7. 異世界ほのぼの日記3 231~235


-231 友人を疑いたくはない-


 古龍の姉妹たちは監視カメラからずっと変わる事なく放たれていた禍々しい魔力に身に覚えのある様な昔懐かしい物を感じていた様だ、どうやらこれは姉妹達にしか分からない事だった様で転生者達はクォーツやエリューがやって来てくれた事にほっとしていた。

クォーツ「やっぱりか、お前も感じたか?」

エリュー「確かに姉御と同じ意見だ、でもおかしい話じゃ無いか?確かアイツって確かこの世界でも天界でも珍しいウンディーネ家系だったはずだぞ。」

クォーツ「そうだよな・・・、だから青龍(ブルードラゴン)を経て魚龍(バハムート)になるはずだよな。周りからも「羨ましい」ってよく言われてたと思うけどそれが何で混沌龍(ティアマット)なんかに・・・。」


 どうやら龍(ドラゴン)族には今でも転生者達が出逢った事の無い種族が多く存在している様だ、好美に至っては「バハムート」という言葉すら聞いた事が無かった。


好美(小声)「ねぇ結愛、バハムートって何?」

結愛(小声)「確か・・・、ドラゴンの姿をした巨大魚の幻獣だって聞いた事があるけどこの世界にも存在するなんてな・・・。」


 と言うより今度はブルードラゴンが出て来るなんてな、何となく複雑すぎる気がするけど今は事件に集中すべきなのかも知れない。ただ腕を組んで立ちすくんで頭を抱える姉妹達の横からゆっくりと声をかける者がいた、リンガルス警部だ。


リンガルス「あの・・・、各々方ちょっと良いですか?」

エリュー「な・・・、何だよ。」

リンガルス「実は学生の頃に本で読んだ事があるんですが、「ドラゴンは家計もそうだが幼少の頃の体験による心情の変化や性格、ごくわずかでとても珍しいと言われていますが周りの魔力の影響で成長した後の種族が変わる可能性がある」との事なんです。」

クォーツ「そうなのか・・・、2000年生きて来て初めて聞いたぞ。」

エリュー「ただ姉御、今の説が本当だとしてあいつの過去に要因となる様な事があったかな・・・。」


 古龍達は幼少の頃をよく思い出していた、桁違いの話になるので何となく頭痛がして来たのは気のせいだろうか。一先ず守は聞きたくて仕方ない事があった、きっと守以外にも同様の感情を抱いている者はいるはず。


守「すみません・・・、先程からお話に出ている「アイツ」とはどなたなんですか?」

クォーツ「悪い悪い、実はガキの頃俺ら4姉妹と一緒に缶蹴りして遊んでいたドラゴンがいたんだよ。ガーガイって奴なんだけど、カメラから出ている魔力がそいつのに似ているんだよ。」

エリュー「待て姉御、あのあどけなかったガーガイが黒龍になるとは思えねぇだろ。」

結愛「ん?ガーガイ?何処かで聞いた様な・・・。」


 結愛が何かを必死に思い出そうとする横で1000年以上前の微かな記憶から何とかヒントを捻り出そうとしていた古龍達、そんな中クォーツには少し気がかりになっていた事が。


クォーツ「そう言えば俺、親父たちの都合で生まれた地を離れて天界に引っ越した事があったんだ。」

エリュー「いや待てよ、そんな事関係あるのか?」

クォーツ「実はお前だけ先に引越しの事を言ってたけど、今の今までガーガイには言うのを忘れててさ。悪い事をしちゃったなってずっと反省してんだ。」

エリュー「大丈夫だよ、アイツには俺から後で言っておいたからさ。まぁ数年間は奴を抑えるのが大変だったけどいつか一緒に会いに行こうって言ったらケロッとなってたぞ。」

クォーツ「じゃああれかな、本当は元々黒龍系統だったとか。」

エリュー「それは流石に・・・、存在すら外界にしか確認されていないはず。と言うより奴らは周りからの目を気にして人前にはあまり出てくることは無いって聞いた事があるぞ。実は忌み嫌われている事を心の中で気にしていたのかも知れないな。」


 覚えている限りの知識を絞りに絞り出して解決の糸口を探していく古龍達は新たなヒントを得る為に義弘のいた牢獄へと向かった、牢獄に入った瞬間そこにいた全員が先程より強大で禍々しい魔力を感じ取った。


