7. 異世界ほのぼの日記3 236~240


-236 魔法と放置の価値-


 強制収容所の所長による自己中心的な発言をスルーしたくないという本心を抑えながらも好美達はずっと放ってしまっていた件を解決させる事に、ただまさかとは思うが実はハイラの魔法による城門破壊を防ぐ為にデカルトが先程言っていた『魔術阻害』が使われていたのでは無いかと疑ってしまった今日この頃。


ハイラ「な、何訳の分からない事を言っているんですか!!私だってして良い事と悪い事の区別位は付きますよ!!」


 じゃあ何で動揺してんだよ、おいおい世の中で言う「図星」ってやつか?


ハイラ「もう、私の事は良いじゃないですか!!」


 まぁまぁ、そう顔を赤くするなって。詳しくは貴女がいない時にムクルにでも聞いておくから安心したまえよ。


ハイラ「ムクルさん・・・。」


 ジトっとした目線を副所長の方へと向ける所長、よっぽどな事情がおありの様だがこれは後の楽しみにしておいて。そろそろ外でずっと放置してしまっていたティアマットをどうにかした方が良いんじゃ無いのか?


ガーガイ「そうだよ・・・、皆して放置プレイだなんて・・・。」


 そうそう、いくら何でも周りから見れば今の状況はただのいじめだぞ。


ガーガイ「大歓迎だ!!どんなご褒美だ!!もっとくれや!!」


 お前そっちか!!ドMか!!欲しがってんじゃねぇよ!!と言うか「助けて欲しい」っていうさっきの発言を撤回しろや!!


クォーツ「お前・・・、まさかと思うけど自分から進んでティアマットになるだなんて言った訳じゃ無いよな・・・。」

エリュー「そう言えば昔そんな事あったな・・・、各種の龍族ごっこしてた時もずっとティアマット役をしていた様な・・・。敵役として扱われるポジションをすっとしていたのはそんな理由だったのか・・・。」


 あんたらどんな遊びしてんだよ・・・。でもまさか今度はガーガイがジトっとした目線を受ける様になるとは、ただドMだからって喜んでいる場合じゃねぇんだぞ?


ガーガイ「そ・・・、そんな事は・・・。」


 顔がニヤついてんぞ、と言うか否定しろや!!


好美「あの・・・、遊んでないでそろそろ話を進めた方が良いんじゃない?」


 それハッキリ言って俺の役割だけど何か助かったわ、後でお礼のビール買っとくわな。

 さてと・・・、ご加護を頂いた好美さん。外にいるガーガイへの『状態異常無効』の『付与』をお願いします。


好美「その前にビールの種類は?どのビールなの?!」


 はいはい、酒の事になったらムキになる癖を何とかしろよな・・・。守、彼氏として何とかせんかい!!


守「好美、こういう時は行った店で一番高いやつを買えば良いんだよ。」


 おい!!俺貧乏人なんだぞ、普段は安いチューハイか第3のビールで我慢してんだから勘弁してくれ!!まぁ良い、後でディスカウントストアに行けばいい話だからな。ただこの世界にあったかな・・・、取り敢えず早くしてあげて下さい!!


好美「仕方ないな・・・、よいしょっと。」


 どうやらエリューの加護のお陰で無事に『状態異常無効』が『付与』されたガーガイ、ただ気が抜けていたらしく巨大な魚龍の姿で出現してしまったので・・・。


ガーガイ「あ・・・、やっちゃった・・・。」

クォーツ「お前な、俺らがしているんだから『人化』して出てこいや!!自分のデカさ位は把握してんだろ?!」

結愛「あーあ・・・、折角直した城門がまた壊れちまったよ・・・。」


-237 十人・・・、いや十「龍」十色-


 自分の所為で起こってしまった惨状を目の当たりにした巨大な魚龍は『人化』して所長や転生者達がいる牢獄へと入って来た、クォーツやエリューに似た女性の姿をしていたガーガイはため息をつきながらその場に座り込んでいた。


クォーツ「お前はバカかよ、少しだけ空気を読めば分かる話だろうが!!」


 結構強めの拳骨を喰らわせる古龍、でもやはり性格が「あれ」だったので・・・。


ガーガイ「ああ・・・、クォーツ姉ちゃんの強めの拳骨と罵倒だなんてなんてご褒美なんだ・・・。何とか生き延びた実感が湧くぜ・・・。」


 俺が言っても良いのか分からんがコイツ相当な馬鹿だな、よく貝塚学園大学に入学出来たな。まさかと思うがコイツが受けた試験が簡単すぎたのか?


