎せてしまった様だ。
光明「ゲホっ・・・、ゲホっ・・・。お前な、助かったけどもうちょっと加減って物を知れよ。」
結愛「それ所じゃないだろ、心配したんだぞ。」
光明「走って来ただけで死ぬわけじゃあるまいし・・・、まぁ感謝するよ。」
結愛「テメェな、それが助けた奴に対する態度かよ!!」
光明の態度に対し機嫌を悪くした結愛が「今までの努力を返せや」と言わんばかりに勢いよく背中を叩いたので光明は大声で叫んでしまった。
光明「ぎゃぁぁぁあああああ!!」
これは完璧に光明が悪い、今のは誰だって傷つく。
結愛「それで?例の清掃員がどうかしたのか?」
光明「それがな、別の場所の掃除を指示されても無視して同じ場所に行ってたらしいんだ。」
-248 能力-
夫の言葉を受けた結愛は顎に手を添えて考え込んでいた、まさかと思うが例の清掃班は研究生(バハムート)のストーカーだったのだろうか。
結愛「ガーガイ、1つ聞いて良いか?」
質問攻めをした後なので少し申し訳ないと思いながら声をかける結愛。
ガーガイ「改まった感じですけど、どうかされました?」
何となく中学高校時代によくある「進路相談」の様な雰囲気で声をかけられたので少し嫌な気持ちになりながら答えるガーガイ。
結愛「いや、大した事じゃ無いんだけどさ。」
他所を向いて人差し指で頬をかきながら会話を続ける結愛、まるで呑み会の後に気になった異性をお持ち帰りしようとしている奴みたいだ。
ガーガイ「何ですか、そんなに引っ張らないで良いじゃないですか。」
結愛、今の状況では誰もが「ガーガイが正論を言っている」と答えると思うから早く会話を進めた方が良いんじゃ無いのか?
結愛「分かってるよ・・・、いや1つ気になった気になった事があるんだけどさ。」
ガーガイ「だから何なんですか。」
結愛「ガーガイは例の清掃班と知り合いだったりするのか?」
本当に大した事の無い様な質問だ、しかし捜査を続ける上では必要不可欠だったのだろうか。
ガーガイ「いや、初対面でした。」
結愛「お前な・・・、「知らない人について行っちゃ駄目」って母ちゃんや小学校の先生に言われなかったのかよ。」
現実世界でもよく言われる事がまさかこの異世界で通じる様になるとは、やはりこの世界が本当に日本へと大分近づいている事を実感できる。
ガーガイ「すいません、「凄い事」と言われてつい・・・。」
ドMだからってそれなりの判断は出来ると思っていたんだが今更そんな事を言っても仕方が無い様な気がする。
結愛「取り敢えず知り合いでは無く全然知らない人物だったという事が分かっただけでも良いよ、守にコーラでも出して貰ってくれ。」
結愛は守の事を「何でも屋」みたいに言っているが、現時点で守の『アイテムボックス』には水ぐらいしか飲み物が入っていない。
結愛「守、「コーラあるよな」?」
守「ねぇよ、水しか持ってねぇって知ってるだろ?」
結愛「「あるよな」?」
何となく嫌な予感がした守、これは「無いなら買って来い」というサインだと捉えてしまったがこの離島には店が無いのでコーラなんて手に入らない。
一先ず守は「仕方ない」と思いながら『作成』でコーラを作った、最初からそうすれば良いのでは無いかと誰もが思ってしまうがまだそこまで能力を使いこなせていないと言える守を頼っても良いのだろうかと疑念を抱いてしまう転生者達。
好美「何よあんた、私の彼氏を悪く言わないでよ。」
いや、そんなつもりは無いんだけど事実じゃん?
結愛「俺達は今能力が使えなかったり制限されているんだぞ、藁にも縋りたいし猫の手も借りたいんだから勘弁してくれよ。」
まぁネクロマンサーのあんたが言うなら仕方が無いよな、それにしてもどうしてあんた達は能力を制限されているんだよ。と言うか何でさっきから少しずつエロくなってんだよ。
結愛「それが分かれば苦労しねぇよ、今だから能力のありがたみを知れるんだろうな。」
好美「そうよ、能力が使えたらすぐに貝塚義弘を確保出来てるはずだもん。」
-249 いつ何時でも礼を欠くべきではない-
好美が頬を膨らませる中で理事長は研究生に重要な質問を投げかける事にした、結愛自身の頭に浮かぶ質問は先程以上に重要でそれに対する回答によっては下手すれば自らが最も大切にしている学生を警察に突き出す事になるが本心ではその様な事はしたくなかった。
結愛「ガーガイ、もう1つ質問させてくれないか?」
ガーガイ「さっきから何なんですか、大切な事を聞いて来ているのは分かりますがしつこいですよ。」
結愛「すまねぇ、悪いとは思っているんだが重要な事なんだ。頼むから協力してくれ、今一番の手掛かりを掴んでいるのはお前なんだよ。」
確かに唯一犯人と思しき人物と関わったと思われるのは目の前のバハムートだけだ、しかし誰にも疲れというものがやって来るのでしつこくするのはどうかと思ってしまう。ただ俺から頼むから協力してやってくれよ、な?
