7. 異世界ほのぼの日記3 241~245


-241 仕事の上でだが叶ってしまった夢(?)-


 学内で起こった事件を改めて整理したかった結愛はガーガイの話を落ち着いて聞く事にした、どの様な事でも焦るのは良くないので当然の心理と言って良いと思うのは俺だけだろうか。一先ず何も分からないままなのは嫌なので2人の会話を覗いてみますかね。


結愛「おいてめぇ、趣味が悪いぞ。女性同士でしか出来ない話かも知れないのに覗き見るとはどういうつもりなんだ!!」

エリュー「そうだよ、俺も同じ女として結愛さんに賛成するぞ!!」


 待てよ、今は事件の捜査を最優先にするべきだろ。俺は男女関係なく皆で協力すべきだと思うのだが、あんた達はそうじゃ無いのか?


結愛「だからって恥じらいって物があるだろうが!!」


 いや、別にそこまでの事を求めてはいないだろうがよ。兎に角今は事件について今話せる事をガーガイから聞くべきだろう?


結愛「確かにそうだよな、何かすまねぇ。」


 構わないさ、俺の事は気にしなくても良いからガーガイに当時の事を聞いてみるべきじゃないのか?


ガーガイ「良いんですか?俺の話なんて参考になるんですかね?」

結愛「ガーガイ、今はお前の話が一番の手掛かりになるかも知れないんだから頼むよ。」


 この世界の住民を守ろうと必死だった結愛はどんな些細な情報でも必要としていた、兎に角事件解決に少しでも協力をしたかったのだ。いくら憎い人物だとしても自らの父親がしでかした事件に対する責任を取ろうとしていた、これは社長・・・、いや娘にとって当然の義務だと思っていたのだ。


結愛「それで・・・、ガーガイはどの様にして連れて行かれたんだ?思い出せるだけで良いから話してくれないか?」

ガーガイ「えっとですね・・・。」


 少し恥ずかしそうにしているガーガイ、何となく嫌な予感がするのだが。


結愛「何だよ、顔が赤いぞ。」

ガーガイ「だって・・・、恥ずかしいじゃないですか。」


 あの・・・、頼むから「R18」指定にならない様にお願いしたいんですけど。


ガーガイ「そこまでじゃねぇよ、ただあのおっさんが言って来た言葉を思い出すと・・・。」


 嫌だなぁ・・・、また「あの性格」が出始めたよ。

 すると丁度結愛が改めて状況を聞こうとした時、ハイラと共に所長室に行っていた光明が戻ってきた。


光明「結愛、ちょっと耳に挟んでおいて欲しい事があるんだが。」

結愛「どうした、珍しく真面目な顔じゃねぇかよ。」


 おい結愛、今はボケをかましている場合じゃ無いんだぞ。真面目にやれ!!


光明「そうだぞ、ネフェテルサ王国警察の人も来るみたいだし、それとこれを見てくれ。」


 何気なく大事な事を言った様な気がする光明は先程の電話で事務局長から聞き出した事を細かく記したメモを手渡した。


結愛「何だよ・・・!!・・・って、えっ?!どう言う事だ!!」


 清掃班の雇用についての全てを事務局長に任せていた為か、どうやら結愛は黒の制服を着ていた男について全くもって知らなかった様だ。


結愛「どう見てもこの清掃員が怪しいよな、ただ俺達はそいつと直接関わった訳じゃ無いからやはりガーガイに話を聞かない事には捜査が進まない。」

光明「そうだな、取り敢えず連れていかれた時の状況を教え・・・、ってあれ?所長さん、どうされました?」


 光明がふとハイラの方向を見ると、所長はある女性の姿を見て驚きを隠せない様子。


女性「所長さん・・・、いや「お姉ちゃん」・・・、会いたかった・・・!!」


-242 妹の存在-


 未だに捜査が進んでいるかどうかがはっきり言って微妙と言える中、感動の(?)再会を迎えたエルフ達は涙ながらに抱き合おうとしていたが俺は何となく違和感を覚えていた。よく見ればハイラが先程会った女性は髪の色がピンク、しかし記憶が正しければ所長の妹であるノーム(ドーラ)・クランデル・林田は金髪だったはず・・・。見ない間に本人が「染めた」と言うなら話は別になって来るかも知れないが何となくおかしい。