結愛「お前な、失礼にも程があるぞ!!試験問題は毎年俺とリンガルス警部が厳選した資料を使って作ってんだ、馬鹿な事言ってんじゃねぇ!!元の世界みたいの「センター試験(共通一次試験)」みたいなのがないんだから苦労してんだぞ!!」


 あ・・・、そうなの・・・。だったらガーガイが相当な実力持ちだったって事なのね。まぁそれは良いとして、一先ずそこにいるバハムートさんは転生者達に謝った方が良いんじゃ無いのか?魔法班が来るまでに『修復』しなおさないといけなくなっちまったんだからよ。


ガーガイ「副理事長先生に守さん・・・、本当にごめんなさい!!」


 ゆっくりと時間をかけて城門に向けて『修復』の能力を使用する守と副理事長。


守「いや・・・、怪我がなかっただけましだよ・・・。なぁ、み・・・、光明?」

光明「守、こいつは怪我してもそんな素振りを見せない性格なのは一目瞭然だろう?ただ龍(ドラゴン)族ってまるで人間と変わらないんだな。」


 ドラゴンだけに限らずこの世界の住民は人間と至って変わらない生活をしている事を改めて実感させられる転生者達、ただ今はどうしてガーガイがティアマットになってしまっていたのかを聞き出す必要があるんじゃねぇのか?


結愛「そうだったな・・・、確か学内での移動中にやられたって言ってたな?」

ガーガイ「そうなんです、確か2週間くらい前の話なんですけど・・・。」

結愛「ああ・・・、確か光明、こいつの出席率が急に悪くなったのも2週間前だったな?」

光明「うん、これはコピーだが担当教授が持って来た出席簿だ。」


 内部の者が見る為のコピーだと思われる物を『アイテムボックス』から取り出す光明、でもそういうのって学園の敷地内で見るべきなんじゃ無いのか?


結愛「警察が動く大騒動なんだぞ、それも貝塚財閥の信用に関わる大事件だ!!んな事言ってる場合じゃないだろ、それにリンガルス警部は学内の者だから問題無いんだよ!!」


 あの・・・、それがですね・・・、好美ががっつり見てますけど・・・。


結愛「何だって?!こら、子供が見て良いもんじゃねぇ!!」

好美「子供じゃないもん、マンションの大家さんだもん・・・。」


 少しだけだが幼さを感じさせる見た目をしているからか、偶に子供と見間違われる事が多い好美。ただ結愛達と同級生なんだから一応訂正してやったらどうなんだ?


好美「そうだよ、訂正してよ。私だって「ピー(自主規制)」なんだから!!」


 お前な!!いくら大人として見られたいからってちゃんと考えて発言しろ!!思わず「ピー」を入れちゃったわ、焦った・・・。


好美「何言ってんの、馬鹿なの?私は「ちゃんと働いている大人」だって言っただけだよ・・・。」


 すんません、ちゃんと聞いてなかった俺が悪いです。後ほどビールをお好きなだけお買い上げ下さい。そ・・・、それより2週間前に何があったか聞かなきゃでしょ?


結愛「コイツ・・・、誤魔化しやがったな・・・。まぁ良い、ガーガイ、何があったか教えてくれるか?」

ガーガイ「えっとですね・・・、2週間前に学内を移動してたんです。その時に近くにいた人に手招きされたんですよ、それで・・・、何て言ってたかなぁ・・・。」

結愛「おいおい頼むよ、ちゃんと思い出してくれよ。どういうプレイだよ・・・。」


-238 「受ける」のが好き(やっぱりドM?)-


 魚龍の影響により結愛にもドMの疑惑が浮上し始めたが、あまりこれをいじり過ぎたら全くもって捜査が進みそうにないので今は敢えてスルーしておこうと思った俺。ただそこにいる「ド変態」の些細な(?)話でも大切な証拠になりうるのでゆっくり聞いてみたい今日この頃・・・。


ガーガイ「おい、ちょっと待てよ!!誰か知らんが俺みたいな美人を捕まえて「ド変態」だなんて失礼にも程があるぞ、訂正しやがれこの野郎!!」


 ほう・・・、そう言いながら顔がニヤケているぞ・・・。本当は嬉しいんじゃねぇのか、本音を言ってみろよ。欲しいんだろ・・・、欲しいんだろ・・・?