ガーガイ「致し方ないですね・・・、どうされました?」
結愛「いや・・・、ちょっとした事なんだ。本心ではなかったとは言え、お前一応さっきまでティアマットだっただろ?あの監視カメラにかけられた魔力はお前自身の物なのかな・・・、ってさ。」
クォーツ「待てよ、それに関しては俺とエリューがガーガイの魔力じゃ無いかって言ったじゃ無いか。」
一見魔力は全て同じの物に思われるがサプリメントの効果などと同じで(と言って良いのか分からないが)個人差が多少はあるみたいなので各々の魔力には特徴があるからガーガイと全くもって同じ魔力を放つ者がいるとは考えづらい、まさかと思うがコピー能力でも持っている者がいるとでも言うのだろうか。いや待て・・・、転生者達が持つ『複製』の能力だったら・・・。
クォーツ「それは絶対にねぇ、きっとあんた達はさっき言ってた重岡とか言う奴が『複製』を使ってガーガイの魔力を再現したと思ったかも知れんが俺のくそ親父が言ってた通りそいつには何の能力も与えてはいないみたいだからあり得ねぇ。」
だったら「誰が」「何の為に」義弘の脱獄を手伝ったと言うのだろうか、わざわざ難攻不落と言われたこのネルパオン強制収容所に赴いてまで何をしようと・・・。
そんな事を考えていると窓の外からドスの利いた声がした、先程全員がガーガイを見かけた場所と全く同じだったので何となく既視感があったが今は別問題。
声「私達だ、私達が貝塚義弘を開放したのだ。」
希「どうやら真犯人のお出ましの様ですね、油断大敵なので様子を見ていましょうか。」
第一本人の言葉が本当かどうか分からない、一先ず全員は窓から外を眺めてみる事に。すると海上に1体の混沌龍(ティアマット)が。
ティアマット「私の名はヌラル・ブラッディ。かの昔私達ティアマットを含めた黒龍(ブラックドラゴン)族はダンラルタ王国にあるクァーデン家によりあらぬ噂を流されて地位や名誉、そして尊厳など全てを奪われ3国より追放された。外界の山奥にある小さな村で周囲の迫害を受けながらひっそりと過ごして数百年が経ったつい先日、ある男が我々の村を訪れてこう言ったのだ。「俺の復讐に協力するならお前らの平和を取り戻すと約束してやろう」と、そいつに未来を託した私達は死を覚悟して協力した。その結果どうだ、本意では無いにも関わらず私達はただ義弘の脱獄に加担した犯罪者扱いだ。それに我々を騙して義弘の脱獄を促した男も行方が分からない、私達は騙されたのだ。先程も言った通りだが本意では無くとも貝塚義弘を脱獄させてしまったのは私達だ、本当に申し訳ない。」
結愛は辛うじて使う事が出来た『虚偽判定』でヌラルというティアマットの発言をこっそりと判定してみた、どうやら目の前の混沌龍は嘘を言っていないらしい。
希「事情は分かった、場合によってはヌラル君たちの罪を軽く出来るかも知れないから詳しく聞かせてくれないか?」
ヌラル「勿論だ、我々の名誉回復の為ならどんな事でも協力する。」
希「分かった、ただ本当に我々はヌラル君の事を信用して良いかがまだ分からないからこっちに来て証明してくれないか?男に二言は無いだろう?」
ヌラル「お安い御用だ、すぐに『人化』するからすまないが少し離れていてくれるか?ただあんた、さっきから気になっていたがいくら何でも失礼じゃ無いか?」
希「へ?」
希達がその場から少し動くとヌラルは小窓を経由して牢獄内へと入って来て『人化』した、どうやらそれなりの対応は最低でもガーガイより出来る様なので安心できる。
ヌラル「おい、何処をどう見ればこの私が男だと言うんだ。」
希「す・・・、すんません・・・。こんなに綺麗な女性とは思いませんでした・・・。」
-250 嘘により奪われた全て-
突然だがこれは数百年も前の事、当時ヌラルを含めた黒龍(ブラックドラゴン)族は他種族の龍達と何も変わる事も無くダンラルタ王国にある大きな山の一角で平和に暮らしていた。先程のヌラルの様に『人化』をして麓の村や他の2国の住民とも交流を持っていた上に積極的に農業に励んでいたりもしていたので周囲の住民に向けて採れたての野菜を販売したりもしていた、実はヌラルの両親もそうだった。