ハイラ「「お姉ちゃん」ってあんた待ってよ、私の記憶が正しかったら私の事を「お姉ちゃん」なんて呼んで無かったじゃない!!」


 確かにハイラが言っている事は正しい、今1番欲しいのは結愛が先程使っていた『虚偽判定』だった様な気がする。そう言えば結愛は今能力が使えないはずなのにどうしてそれだけ使えるのだろうかと疑問に思ってしまうが誰も不審に思わないのだろうか。


好美「結愛、あのピンクの髪の人はハイラさんの妹さんなの?」

結愛「いや・・・、所長さんの様子から見たら違う人みたいだ。ただギリギリ使える『虚偽判定』でも本人が嘘を言っていると出てはいないからな、もしかしたら昔一緒に遊んでいた近所の友達なのかも知れないな」


 きっと今すべきことはエルフ達の様子を優しい目で見守る事だろう、どうせ捜査なんて進む訳が無いんだから。


ハイラ「何よあんた、私達が捜査の邪魔をしているっての?」

女性「そうよ、私達は100年振りの再会を喜んでいるだけじゃない。」


 感動の再会を邪魔したくないのは俺も、そしてきっと守も一緒だよ?でも今は何を優先させるべきか分かるだろ?特にあんたらは警察なんだから特にじゃないのか?


守「お・・・、おい!!俺を巻き込むな!!」


 あの・・・、再会したというそちらの女性についてご紹介をお願い出来ませんかね?


ハイラ「この子は警察学校時代の後輩でラクラと言います、学校以外でもアルバイト等でも一緒だった事が多かったので殆ど姉妹の様なものだったんですが最近は音沙汰無しだったんで何処にいるのかも分からなかったんです。まさかネフェテルサ王国警察に所属していたとは、私も歳を取るもんですね。」

ラクラ「お姉ちゃん、私刑事になったよ。見直してくれた?」

ハイラ「あんたが刑事だって?!世も末だわ・・・。」


 何となく意味が深そうな一言だが今はそれを探っている場合では無いと言わんばかりに「ゴホン!!」という咳払いが・・・。


男性「お2人さん、そろそろ良いかね?貝塚財閥の社長さんをお待たせしたら悪いだろう。」

ラクラ「林田署長・・・、ごめんなさい・・・。」


 おいおい、そこは「申し訳ありません。」だろ・・・、ってあれ?


希「良いんだよ、ラクラ君だったら何でも許しちゃう。」


 まるで自分の娘の様にラクラを可愛がっている林田署長は目の前で涙目になっているエルフの事なら何でも許してしまう様になっていたらしい、この光景をネスタやノームが見たらどう言うのだろうか(何となく修羅場になるっぽいので想像はしたくない)・・・、と思ったらあらまぁ・・・。


女性「署長、いやお義父さん!!帰ったら覚悟しときなさいよ!!」


 えっ・・・、嘘・・・。まさか・・・?まじですか・・・?


希「こらノーム君、仕事中は「お義父さん」はやめなさいと何度言えば分かるのかね。」

ノーム「悪いのはどっちなのよ、今日という今日はお義母さんに言いつけるからね!!覚悟していなさいよ!!」


 義理とはいえど親子同士の喧嘩は付き物だ、ましてや日本と変わらないこの世界では尚更なのだろうなと思わされる。種族の違いはやはり関係の無い事。そんな中・・・。


ハイラ「もしかしてドーラ・・・、ドーラなの・・・?」

ノーム「お爺ちゃんから聞いていたけど貴女が私のお姉ちゃんね、ずっと前から会いたいと思っていたのよ。こんな形になるとは思っていなかったけど会えて嬉しい・・・。」

ハイラ「ドーラ・・・、生きてたー!!」

ノーム「お姉ちゃん、勝手に私を殺さないでくれる?!」


-243 国王の心の広さ-


 守にはネルパオン強制収容所に来てから不可解な事があった、管轄外であるバルファイ王国警察のリンガルス警部や先程やって来たネフェテルサ王国警察者達が動いているというのに管轄となっているダンラルタ王国警察の者が全くもって見当たらない。警部であるレイブンのプニが少しチャラい性格である事は光明から聞いていたので知っていたのだが、国民を守る警察として仕事はしっかりとこなす者達だと聞いているのでサボっているとは思いたくはない。