結愛「うっ・・・、なんだこれは・・・。」

ハイラ「先程来た時より魔力が強くなっています!!」

ムクル「所長・・・、いやハイラさん。そりゃあ強くもなりますよ・・・。皆さん、あちらをご覧ください・・・。」


 ムクルは牢獄の小窓の方向を指差しながらも震えていた、その理由はすぐに分かった。


ハイラ「嘘でしょ、本当にこの世界にティアマットが・・・!!」


-232 どうしてこんな事に・・・-


 禍々しい魔力を全身から放ちながら小窓の向こうの海上で浮かんでいたこの世界では存在すら確認されていなかったそのティアマットは建物の中にいた結愛や古龍達に気付いたのか、大きな口をゆっくりと開いた。


結愛「まずいぞ、皆伏せろ!!」


 しかし、ティアマットの口からは何も放たれなかった。それどころかよく見ればその混沌龍は泣いている様に見えたのは気のせいだろうか、そこにいた全員は固唾を飲んで窓の外を見ていた。すると、ティアマットからまさかの言葉が・・・。


ティアマット(龍語)「・・・、ケテ・・・。タス・・・、ケテ・・・。」

クォーツ「皆聞こえたか?あいつもしかして「助けて」って言ったか?」

エリュー「この世界の言葉(龍語)も一応話せるんだな、それは何となく助かるが。」


 転生者達はビクターにより与えられた『自動翻訳』で全てが日本語に翻訳されていたので自分達と同じ言語に聞こえていたから今発覚した事らしいのだが、どうやら龍族特有の言葉が存在していたらしい。そしてティアマットは別の世界のみでの存在とされていたのでこの世界の言葉を話した瞬間驚きを隠せなかったが少し親近感が湧いて来ていた為に何となく助けたくなった様だ、その上・・・。


クォーツ「あの声・・・、やっぱり・・・。」

エリュー「確かにガーガイに聞こえるが本当なのか分からないだろう。」


 すると大企業の社長が横から口を挟んだ。


結愛「神様、どうやら嘘は言っていないみたいです。」

クォーツ「結愛、どうして分かるんだよ。」


 どうやら取引先の企業の信用度を自分自身が分かる様にしたい為に『虚偽判定』の能力を『作成』した様だ、まさかこの様な場面で役に立つとは。


結愛「あの・・・、恐れ入りますが宜しければティアマットに話しかけてみて頂けませんでしょうか?」

エリュー「ああ、分かった。おい、俺の声が分かるか?」


 少し苦しそうにしながらもしっかりと返答しようとする様子のティアマット、この展開はまさか・・・。


ティアマット「その・・・、声は・・・、、エリュー・・・、姉ちゃん・・・、か?」

エリュー「そうだ、お前まさか昔一緒に遊んだガーガイか?!」

ガーガイ(?)「そうだよ・・・、姉・・・、ちゃん・・・。」


 もう少し信用度を上げる為にクォーツも話しかけてみる事に。


クォーツ「おい、俺の事も覚えているか?」

ガーガイ(?)「ああ・・・、クォーツ・・・、姉ちゃん・・・、だよな・・・。昔・・・、缶蹴り・・・、したよな・・・。」

クォーツ「結愛、どうだ?」

結愛「はい、こちらも本当の事の様です。」


 余りにも変わりきってしまった友の姿に未だ驚きつつもあくまで冷静さを保ちガーガイと思われるそのティアマットに質問をしてみる事に。


クォーツ「お前・・・、どうしてその様な姿に・・・。」

ガーガイ「罠に・・・、かけ・・・、られた・・・。騙された・・・、んだ・・・。」

エリュー「騙されただって?!何て言われたんだ?!」

ガーガイ「元・・・、株主・・・、だという・・・、男に・・・、「貝塚財閥に・・・、入りたいなら・・・、俺に・・・、ついて・・・、来い」と・・・。「有利に・・・、なる様に・・・、してやる・・・」って・・・。」

結愛「くっ・・・、やはり義弘派閥の仕業か・・・!!今思えばあんた、貝塚学園大学大学院の研究生のガーガイ・ヴァントだな!!最近真面目なはずのあんたの出席率が悪いから心配して担当教授が相談して来ていたんだ、そういう事だったのか!!」