そんなある日、ヌラルの母親が娘を連れていつも通り山の麓にある村でその日の朝採れたばかりの野菜を販売しに行った時の事。普段なら母親が荷物を降ろした瞬間に村の住民達がこぞってやって来ていたのだが、その日は誰も来ることは無かった。それどころか母親を避ける様に皆家に向かって走り出していたので不思議に思った母親は偶然側を通りかかった夫人に声をかけてみる事にした。
母親「あんた、いつも通り今朝採れたての人参を持って来たよ。あんたこれが入ったスープが好きだって言ってたじゃ無いか、いかがだい?」
夫人「・・・。」
ギラリと睨みを利かせた後周囲の住民と同様に母親を避ける様に去って行ってしまった夫人、つい泣き出してしまいそうになっていた母親に向かって大きな空き瓶が投げられた。ギリギリ寸前で避ける事が出来た母親が空き瓶の来た方向へと振り向くとそこにはその村の村長が、再び空き瓶を投げつけようとした村長は母親に向かって罵声を浴びせた。
村長「出て行け、この毒の塊め!!その野菜も闇魔術で育てた野菜も毒で満たされているんだろう、食ったら死ぬんだ!!命が惜しいから出て行け!!」
黒龍族が闇魔術に精通していることは確かな事実だが母親は農業に励んでいた時には魔法など一切使っていなかった、それどころか無農薬に拘って肥料や土も自然界にある物を使用して村の住民の健康を気遣った野菜作りを行っていたという。
母親「そんな事無いよ!!それとも今まで私が作った野菜を食べて死んだ人がいたって言うのかい?!」
村長「フン!!お前の言葉なんか聞きたくないわ!!そこにある穢れたゴミを早く持って出て行け!!この見た目からして穢れた一族め!!穢れた血め!!」
余りにも酷い言葉を浴びせられた母親は娘を抱え逃げる様に当時黒龍族が住んでいた村へと走って戻った、ただ母親が戻った時にはもう・・・。
母親「村が・・・、無い・・・。」
そう、村が何らかの原因で全て焼け野原へと変貌してしまっていたのだ。親子は急いで駆けて行ったが勿論の様にヌラル達が住んでいた家も焼けて無くなってしまっていた。
ヌラル(当時)「父ちゃん!!父ちゃん!!」
娘は他の住民と共に村や畑を守るために残っていた父親を必死に探した、しかし何よりも家族や仲間を大切にしていたヌラルが涙ながらに見つけ出した頃には既に父親は息絶えていた。
ヌラル(当時)「父ちゃん、父ちゃーん!!」
すると泣き叫ぶヌラルの遠くで貴族と思われる男たちが声高らかに笑っていた。
貴族「ハハハハハ!!この闇魔術で穢れたクソ一族め!!今日からここは我がクァーデン家の土地だ!!分かったらお前らはこの国・・・、いやこの世界から出て行け!!」
勿論この土地は古の頃から黒龍族達の物だった、後から聞いた話だが当時から傍若無人で自己中心的なクァーデン家が広大なゴルフ場を建設する用の土地を得るのに邪魔だったという黒龍族の村を焼き消す為に麓の村の村長に賄賂を手渡してあらぬ噂を流していた様だ。運悪くその噂が3国全てに広まってしまい、現在に至るらしい。まさかクァーデン家の性格の悪さが先祖から代々受け継がれていた物とは、その上「噂が回るのは早い」と言うがその事を何よりも実感する事になるとは正直言って俺は想像も出来なかった。今言えるとしたら、これがただの脱獄事件では無くなって来たという事だ。
ヌラル「兎に角悔しかった・・・、あの遊び人共に俺達は全てを奪われたんだ!!その上まだ小さかった俺にとって父ちゃんは・・・、父ちゃんは・・・!!」
辛い過去を語ったヌラルは震えながらその場で泣いていた、それを見た希は目の前の女性への非礼を詫びる為に、そして黒龍族の名誉回復の為に全力を尽くすと誓った。
希「それはさぞお辛かったでしょう、私共で良ければ協力をさせて下さい。」
ヌラル「署長さん・・・、こんな俺で良かったらこの事件の解決に尽力させて下さい。」
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