 そんな転生者達の思いを表情から汲んだのか、横から優しい男性の声がしてきた。何処か聞き覚えのある優しくて、腰の低い人物の声・・・。


男性「あの・・・、どうかされましたか?」

守「い・・・、いや・・・。少し考え事をしていただけなんです、お気遣いありがとうございます。」

男性「あの・・・、私で宜しければお伺い致しますが。」


 ずっと俯いて考え込んでいた為に男性の顔を全くもって見ていなかった守、本人からすれば少しだけだが気持ちが晴れたからそれなりに感謝していたので男性の気持ちだけ一先ず受け取っておこうとしていたのだが・・・。


守「いや、大丈夫です。お気持ちだけ頂いておきます、お気遣いありがとうございます。」


 ただ男性の顔を見て驚いていたのはすぐ傍にいた光明もだったのだが、少し離れた場所にいたはずの好美だったので・・・。


好美「守!!何馬鹿な事を言ってんのよ!!」

守「えっ・・・?」


 急いで近づいて来た好美に無理矢理頭を上げさせられた守は先程から声をかけて来てくれていた男性の姿を見て驚きを隠せなかった、それどころか倒れそうになっていた。


守「お・・・、王様・・・!!」


 そう、目の前にいたのはダンラルタ王国の国王であるコッカトリスのデカルトだった。デカルトの気遣いを断るという事は王命に背く事と一緒である(様な気がした守)。


デカルト「ハハハ・・・、そんなに驚く事は無いじゃないですか。それで、どうされました?」


 好美を通じて仲良くなっていた守のは言わば仲間も同然、国王はどの様な疑問にも答えるつもりであった。


守「では恐れながら申し上げます・・・。」

デカルト「守君、そんなに硬くならないでくださいよ。私も含めて3国の王は堅苦しいのが苦手ですので。」

結愛「そうだぞ、物凄く緩い方々だから気を遣う事なんて無いんだぞ。」

希「結愛ちゃん、それは流石にまずいよ。俺だって出来ない発言だって。」


 自分で言うならまだしも、他人に言われるとムカッとする事が多いという人はよくいるはずだが国王の心はかなり広い様だ、と言うか何で少し着崩してんだよ。


デカルト「のっち・・・、俺が構わないと言っているんだ。気にする事は無いよ。」

希「おいおい、頼むから仕事の場で「のっち」はやめてくれと何回言えば分かるんだ。」

デカルト「お前こそ「王」である私に命令するの、林田署長さん?」

希「くぅっ・・・。」


 この期に及んで何故自分が「王」である事を改めて確認させるように強調したのか分からないが今はそれ所では無い(多分ただのおふざけ)。


デカルト「それで?どうされたのかお伺いしても宜しいですか?」

守「あの・・・、どうしてダンラルタ王国警察の方々が来ていないのかが分からなくて。」

デカルト「それはそうですよね、全くもって管轄の者達がいないからそう感じてもおかしくは無いです。実は王国軍の者達と協力して義弘を捜し回っているんですよ、3国中ね。」


 それもそうだ、国内外関係なく管轄内で起こった重大事件の2次被害を防ぐ為に動くのは当然の事だ。しかし・・・、どうして国王自らこちらに?