 結愛による自分の名前を呼ぶ声に安心したのか、再び涙を流すガーガイ。


ガーガイ「理事長・・・、先生・・・。学内で・・・、移動してた時に・・・。」

結愛「待て、無理をするな!!好美!!アイツに『状態異常無効』を『付与』してくれ、責任は俺が持つから頼む!!」

好美「分かった・・・、ちょっと待って!!」


-233 何もかも万能な者なんているはずがない-


 この世の中「焦り」は禁物だ、貝塚学園に通う学生を理事長として救いたいと言う結愛の気持ちは分かるが世の中何が起こるか分からない。元義弘派閥の者が絡んでいるとなると尚更そう思ってしまうかも知れないが何かしらのアクションを起こす前に一呼吸置く事も大切なのではないかと俺個人は思う、ただどうやら多少だが近頃能力の使用が上手く行っていない好美は珍しく俺と同意見の様だ。まぁ、嬉しい様なそうでも無い様な・・・。


好美「馬鹿ね、この期に及んで何を言ってんのよ。こういう時こそ一番大事なのは落ち着く事じゃない、それに今回に至っては大空を飛び回るドラゴンだからそれなりにちゃんと狙いを定めないといけないと思うのよ。」


 はいはい・・・、ごもっともなご意見ありがとうございます(ケッ・・・)。


好美「何よ、最後余計な音が聞こえた気がしたけど。」


 気の所為ですって、それより早く『状態異常無効』を『付与』しないと大変な事になってしまうかもしれないですよ。


好美「分かってるって急かさないでいいじゃん、いったい誰の所為でこうなったと思ってんのよ。」


 いや、強いて言うなら俺ではなく脱獄した義弘本人と重岡だと思うが?


結愛「そうだぞ、元はと言うと俺のくそ親父と重岡の野郎が悪いんだから今はそいつは全くもって関係ねぇはずだろ。俺だって早く「コイツ」で・・・。」


 『アイテムボックス』から先程お出ましした鈍器(?)、昔ながらの肩掛け式電話を少し出しながらキリキリと歯を鳴らす結愛。だからそれは殴る為の物じゃないから!!と言うかこの世界でも暴力駄目!!戦闘行為はご法度だろうが!!


結愛「何言ってんだよ、この期に及んでそんな事言っている場合じゃないだろ。それより、好美!!頼むよ、俺の大切な学生を助けてくれ!!」


 少し後ずさりしながらも小窓から外を覗き込んでガーガイに狙いを定める好美、ただ先程からそのティアマットは全くもって動かずにいるので大丈夫だと思うのだが「念には念」という奴だろうか。


好美「あのガーガイさんに『状態異常無効』を『付与』っと・・・、あれ?」


 周囲の誰からも分かりやすい位に焦りだす好美、まさかと思いながら結愛は好美に質問してみる事に。


結愛「おい・・・、どうしたってんだよ!!頼むよ!!」

好美「何度もやろうとしてんのよ、でも出来ないの!!結愛以上に強大な魔力に防がれてて『付与』出来ない!!」

結愛「くっ・・・、くそ親父め・・・。今まで幽閉されていた分魔力をため込んでいやがったか・・・。」

リンガルス「畜生・・・、こうなる事ならあんな奴に魔法を教えるべきでは無かった。全部私の責任です、申し訳ございません!!」

好美「警部さん、今は頭を下げている場合じゃないでしょ!!それに誤った所で状況が変わる訳ではないじゃないですか!!」

リンガルス「確かに・・・、仰る通りです・・・。」


 自分の行動を何度も何度も悔いていたアーク・ワイズマンを横目に自分に出来る事は無いだろうかとずっと熟考していたエンシェント・サラマンダーは、現状を打破すべく神が故に出来る提案をする事に。


エリュー「なぁ・・・、良かったら俺の加護を好美ちゃんに与えても良いかな・・・。」


 流石は異世界だなと改めて思わせるその言葉に何故か開いた口が塞がらなくなっていたクォーツ、一体何があったと言うのだろうか。


クォーツ「お前・・・、今まで加護なんて誰にも与えた事無かっただろ!!」

エリュー「こんな事態になっちまったんだから仕方ねぇだろうが、ガキの頃からの大切な友人を助けて貰うのに抵抗なんかするかよ!!それに普段は俺が好美ちゃんの世話になっている方の身なんだぜ、これ位はさせろや!!」