ガーガイ「くぅっ・・・、今は空気的に事件の捜査を最優先すべきなのは分かっているけど本心が「ご褒美」を欲しがり過ぎて否定が出来ない!!クォーツ姉ちゃん、どうすれば良い?!」

クォーツ「お前な、俺を巻き込んでんじゃねぇよ!!今は真剣な(?)場だぞ、空気読んでちゃんと自分が話せる事を話すんだ!!」


 神様、魚龍を説得して頂き感謝致します。お陰で物・・・、いや捜査が進みそうです。


クォーツ「ほら、深呼吸してちゃんと話せよ。」


 そうだぞ、落ち着きを取り戻す為に深呼吸をするのは大事ですよね。

 古龍に促されたバハムートは深呼吸をし始めた・・・、これで一安心・・・、のはず・・・。


ガーガイ「ブシャーーーーーー!!」


 ただの深呼吸のつもりで息を吐くと同時で勢いよくウォーターブレスを吐き出してしまったガーガイ、しかも当たり所が悪かった様で・・・。


結愛「ガーガイ・ヴァント・・・、てめぇ・・・、このスーツは今日おろしたばっかなんだぞ!!お陰でびしゃびしゃじゃねぇか!!何てことしてくれるんだ、この野郎!!」


 学園の理事長として学生及び生徒を最も大事にすると心に誓っている結愛、しかしオーダーメイドに拘ったこのパンツスーツを濡らされるのは本当に許せないらしい。しかも運が悪かったのか、まさかの買ったばかりのおろしたて。ただこの期に及んでもまた「あの性格」が発揮されてしまい・・・。


ガーガイ「ああ・・・、理事長先生による罵倒・・・、何てご褒美なんですか・・・。ああ・・・、至福ですぅ・・・。」

クォーツ「駄目だ・・・、振り出しに戻っちまった・・・。」


 もう空気的に分かって下さる方もいらっしゃると思うがこれではやはり捜査(物語)は進みそうにない、一先ず神々は友の失敗を何とかする事に。


クォーツ「エリュー、すまねぇが温度低めの熱風を出せるか?」

エリュー「ああ・・・、俺は全然構わねぇけど。」


 一言でクォーツの意図を汲み取ったエリューは低めの温度で熱風を出し始めた、ただ「低め」と言っても出しているのが火炎古龍の為にさり気なく光明が『アイテムボックス』から出した温度計で計測してみると「90℃」と表示されていたので神の御前だというのに・・・。


結愛「あっちぃ!!スーツがすぐ乾くのは嬉しいが俺サ活の趣味があるなんて言った事ねぇぞ!!」


 結愛、落ち着け!!改めて言うが神の御前だぞ!!

はぁ・・・、ただこの社長の言葉に食らいついたのが他の誰でもない好美だった、上着を脱いだ好美は結愛の隣に立って風を受け始めた。やはり「酒好き」と「サウナ好き」という意味で好美と俺は気が合うらしい、まぁどうでも良い話なんだが。


好美「ああ・・・、良いねぇ・・・。これ今までに無い位最高のロウリュだわ、ラベンダーとかのアロマ水が欲しくなって来るね。」


 さり気なく香りの注文をする好美、今はそれ所じゃ無いんだが何となく・・・、羨ましくないと言えば嘘になってしまう。そんなこんなでもう既に結愛のスーツは乾いたみたいなんだが・・・。


好美「すみません・・・、お代わりください!!後冷え冷えの炭酸水1本と水風呂ね!!」


 好美・・・、お前ガッツリ楽しもうとしてんじゃねぇよ・・・。


-239 疑惑と疑惑(?)-


 火炎古龍による温風(いや熱風)がやっとマシになってきたので一同は魚龍からへの事情聴取(というか質問コーナー)を開始する事にした、俺からすればスッと始めてくれと言いたいところだが未だに結愛の怒りが収まらない様に見えるのは気のせいだろうか。


結愛「ガーガイ・ヴァント・・・、クリーニング代は出して貰うから覚悟しろよ・・・。」

ガーガイ「理事長先生、必ず払いますから許して下さいってー!!」


 結愛!!もう良いだろうが!!隣の好美はまだ物足りなさそうにしているけどエリューによる熱風のお陰でもう既に乾いているだろう?ちょっと意地悪が過ぎないか?!