デカルト「魔法班を連れて来たんですよ、少しでも友人達に協力したいのでね。」

希「こりゃあ頑張らないと駄目だな、国王が自ら動く位の重大事件だからな。」

デカルト「のっち・・・、これが終わったら酒奢れよ?国王命令だぞ。」

希「お・・・、お前・・・、いくら何でも卑怯だろ!!」


-244 いくら腰が低いからって巻き込んじゃ駄目でしょ-


 可能な限り捜査に協力しようとしていた転生者達はデカルトの周辺を見廻していた、何となく失礼な行為だと俺個人は思っていたが大丈夫なのだろうか。


デカルト「あの・・・、どうかされましたか?」


 ほら、不審に思われてんじゃ無いか。ちゃんとそれなりの理由があるんだろうな、目の前にいるのは王様なんだから嘘偽りなく言うんだぞ。


守「すみません、ただどうしてデカルトさんだけここに来て一緒に連れて来たという魔法班の方々が来ていないのかなと思いまして。」

デカルト「そうですよね、ただ別に忘れて来た訳じゃ無いんですよ。ここに来た時に城門等が崩れていたので直してから来ると申していたので後ほど全員揃うと思います。」


 「城門」と聞いて体が小刻みに震えだした者がいた、ただ音もなく震えていたはずなのにそこにいる全員が予想していたかの様にその者の方へと振り向いた。


ハイラ「ごめんなさい・・・、私ですぅ~・・・。」

ムクル「王様、恐れながら申し上げますがどうやら久々に我慢出来なくなっちゃったみたいでして・・・。」

デカルト「あらまぁ・・・、15年振りに我慢できなくなっちゃったんですか?」


 身に覚えのある光景にもう呆れてものも言えない様子の国王、所長はその場で改めて責任を感じて小刻みに震え始めた。と言うか・・・、泣きかけてね?


ガーガイ「王様、お待ちください!!」


 あ・・・、そう言えばもう1名いたわ・・・。


デカルト「えっと・・・、貴女は?」

ガーガイ「私、大学院生のガーガイ・ヴァントと申します。実は犯人達の魔法により1時的にティアマットへと変身させられていたんですが、好美さんに『状態異常無効』を『付与』して頂いた『人化』するのを忘れて元々直りかけていた城門を再び壊しちゃったんです。なので・・・、責めるなら私を責めて下さい!!」


 あーあ・・・、何となくだがどうしてガーガイがこう言ったのかを想像したくないわ。


デカルト「素晴らしい!!何と言う正直なお方なのでしょう!!その正直さに免じて貴女方の罪はお許しいたしましょう!!」


 物凄く寛大な王様により2名の罪は許されたが何となく納得いっていないのがいる様に思えるのは俺だけだろうか。


ガーガイ「どうしてですか!!私は城門を壊したんですよ!!怒って下さいよ!!詰って下さいよ!!そして・・・、「このくそ龍(ドラゴン)が!!」って蹴り飛ばして下さいよ!!」

結愛「止めろや!!王様が困ってんじゃねぇか!!ドMを発揮してんじゃねぇ!!」


 あの理事長さん・・・、王様の右手をご覧頂けませんか?


結愛「王様まで、何で鞭を持ってんですか!!」

デカルト「これですか?いや、先程そちらの方に手渡されまして・・・。」


 まさか自前の鞭を普段から持ち歩いているとは・・・、こんな魚龍(バハムート)嫌だ。


デカルト「あらま、貴女は稀に見るバハムートでしたか。道理で綺麗な女性の方がご自分の事を「くそ龍」と仰っていた訳なんですね。」


 納得しないで欲しい、バハムート全員がガーガイの様な性格では無いと願いたい。

 一方その頃、ノームはこの強制収容所での捜査に赴く前に朝食の味噌汁を啜っていた時の事を思い出していた(と言うかエルフの朝食って結構和風なんだな、違うか)。


マイヤ(電話)「ドーラ(ノーム)、ちょっと良いか?」

ノーム「どうしたのよ、折角の味噌汁が冷めちゃうから手短にしてくれない?」

マイヤ(電話)「すまんな、今日ってネルパオン強制収容所に行くんだろ?その前におじいちゃんの家に寄ってくれないか?」

ノーム「別に構わないけど・・・。」


 ノームは現場へと向かう途中で祖父の家へと立ち寄って受け取った物を改めて眺めた。


ノーム「お姉ちゃんに渡す様に言われたけど・・・、何でソフトキャンディなの?」


-245 ソフトキャンディーと所長の魔力-


 ノームの疑問は思った以上に呆気なく解決してしまった、元々自分の姉や国王達の会話を盗み聞きするつもりはなかったのだが本人の近くで繰り広げられていた為に自然と耳に入っていた。