クォーツ「そこまで言うなら分かったよ・・・、じゃあ早くしろって。」


 エリューに手招きされすぐ傍まで好美が近づくとエリューは好美の額に人差し指を充てて念じ始めた、すると指先が光り好美は体内に熱いものが流れ込んで来るのを感じていた。


-234 シンプルな理由-


 神により加護を与えられた好美は体温がほんの少しだが上昇した様に思えた、そして特に右手の辺りが熱いなと感じたのでが気にしない様にしていた。


守「好美・・・、平然でいるみたいだけど右手は大丈夫なの・・・?」

好美「へ・・・?どう言う事?」


 恋人に指摘された好美は先程以上に熱くなって来た右手を恐る恐る見てみた。


好美「いや~・・・、熱い訳だ・・・。右手が燃えてる・・・、って何で?!」


 正直言ってこっちが聞きたい位だ、これはどう考えてもエリューがやらかしたとしか言えない。


エリュー「悪い悪い、2000年以上生きてて初めて加護を与えたから加減が分からなかったんだよ。こんなに難しい物とは思わねぇじゃねぇか。」


 頭を掻きつつ愛想笑いをしながら好美に謝っていたが、先に右手を何とかしてやった方が良いんじゃ無いのか?


エリュー「いや、一応理由が無かった訳じゃ無いんだぜ。魔法(転生者達の能力)を使う時って右手を前に出すからそこを重点的に強めにしたつもりだったんだが、やり過ぎたよ。好美ちゃん、ちょっと待ってろよ・・・。」


 エンシェント・サラマンダーが未だに炎が燃え盛る好美の右手を両手で包み込むと、やっと炎が落ち着いて来たので一息をついて落ち着く事が出来た好美は両手を前に出して『ステータス画面』を出してみた。そう言えば、『ステータス画面』が出て来たのっていつ以来だったかな・・・。まぁそれは良いとして、好美は『ステータス画面』の一番下の身時に着目する事に。


好美「もしかしてこれかな・・・、「火炎古龍エリューの加護」ってやつ。」

エリュー「おうそれだそれだ、無事に付与できたみたいだな。」


 いや、どう考えてもとても「無事に」とは言えない状況だったけどそう言う事にしておこうかな。


守「好美自身は今感じる事はあるか?」

好美「そうだね・・・、ネフェテルサ王国の「お風呂山」の銭湯にある岩盤浴に入った時みたいにぽかぽかしているかな。」


 ほほぉ・・・、あの「お風呂山」の銭湯に岩盤浴があるとは知らなかったな。最近岩盤浴にハマっているから今度行ってみるかな、ってそれ所じゃ無いよな。


結愛「そう言えば少し汗が滲み出て来たみたいだな、デトックス効果がありそうだぜ。」


 おいおい・・・、お前らは脱線しないと気が済まないのか?早く外にいるガーガイを助けなきゃいけないんだろ?


好美「そうだよ、でもこの加護ってやつで私自身にはどう言った効果がある訳?」

エリュー「そうだな・・・、色々と強力になる。基礎体力とか魔力とか・・・。」


 エリューの言葉を聞いた守は昔見た情景をぼんやりと思い出していた。


守「そう言えばこの前見た時「赤鬼(エボⅢ)」のエンジン音が少し良くなってた様な・・・。」

好美「ただ色々とざっくばらんね、本当に大丈夫な訳?」

エリュー「問題は無いはずだぜ、さっきよりは弱めにしておいたからな。ただ好美の能力値自体は格段にアップしたはずだぞ、特に火炎魔法が。」

好美「それって今関係あるの?」

エリュー「気にすんなって、他の能力値もそれなりに上がっているはずだから安心してくれよ。」

好美「エリュー・・・、悪いんだけど私はちゃんとした説明が欲しい訳よ。」

エリュー「いや、初めて与えたから説明のしようが無いんだよ。物は試しだ、取り敢えず右手の人差し指から火を出してみろや。」


 好美が右手の人差し指を立てると柱の形をした巨大な炎が天井へと向かって噴きだし始め、天井を真っ黒に焦がしてしまった。


好美「エリュー、凄いと言えば凄いけどこれ今関係ある?」

エリュー「俺自身がサラマンダーなんだから仕方ねぇだろ、それより取り敢えず『状態異常無効』ってやつを『付与』してみてくれよ。」


-235 やらかし案件の後処理-


 エリューは何事もなかったかのように友へと『状態異常無効』を『付与』する様にと好美に頼んだが何か忘れてはいないだろうかとどうしても考えてしまう俺、まぁその理由はすぐに分かったので助かりはしたが。