結愛「あのな、俺だって理事長としての威厳を保つ必要があるんだよ。何も分からない癖にお前は黙ってろ!!」


 言ってくれたなてめぇ・・・、お前の全財産(特に趣味で育ててるオレンジ畑と光明に内緒で買ったスーパーカー数台)を没収するぞ!!


結愛「おう、やってみろ・・・、って何で車の事知ってんだよ!!」

光明「スーパーカーだと、お前そんなの乗って無かっただろ。」


 光明、こいつ貝塚財閥本社の地下にある隠し駐車場に5台位隠してるぞ。光明自身は副社長らしからぬつましい生活をしているのにな・・・、お気持ち察するぜ。


結愛「待てよ、嘘に決まってんだろ!!何ハッタリかましてくれてんだ!!」

光明「そう言えば銀行貯金から偶にだけどかなりの高額が卸されてるから怪しく思っていたんだよ、これは後で調査する必要があるな。」

結愛「畜生・・・、覚えてろ・・・。」


 忘れたのかよ、この世界で俺を怒らせるとこうなるんだって事を。これからは肝に銘じて光明と旅行に行く事も考えるんだな。取り敢えずガーガイ、理事長先生が来ているオーダーメイドのスーツはちゃんと乾いているから気にしなくても良いから大学であった事を話してくれないか?


ガーガイ「ああ・・・、確か学内を移動していた時に掃除担当の人に話しかけられて・・・。」

光明「掃除担当・・・、という事は事務局2階にいる清掃班という事か。」

結愛「顔とかは覚えているか?」

ガーガイ「いや・・・、帽子を深く被っていたから顔はあんまり・・・。でも声からしておっさんでした、50歳代後半位の。」


 「50歳代後半位のおっさん」と聞いてやはり重岡が義弘と共謀した犯人ではないかと疑った結愛は片手で重岡の大体の身長を示した。


結愛「これ位のおっさんだったか?」


 ガーガイは首を横に振った、魚龍の供述が本当なら重岡は関与していない様だ。これで捜査は振り出しに、ただ念の為に結愛は確認しておきたい事が1つあった。


結愛「そのおっさんが着ていた制服の色は覚えているか?」

ガーガイ「確か黒だったと思います、全身黒の制服姿でした。」

結愛「確かにうちの清掃班の様だな、何時位か覚えているか?」

ガーガイ「えっと・・・、1限目の直前だったと思うので9時前だったと思います。」

光明「午前中って事は日勤か、ちょっと事務局長に問い合わせてみるよ。」


 光明は電話を借りる為にハイラと共に所長室横の給湯室へと向かった、原因は1つしか無いのだが室温が極端に熱くなっていた為に水分補給も兼ねている様だ。


光明「もしもし、突然のお電話失礼致します。私、今度の「電気工事の事で確認させて頂きたい」ので事務局長様をお願い出来ませんでしょうか?」


 「電気工事の事で確認させて頂きたい」というのは暗号で「緊急事態発生の為に光明が電話をしてきた」という意味だった、他の従業員による情報漏洩の防止と機密保持を保つ為の様だ。


事務局長(電話)「副理事長、大変お待たせいたしました。別の階にいる先程の者と私以外は誰もいませんので。ご安心下さい。」

光明「すまないね、例の事件の事で協力して欲しいんだがその前に火を消そうか。」


 ただのカマかけに見えるが実は電話と同時に『探知』と『察知』を使用していた光明。


事務局長(電話)「別にサボっていた訳では・・・、すみません・・・!!」


-240 尋常じゃない拘り-


 再び結愛は頭を悩ませていた、義弘の脱獄事件が報道されてからずっと濃厚としていた「重岡共謀説」が一気に崩れ去ったのだ。しかしその場で立ちすくんでいるままという訳にはいかない、一先ず深呼吸をして落ち着きを取り戻した理事長は好美に貰った炭酸水を一気に飲み干した研究生に質問してみる事に(と言うか本当に炭酸水飲んでいたのかよ)。