 ただ会話だけで理由が分かる訳が無い、実はと言うと再び我慢出来なくなっていたのか知らないがハイラの右手辺りに小さかったが黒い魔力の玉が出現しかけていたのだ。


ノーム「王様、恐れ入りますが少し姉と話しても宜しいでしょうか。」

デカルト「構いませんよ、折角再会されたご姉妹ですからゆっくりお話し下さい。」

ノーム「お心遣い感謝致します。」


 何となくだが国王の身に危険が及ぶと思ったノームはハイラとデカルトを引き離して牢獄の端へと連れて行った。


ハイラ「急にどうしたってのよ、王様に失礼じゃない。」


2人きりになった時、姉の右手から何故か黒い玉は消えていた。警部補の気のせいだったのだろうか。


ノーム「お姉ちゃん、また我慢出来なくなっているでしょ。」

ハイラ「バレちゃった?やっぱりエルフ(と言うか姉妹)同士だと分かっちゃう物なのね。」

ノーム「エルフとか関係無いわよ、右手に玉が出かけていたんだから一目瞭然よ。」


 ため息をつきながらポケットに手を入れて探し物をするノーム、これ以上姉の魔力の被害者を出す訳にはいかないと急いで「あれ」を取り出した。


ノーム「ほら、お爺ちゃんに渡しといてって言われたのよ。」


 やっと見つけ出したラムネ味のソフトキャンディーをハイラに手渡した妹、するとハイラは待ってましたと言わんばかりに封を開けて口に放り込んだ。しかも一気に4つ。


ノーム「お姉ちゃん、折角持って来たんだからゆっくりと味わってよ。」

ハイラ「ごめんごめん、でも誰にも我慢出来ない時ってあるじゃない。」


 本人自身が良い例なのか悪い例なのかどちらかが分からなくなっている姉の一言に説得力の強さを感じる警部補、ただ被害者(と言うより死者)が出るよりはましかと許容するしかなかった様で・・・。


ノーム「まぁ良いわ、でも本当にソフトキャンディーが好きなのね。」

ハイラ「そうなの、ポケットにこれが無いと落ち着かないのよ。もう家や車の鍵と同じレベル。」


 この例えが合っているかどうか悩んでしまったが、「よっぽど」という事だけは理解出来たノーム。

 そんな中、マイヤの家でこのソフトキャンディーを手渡された時の事を思い出していた。


ノーム(回想)「ソフトキャンディー?何でこんな物の為に呼び出したのよ、私が途中のお店に寄って買って行けば済む話じゃない。」


 正論だった警部補の台詞を受けたマイヤはすぐ傍にあった椅子にゆっくりと腰かけた。


マイヤ(回想)「お前がそう思っても仕方が無い、ただ昔ノームにした話の事を覚えてるか?」

ノーム(回想)「昔の話?何の事?」


 全くもってチンプンカンプンな様子の警部補、祖父は何が言いたかったのだろうか。


マイヤ(回想)「改めて聞こう、昔お前に「黒髪種」の話をした事があるのを覚えているか?」

ノーム(回想)「えっと・・・、確か「その魔力に触れると死ぬ」って噂になってたやつ?」

マイヤ(回想)「そうだ、今となってはその噂は無くなったが実はハイラがその「黒髪種」なんだよ。これは君の姉が産まれたばかりの事だ、病院でハイラを取り上げた看護師や医者を含めてそこにいた全員が途轍もない魔力を感じたので嫌な予感がした私は偶然側にいたメイスさんというアーク・ビショップに相談した。メイスさん本人は「心配ない」と言っていたが数か月経ってハイラ自身に黒い髪が生え始めたから家族全員が「死者が出るとまずい」と騒いでいたが幼稚園に入るまで何の問題も無かったし周りの友達も仲良くしてくれた。ただある日、幼稚園の一角でハイラ自身が魔力に目覚めた瞬間にそこにいて波動を感じた全員に翌日から避けられる様になったんだ。その事を聞いて流石に可哀想と思った私は頭に血が上りやすい性格だったハイラの魔力を可能な限り鎮めるためにソフトキャンディーを渡すようにしたんだ、それからは順調に友人も増えて何の問題も無かった。」

ノーム(回想)「・・・それで?このキャンディーを渡した本当の理由は?」

マイヤ(回想)「ハイラからの「おじいちゃんポイント」が欲しかったの。」

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