ハイラ「ちょっと待って下さいよ、いくら牢獄と言っても公共の場所なんで焦げたままにしないで頂けませんかね!!」

好美「ごめんなさい、ただこんな経験初めてなので少し苦戦してまして。」


 確かに転生者関係で神々からの加護が与えられたのは渚のエボⅢだったはずだ、ただ話の流れ上での事とは言えまさか車に加護を付与する事になるとはクォーツ自身も思ってはいなかっただろう。まぁ、今はそれ所では無いのが明らかなのだが。


ハイラ「苦戦しておられるのは好美さんの様子から見て分かりますよ、でも天井がこのままだと私国王様に怒られちゃいますよ!!」


 この強制収容所は国土から少し離れた孤島に建設されているが一応はコッカトリスのデカルトが国王を務めるダンラルタ王国の管理下にある、流石にこのままではまずいと思った好美はどうやって今の状況を伝えようか考えながらデカルトに『念話』を飛ばす事に。


好美(念話)「デカルトさん・・・、ちょっと良いですか?」

デカルト(念話)「あら好美さんじゃないですか・・・、どうかされました?」


 デカルトを含む3国の王が腰の低い性格をしていてホッとした好美、ただ流石に怒らせてしまうのではないかと心配しながら真実を伝える事に。


好美(念話)「あの・・・、ネルパオン強制収容所で脱獄事件があった事をご存知ですか?」

デカルト(念話)「勿論です、警察に協力すべく王城の方からも死刑囚の捕獲の為軍隊を派遣致しておりますが。」

好美(念話)「実はその捜査でバルファイ王国警察のリンガルス警部や貝塚財閥の社長夫妻と一緒に現地へと来ているんですが・・・?」

デカルト(念話)「そうなんですか?正直余り安全な場所だとは思えないんですけど大丈夫ですか?宜しければ軍隊の一部をそちらに向かわせましょうか?」


 如何なる時でもこの世界の住民の事を1番に考えるデカルト、隣のネフェテルサ王国の国民であっても同様に大切に想っている様だ。


好美(念話)「大丈夫ですよ、所長さん達と一緒にいますので安心して下さい。ただ・・・、その時・・・。」

デカルト(念話)「はい・・・?」


 好美の意味深な口調が気になって仕方が無い国王。


好美(念話)「義弘がいた牢獄の天井を魔法(能力)で焦がしてしまいまして・・・。」

デカルト(念話)「ハハハ・・・、何だそんな事ですか。大丈夫ですよ、今度王城の清掃班がそちらに向かう予定なのですがその時殺菌の為に火魔法で天井や床を一旦焦がすんで問題ありませんよ。手間が省けたんで寧ろ有難うございます。」


 国王の返答に安心した好美は胸を撫でおろした、ただ『念話』はまだ終わっていない。デカルト側にはどうしても気になる事が1点あった様だ。


デカルト(念話)「それより好美さん、魔法が使えたんですか?」

好美(念話)「以前からですけど、転生者は皆使えると思いますよ。」

デカルト(念話)「すみません、説明が足りませんでした。そういう訳じゃ無くて・・・、収容所内で魔法が使えたんですか?」

好美(念話)「普通に使えましたけど、それがどうしたんです?」

デカルト(念話)「そうなんですか・・・、まずいな・・・。実は受刑者の脱獄を防ぐ為に『魔術阻害』という特殊な魔法を収容所全体にかけているんですがそれが解けちゃったみたいですね・・・、まずいな・・・。急ぎ軍隊の魔法班の一部をそちらに向かわせますのでハイラさんにそうお伝えいただけますか?」


 国王との『念話』を終えた好美は天井を眺めながら頭を抱えるハイラにデカルトからの伝言を伝えた、『念話』なので周囲にいる数人にも聞こえていたと思われるが・・・。


ハイラ「えっ?!魔法班が来るんですか?!嘘でしょ!!」


 驚きを隠せないハイラ、どうやら『念話』の能力もかなり衰弱してしまっていた様だ。


好美「何か問題でも?」

ハイラ「だって・・・、城門壊しちゃった事がバレちゃうじゃないですか!!」

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