結愛「ガーガイ、ちょっと良いか?」

ガーガイ「勿論、自分なんかで宜しければ。」

結愛「お前な、さっきの事は許してやるから自分の事をあまり卑下するんじゃねぇよ。本当の事を言っちまえば部屋の中が熱かったから丁度良かったんだ、ありがとうよ。」


 やはり先程言い過ぎた事を気にしていたからか、大人らしく魚龍が話しやすくなるために最大限気遣った様だ。


ガーガイ「恐れ入ります、それでどうされました?」

結愛「いや・・・、確かさっき掃除のおっさんに声をかけられたって言ってたけど。」

ガーガイ「そうです、全身黒の制服姿でした。」

結愛「黒ね・・・、黒・・・、黒・・・。助かるよ、やはり怪しいと思っていたんだ。」


 おいおい、前話では「確かに」って言ってたじゃねぇか。


ガーガイ「それにしても「黒」がどうしたんです?何かを思い出そうとしていたみたいですけど。」

結愛「いや、ふと思い出した事があるんだが貝塚学園と貝塚財閥にある各部署や支社とかに制服が黒の所なんてあったかな・・・、と思ってな。」


 全部覚えているのかよ、流石社長だな(と言うかそれが本当だったらこの女怖ぁ)。

 丁度その頃、『探知』と『察知』を駆使して事務局長が煙草の火を消した事を確認した光明はガーガイが被害を受けたという時間帯について問い合わせてみる事に。


光明「そろそろ気が済んだか?」

事務局長(電話)「大丈夫です、申し訳ありません。」

光明「まぁ、良いよ。今度は指定の喫煙所で吸うようにな、他の職員が嫌がる場合があるからな。」

事務局長(電話)「はい、分かりました。それで、事件についてと仰っていましたがどうされたんです?」


 まるで「自分に聞くような事があるのかよ」といった様子、しかし光明にとって今頼りに出来るのは事務局長しかいない。


光明「清掃班の日勤についてなんだ、何か変わった事は無かったか?」

事務局長(電話)「変わった事ですか・・・、そう言えば最近雇った新人が2週間前から無断で欠勤しているんですよ。」


 丁度ガーガイが連れ去られた時期と一致する、どう考えても怪しい。


光明「そいつについて今話せる事を全て教えてくれないか?どんな事でも構わない。」

事務局長(電話)「えっとですね・・・、そうだ!!初出勤で制服を渡そうとした時です、一目見て「これの黒は無いのか」と強めに聞いて来たんです。」

光明「「黒」?確か清掃班の制服は淡い水色だよな、それでどうしたんだよ。」

事務局長(電話)「一応理由を聞いてみたんです、その時は「ただ好きなだけ」と答えて来ましたが何か裏がありそうで仕方が無かったんですよね。」

光明「でも無い物は無いんだからそのままの制服を渡したんだろ?」

事務局長(電話)「はい、ただ次の出勤日に本人の姿を見て驚きました。勝手に渡した制服を黒に染め上げていたんです、「貸付だからやめて欲しい」と申し上げたのですが「購入するからこのまま着させてくれ」の一点張りでして・・・。」

光明「だからか、それ位の時期にヒドゥラからその様な相談があったのは。」

事務局長(電話)「私も抵抗したんですが「どうしても」というのでご相談させて頂いたんです、あの時は無理を言って申し訳ありません。」


 黒の衣服にそこまでの拘りを持たせる理由、どう考えても好みだけとは思えないのだが。


光明「大丈夫だ、事務局長が悪い訳じゃ無いから気にしないでくれ。ただ、2週間前からずっと来ていないという方が怪しいよな。本人との連絡はどうなっているの?」

事務局長(電話)「何度電話を試みてはいるんですがずっと電源を切っているみたいでして。」

光明「そうか、ありがとう。また協力をお願いするかも知れないからその時は宜しく。」


 その頃牢獄で結愛からの新たな質問を聞いたガーガイは再び首を横に振った。


結愛「そうか・・・、じゃあどうしてお前はティアマットになっていたんだ?」

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